データセンターの概要や利点について、皆さんの疑問に答えるかたちでご紹介している本企画。今回は、データセンターの用語としてよく耳にする「ホスティング」についてです。

Q. データセンターサービスには「ホスティング」というものがあるようですが、どんな形態のサービスなのでしょうか? ホストクラブとは関係がありますか?

Answer.
ホスティングとは、データセンターが所有するサーバを借りられるサービスとお考えいただければよいでしょう。

前回紹介したハウジングは、サーバの設置に必要な場所だけを提供するサービスでしたが、ホスティングでは、場所に加えてサーバもデータセンター側で提供するかたちになります。ユーザーにとっては、自由度が低くなるという反面、Webサイトの開設などを簡単かつ安価に行え、管理の手間が大幅に軽減されるというメリットがあります。

一式揃えたサーバまで用意します

ホスティングを英語にすると「Hosting」です。端末(PCやスマートデバイス)からのリクエストを受けて各種の処理を実行し、レスポンスを返すサーバのことを「ホスト」と呼ぶことがありますが、それを貸し出すサービスということで「ホスティング」という言葉が使われています(なので、ホストクラブとは関係ありません)。

ホスティングの用途として最も一般的なのはWebサイトの設置です。そのため英語では、「Internet Hosting Service」あるいは「Web Hosting Service」という名称でサービスを展開しているデータセンター事業者が多いようです。

ホスティングの特徴の1つは、わざわざデータセンターに出向かなくても、遠隔地からWebサイトを設置/運営できる点です。

ホスティングに使用されるサーバは、ネットワークに接続されているのはもちろん、OSがインストールされたうえ、さらにFTPサーバ、Webサーバ、データベース、メールサーバ、ドメインネームサーバなど、Webサイトを構築するうえで必要になる主な機能が一通り揃えられた状態で提供されます。また、遠隔地からサーバを操作できる管理画面や管理コマンドも提供されています。契約者は、自分で作成したWebアプリケーションをネットワーク経由で配備すればすぐにWebサイトを開設できますし、Webサーバを停止したり、再起動したりといったことも簡単に行えます。

さらには、アンチウィルスソフトやIPS/IDS、ログ管理/アクセス制限ツール、バックアップサービスなどが提供されていることも多く、セキュリティ面もそれほど心配する必要はありません。

こうしたサーバを用意するとなると、まとまった額の初期投資が必要ですし、相応の管理スキルも求められます。セットアップには、当然ながらかなりの時間を要するでしょう。そうした負荷を排除できると考えると、非常に便利なサービスと言えます。

ホスティングは大きく2種類 – 共用サーバと専用サーバ

サーバと呼ばれる機器は処理能力が高いため、例えば、中小企業の企業案内サイトを運用する程度であれば、サーバの能力を持て余すことになります。そこで一般的なホスティングサービスは、「共用サーバ」という形態をとっています。

共用サーバとは、複数の契約者で1台のサーバを利用するサービスになります。内部の領域は仕切られ、他人のデータをいじったりできないよう設定されていますが、CPUやメモリ、ネットワークなどのハードウェアを共有しているため、一部のサービスでアクセスが激増したりすると、他の契約者のサービスが影響を受けることもあります。

そこで、そうした短所を嫌うユーザー向けに、「専用サーバ」というサービスも提供されています。こちらは、文字通り、サーバを1台まるごと借り受けるサービスです。必要な環境は揃えられているのですぐに使い始めることができますし、共用サーバと比べると高くなるものの、月額料金制で低価格なため、導入のハードルは低いと言えます。

「予算がない」にはうってつけ! 月額数百円で利用できるものも

では、ホスティングサービスはどのようなユーザーに向いているのでしょうか?

一概には言えませんが、例えば、従業員数名の企業で独自ドメインのメールアカウントを用意したり、単純な案内サイトを設置したりする程度の用途であれば、月額数百円から利用できるものもあるホスティングサービスは非常に魅力的と言えるでしょう。

一方で、前述のような絶対にダウンさせられないようなシステムでは、前回紹介したハウジングや、今後紹介するクラウドサービスを選択することになります。

「とにかく安価に抑えたい」、「試しにWebサイトを開設してみたい」、そんなユーザーにはホスティングサービスがうってつけです。