今回の選書

2022―これから10年、活躍できる人の条件

2022―これから10年、活躍できる人の条件(神田昌典) PHP研究所

選書サマリー

これから10年、日本人は世界のあり方に多大な影響を及ぼすことになる。輝かしい役割を、ひとりひとりの日本人が果たすことになると、確信している。

人ごとではない。誰かがなんとかしてくれるのを待っていても、絶望するだけだ。ひとりひとりが「希望のシナリオ」を描き、行動する過程で才能を見つけ、その仕事に没頭するべきだ。

今、あなたが「やってみてもいいかな」と思うことを、メモして欲しい。そして、小さな行動をとって欲しい。10年後、改めてそのメモを見てほしい。

あなたは、今の自分では想像できないほど、愛される仕事をしているはずだ。そして、日本から新しい世界が生まれはじめていることに驚くはずだ。

これからの10年で、世界は生まれ変わる。その中で、日本は非常に重要な役割を果たせる立場にある。未来への水先案内人を、日本人が務めることになると言っても過言ではないのだ。

そのときのために、私たちがなすべきことは「時代の流れを理解しながら、未来を描く意志を持つこと」だ。

未来を知るためには、70年前を振り返ればいい。歴史は70年周期で巡っているからだ。たとえば、平成のバブル景気と、大正時代の大戦景気は、その期間も大きさも、瓜二つだ。

明治維新や太平洋戦争の敗戦など、社会体制の大変革も、70年おきに起きている。70年前を振り返れば、私たちが生きる時代の流れが見えてくるのだ。

そして、その延長線上に、未来が浮き上がってくる。たとえば、明治維新終結が1877年、太平洋戦争終結が1945年だ。こう考えると、次の大きな変化は2015年であることがわかる。

私たちが新たな歴史サイクルのはじまりを目撃する日は、すぐ目の前まで迫っているのだ。

2015年の大変革に向けて、誰もが今から準備しておくべきだ。こういうとき起こることは一つだ。時の権力者が突如、悪者に変わるのだ。たとえば、70年前なら、東京裁判、公職追放、財閥解体だ。

140年前は、西郷隆盛をはじめとした薩軍五千余人が討たれた。つまり、時代が変わるときには、英雄が戦犯になるのだ。出世街道にいた人が職を失い、輝いていた仕事が軽蔑されるようになるのだ。

だから、今の価値観で評価されようと頑張ってはいけないのだ。仮にそうしたら、2015年になったとたんに、あなたの評価は地に落ちてしまうからだ。

ターニングポイントでは、新しい価値観を創れるかどうかが、日本の存続を決定づける。カリフォルニア大学の進化生物学者、ジャレド・ダイアモンド教授は、こう言っている。

「文明が崩壊する原因は、戦争でも病気でも食糧危機でもなく、歴史が大きなターニングポイントに差しかかった時"引き継ぐべき価値観"と"捨てるべき価値観"を見極められたかどうかの違いだ」

新しい価値観は圧倒的な欠落に気づいた時に生み出される。たとえば、太平洋戦争を終結した1945年のターニングポイントでは、物質の「圧倒的な欠落」があった。

2015年には、私たちには何もないことを知ることになるはずだ。おそらく「人間の心」について、そして「人間の可能性」について、何も知らなかったことに、はじめて気づくはずだ。

この「圧倒的な欠落」を埋めるために、次の歴史サイクルが本格的にはじまることになる。

欠落を埋める時、明治維新以降はヨーロッパがモデルだった。終戦以降は、アメリカだった。ところが、今回の歴史の転機では、日本にはモデルがない。なぜなら、日本が世界のモデルになるからだ。

選書コメント

ご存知、経営コンサルタント、神田昌典さんのキャリア論です。タイトルから、いわゆるキャリア形成術、処世術の本かと思いましたが、まったく違いました。

これから10年どころでなく、数十年以上先を見通した上でキャリアを考えます。当然、激動の時代を想定しています。それを乗り越え、活躍するべきか、具体的にアドバイスします。

思えば、キャリア論の大半が、現状のビジネス環境を前提に書かれています。本書は、その前提がもうすぐ崩れ去ることを予言し、そのために今からなすべきことを書いています。

国家財政の破たんや、首都直下型地震の懸念から、現在の価値観が通用しなくなる可能性を指摘する人は少なくありません。しかし、その後どんな社会が到来するのかまで見せてくれる本はありません。

本書は、それを明らかにし、どう生きればいいのかを教えてくれます。10代から40代まで、世代別にアドバイスをしてくれる点も助かります。

なお、予言にあたって、ベースになるのが、ファンならお馴染み、70年周期説や人口ピラミッド、製品ライフサイクル、人生7年節目説です。これらのツールの使い方も参考になります。

「実践マーケター」として鮮烈なデビューを果たした著者ですが、本書では、その面影はなく、まるで未来学者です。上場失敗やガンの克服などご自身の体験、そして震災の影響が大きいようです。

ファンの賛否はわかれそうですが、今後の激動を見据えてキャリア形成をしたい方、会社や日本という枠に捉われない、大きな視点から、働き方や生き方のヒントが欲しい方にお勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

この記事は藤井孝一氏が運営するビジネス書を読みこなすビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」」の過去記事を抜粋し、適宜加筆・修正を行って転載しています。