今回の選書
プロフェッショナルサラリーマン 「リストラ予備軍」から「最年少役員」に這い上がった男の仕事術(俣野成敏) プレジデント社
選書サマリー
プロフェッショナルサラリーマンとは、会社を辞めず、サラリーマンであることを特権として活かし、自分の仕事にやりがいを持つビジネスパーソンのことだ。
今は「やりたい仕事をしたいなら起業が一番」という風潮がある。だが、厳しい社会情勢の中、起業して成功する人は一握りだ。それに、起業して成功する人は、会社員時代から優秀な人だ。
だからこそ、プロフェッショナルサラリーマンを目指すべきだ。プロフェッショナルサラリーマンなら、会社で働き続けることも、起業することも、前例のない働き方も可能だ。選択肢が手に入るのだ。
変化の激しい現代に、アマチュア発想のままでは、いつ仕事を失うかわからない。しかし、プロフェッショナルサラリーマンになれば、会社の業績低下やリストラに一喜一憂する必要はなくなるはずだ。
プロとは、いつでも胸を張って請求書が出せる仕事をする人だ。精神的・肉体的にどんな状態に置かれても、お客様が喜んでお金を払ってくれる仕事ができる人だ。
もちろん、誰にでも調子のいい日も、悪い日もある。しかし、それが許されるのはアウトプットするまでだ。お客にアウトプットするときには、自分の調子など微塵も感じさせてはいけないのだ。
プロとして仕事を引き受けた以上「なんとしても形にする」べきだ。最悪のコンディションでも、いつも通りのレベルが保てるようになってはじめて、プロフェッショナルになったと言えるのだ。
プロフェッショナルサラリーマンとは、自分で仕事を「つくって」「回して」「稼ぐ」ことができる社員のことだ。
仕事を「つくる」というのは、与えられた仕事をこなすだけでなく、自分で仕事を新しく創出することだ。仕事を「回す」というのは、つくった仕事を円滑にまっとうさせることだ。
「稼ぐ」というのは、文字通り利益を生むことだ。この三つのサイクルがそろって初めて、プロフェッショナルと言える。かなりハードルが高いのだ。
だが、ここで「プロフェッショナルサラリーマンになどなれない」と悲観する必要はない。これは、あなたが数年、数十年かけて目指すゴールだ。
今はアマチュアでも、自覚と機会さえあれば、プロフェッショナルサラリーマンに化ける可能性は大いにある。アマチュアがプロフェッショナルサラリーマンに変わるきっかけは、些細なものだからだ。
仕事とは、読んで字のごとく「仕える事」とらえている人が多い。つまり、会社に仕える、上司に仕える、顧客に仕える、それが仕事だと思っている人がほとんどだ。
しかし、仕事とは「仕入れる事」だ。仕入窓口は上司だ。上司から仕入れた「仕事」を進めていくと「こうしたほうがいいのでは」と思うようになる。これが第一段階の「思事」だ。
それが高じると「こうしよう」という志が出てくる。それが第二段階の「志事」だ。そして、やがて自分で何かを始めることができるようになる。それが、第三段階の「始事」だ。それが最終的には会社の資源になり「資事」となる。
このように四事が一周回せるようになることが「つくって、回して、稼ぐ」プロフェッショナルサラリーマンになった証なのだ。
サラリーマン人生は、上司との相性で左右されることが多い。だが、それは、あまりにももったいないことだ。理想の上司は人それぞれだし、理想の上司に巡り合える確率は低い。
だから「上司は仕事の仕入先」「自分は自分商店の店主」こんなふうに考えることだ。これができれば「いい仕事をくれる人が、いい上司」になる。人間性や性格、相性はどうでもよくなるはずだ。
プロフェッショナルサラリーマンになれば、毎日が充実して、仕事が楽しくてしょうがなくなる。毎日は、まるで高速道路をスポーツカーで走り抜けるような爽快感のあるものだ。ぜひ目指してほしい。
選書コメント
主に、20代のビジネスパーソンに向けて「プロフェッショナルサラリーマン」になる秘訣を教えます。会社でやりがいを持って働きながら、成果を上げるプロフェッショナルになる方法を教えます。
著者の俣野さんは、大企業に入社したものの30歳でリストラ対象者になったそうです。そこで一念発起、社内起業で大成功し、史上最年少で上級顧問に上りつめた人です。
日本企業は、厳しい経営環境の中、余裕がなくなっています。アマチュア社員は、いつ切り捨てられても不思議ではありません。それを避けるには、プロになるしかありません。
そのためには、何に気をつけ、何をすればいいのか、どんなところに注意して働けばいいのかを、自らの体験をベースにしながら教えてくれます。
本書では、プロの定義をした上で、プロフェッショナルを目指す人のために、時間の配分、金銭感覚、コミュニケーションや上司との付き合い方などを74の項目で紹介してくれます。
特に、著者がいう「仕事を作る」、すなわちビジネスモデル作りは、著者、自らが社内起業し、成功させた実績が発揮されていて、読み応えがあります。
この手の本は、OBや経営者が上から目線で諭すものが多いです。しかし、俣野さんは、今も第一線で働く方です。若い社員も、カリスマ先輩社員の話を聞く心地よさで読めるはずです。
これから仕事を始める人、始めたばかりの若いビジネスパーソンで、職場で頑張ろうという人はもちろん「いつかは独立したい」と考える人にもお勧めします。
選者紹介
藤井孝一
経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役
1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。
この記事は藤井孝一氏が運営するビジネス書を読みこなすビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」」の過去記事を抜粋し、適宜加筆・修正を行って転載しています。