今回は、カンボジアビジネスをもっと、深く見ていこうと思います。

これはあくまでも、僕の個人的な視点なのですが、カンボジアは、「シェムリアップ・ビジネス」と「プノンペン・ビジネス」と2つに考えることができます。

執筆者紹介

渡邊健太郎(Watanabe Kentaro)


専修大学在学時にエンパワーメント(現ネットランドジャパン)を創業。現在も代表取締役 副社長の肩書きを持つ。2004年~2006年にはライブドア社長室にも所属。同社の子会社であるブロードバンドピクチャーズの代表取締役などを務めた経験を持つ。

現在、カンボジアでのホテル経営にも携わっているほか、経営コンサルタントとしても活躍しており、「アイデア発想・ビジネスモデルセミナー」の講師なども務めている。ブログ「チャンスを掴むビジネスアイディア発想法」も好評執筆中。

シュリムアップでは、日本の観光地を参考に

はじめに、「シェムリアップ・ビジネス」について、お話していきたいと思います。

シェムリアップといえば、前回もお伝えした通り、世界遺産アンコールワットがあり、毎年世界各国から多数の観光客が訪れています。

僕が「シェムリアップ・ビジネス」と言うのは、この約300万人の外国人観光客向けビジネスのことを指しています。そうは言っても、シェムリアップに観光客向けサービスが充実しているのかと言えば、まだまだこれからという感じです。僕の感覚では、一応アジアンリゾートという体にはなっているものの、まだバリ島のように洗練はされていませんし、観光客向けのエンタテイメントもとても少なく、観光客の数やニーズに対して、ギャップが大きいです。つまり、それだけ「シェムリアップ・ビジネス」は、これから参入の余地が充分にあると言えるでしょう。

そんな中で、僕が「これは絶対にいい!」と思っているものの1つが、「ラーメン屋さん」です。

最近、タイのバンコクや、ベトナムのホーチミンでは、ラーメンのクオリティーが随分と上がってきています。一方で、シェムリアップには日本食レストランがいくつかあるものの、どこに言ってもラーメンのクオリティーがめちゃくちゃ低いのです。どんな味かというと、ただの醤油をお湯に溶かしたようなスープとでも言いましょうか……日本で味わえるラーメンとは程遠く、日本クオリティーのラーメン屋を見つけることはできません。

僕個人としては、シェムリアップでも飲んだ後に締めのラーメンを食べたいのですが、そのようなものを提供しているお店はありません。「ジャパニーズ・ラーメン」ということでお店を開くことができれば、日本人はもちろん、世界からの外国人観光客の胃袋を満たして、かなり流行るのではないかと思っています。シェムリアップは1年を通して気温が高いので、ざるラーメンや冷し中華もものものすごく需要があるでしょうね。美味しいうどん屋、そば屋も人気が出るでしょう。

また今後は、このような飲食店の増加を見込んで、「水のクリーンビジネス」への需要はとても高いと考えています。

ご存知の通り、カンボジアの水の衛生環境はものすごく悪く、地元の飲食店に10人で行けば、必ず1人くらいはお腹を壊す人が出てくるといった感じです。基本的に生水はもちろん、氷にも注意が必要です。日本人が安心して食べられる生のモノは希少です。ですから、飲食店を中心に、日本の優れた浄水技術を活用した商品をレンタルで提供してお金を得るというビジネスモデルなども可能だと思います。

水がキレイになることで、飲食店は、提供できる料理の種類や、新しいデザートなどを増やすことができます。カンボジアでは、日本と比較すると、圧倒的にデザート、スイーツ系のサービスが不足しています。安全に食べられるスイーツが数えるほどしかありません。暑いので、かき氷やアイスクリームへの需要は言わずもがなです。街の中心地でやれば、マンゴーかき氷なども流行るかもしれません。クレープなんかも人気が出そうです。

このように、日本の観光地にあってカンボジアにないもの、アジアのリゾート地にはあってカンボジアにないものがたくさんあります。

もちろん飲食店に限ったものではありません。少し思い浮かべてみてください。日本では観光地には必ずあると言っていいプリクラ。アンコールワットの前で観光客は普通に写真を撮影していますが、もしアンコールワットに日本の大型プリクラがあれば、その需要はものすごく大きいのではないでしょうか。日本、アジアのリゾート地にあるものをヒントにすることが、「シェムリアップ・ビジネス」で成功する1つの大きな要素です。

プノンペンでは、日本人/富裕層向けビジネスを

次に、「プノンペン・ビジネス」についてもご紹介していきたいと思います。

プノンペンはカンボジアの首都です。「プノンペン・ビジネス」では、主に、カンボジア人の富裕層向けのサービス系ビジネス、中小工場ビジネス、金融ビジネスなどが考えられます。

ここで1つポイントがあります。これは途上国のパターンとして、皆さんに覚えておいていただきたいのですが、これから発展していこうという都市では、はじめに、質屋が街中に広がっていきます。これが、初期の金融業になるのです。モノと交換でお金を貸すというビジネスモデルですね。

プノンペンにはカジノホテルがあるのですが、少し歩いた場所には質屋がたくさん軒を連ねています。店先には、バイクや電化製品、iPadやiPhoneなど、たくさんの品物が並んでいます。これらは、おそらくカジノでお金を増やそうとして質入れしたものでしょう。こういった状況の中で、カンボジアでは、プノンペンを中心に「キャッシュ・ユー・アップ」という質屋チェーンがものすごい勢いで成長しています。日本の質屋のノウハウも活用できるかもしれません。

それから、「プノンペン・ビジネス」で注目したいのは、日本の中小工場の進出地となってきていることです。タイやベトナムでの人件費上昇による工業製品のコストアップを防ぐための代替地として、今まさに注目されつつあります。例えば、ユニクロなど、日本のアパレル企業がカンボジアに進出して、生産をはじめています。今後は、国の政策もありますので、ますます工場の進出が増加されることが予想されます。

日本の工場の進出が進むに連れ、日本人の街のようなものができる可能性もあります。そうなると、飲食店などのニーズが高まっていくでしょう。現在はまだ、日本人が気軽に夜遊びできるようなクラブはほとんどありません。こういったビジネスもグっと需要が増えてくるのではないでしょうか。

他にも、カンボジア人の富裕層向けビジネスとして、日本の化粧品ビジネスや和スタイルのエステビジネスやネイルサロンやブライダルビジネスなども、成功の確率が高いと考えられます。