モトローラの「Moto Z」(写真01)をお借りしました。この機種も、LTEと3Gでの同時待ち受けが可能なデュアルSIMスマートフォンです。さらに、この機種には、moto modsと呼ばれる機能があり、背面にさまざまなオプションを装着して機能を拡張可能です。

写真01 モトローラの「MotoZ」。5.5インチながら、薄く、かなり軽い。背面には、拡張オプションを装着するための端子が並ぶ。付属のバックパネルを付けるとかなり印象が変わる

Moto Zの主な仕様を(表01)に示します。簡単にみるとMotoZは、5.5インチのディスプレイを持つSnapdragon 820(クアッド64bit Kryoコア1.8GHz)を採用したスマートフォンです。メモリは4ギガバイト、LTEは下りがカテゴリ12で、最大3波のキャリアアグリゲーションが可能で最大600Mbps(ただし、通信速度は、利用事業者やエリアに依存)です。また、センサーは、内蔵のDSP(Hexagon 680)が管理し、メインCPUが停止している間のセンサーによる計測などが可能になっています。

■表1
機種名(型番) Moto Z
発売年 2016年10月
CPU Snapdragon 820/1.8GHz
RAM 4ギガバイト
ストレージ 64ギガバイト
画面 5.5インチ 1440×2560ドット カラーAMLED
GSM 850/900/1800/1900MHz
UMTS(W-CDMA) 850/900/1700/1900/2100MHz (B1/2/4/5/8/19)
FDD-LTE B1/2/3/4/5/7/8/12/17/19/20/25/28
TDD-LTE B38/40/41
デュアルSIM 対応(DSDS) LTE/3Gで待ち受け可能
無線LAN IEEE802.11 a/b/g/n/ac(2.4/5GHz) MIMO対応
Bluetooth Ver.4.2
GPS ○(A-GPS対応)
NFC
フロントカメラ 500万画素/フラッシュ
バックカメラ 1300万画素/光学手ぶれ補正/オートフォーカス(レーザー)/フラッシュ
I/O USB typeC、メモリカード(SIM2と排他)、Moto Modsコネクタ(背面)
OS Android 6.0.1
バッテリ 2600mAh TurboPower充電
サイズ/重量 15.5×7.5×0.52センチ/134グラム

まずは、気になるデュアルSIMの動作ですが、LTEデータ通信(MVNOのもの。ネットワークはドコモ)に対応したSIMと3G音声通信(FOMA)に対応したSIMを装着して、着信待ちしつつ、データ通信が可能です。つまり、音声はFOMA契約で、データ通信はMVNOのSIMで行えなます。

このMoto Zやすでに発売されているMoto G2などでは、「プロファイル」を設定して2つのSIMの使い方を決めます(写真02)。一見、複雑そうな感じですが、仕組みが分かってしまえばそれほど難しいものではありません。プロファイルは、4種類あり、SIMの使い分けに応じて選択します。4つのプロファイルは「基本」、「自動」、「個人用と仕事用」、「メインと個別」の4つです。筆者のように、通話とデータ通信を分ける場合には「基本」を選択すればよく、その他のプロファイルでは、どちらのSIMも通話可能で、発信するときのSIMの使い分けをどうするかというパターンです。なおどの場合も、どちらのSIMでデータ通信するのかを決めなければなりません。2つのSIMで同時にデータ通信することはできないからです。また、自動的にデータ通信するSIMのほうがLTE接続が可能となり、データ通信しないSIMの側は3Gまでの接続となります。

写真02 デュアルSIMの動作を設定する方法の1つとして「プロファイル」がある。4つのパターンから自分に合ったタイプを選んで設定を行う

「自動」は、電話帳に登録した相手によって使い分ける場合(たとえば、同じ事業者同士だと無料とか定額になるなどの場合)です。「個人用と仕事用」は、個人で契約したSIMと会社契約のSIMなどの場合、アンドロイドのユーザーアカウント切り替え機能を使って個人契約SIMと会社契約SIMを切り替えるか、電話帳に登録した通話先ごとに切り替えるかを選べます。「メインと個別」は、片方をデフォルトで使うSIMとして、もう1つを特定の相手と通話する場合のみ使うというやり方です。

なお、プロファイルを指定しなくても、設定項目の「自動SIM選択のオンオフ」、テータ通信用、音声通話用、SMS用の「優先SIM」を設定すれば問題なく、プロファイルも実際には、この設定を自動でやるだけです(写真03)。

写真03 プロファイルでは、「自動SIM選択」、「優先SIM」(モバイルデータ/通話/SMS用)を半自動で設定している。これらの設定を直接行うことも可能

設定が複雑に見えるのは、「データ通信はどちらかのSIMでしかできないこと」、「片方のSIMだけがLTE/3G/2Gで通信でき、もう一方は3G/2Gでしか通信できない」といった制限があるため、設定項目が相互に関係しているためです。たとえば、片方のSIMでLTEが利用できるようにすれば、自動的にもう一方のSIMでは3Gか2Gでしか通信が行えなくなってしまいます。

こうした制限をどうやって設定項目として表現するかが、各社の「独自性」です。前に紹介したXiaomiのmi5ではまた違った設定方法になっています。

なお、このようなLTEと3Gの待ち受けに対応したデュアルSIMスマートフォンでは、LTEでの通信中に3G側で着信することも可能です。そのためには、LTE通信の合間に3G側で受信を行う必要があります。LTEのデータ通信は、パケット通信なので、ユーザーからみると通信中でも、実際には、間欠的に送信を行っているため、3Gで受信が行えるタイミングがあるのです。その設定は、MotoZの場合「優先する接続」で指定します。ここでは、データ通信中は、通話中と同じ状態としてデータ通信を優先するか、データ通信を停止して着信するかを指定します(写真04)。

写真04 音声着信を優先するかどうかを設定できる。データ通信用、通話用SIMを分ける場合には音声優先にしておく

Moto Zと事業者の利用周波数は(表02)のようになります。スペック上は3Gでバンド6(Band VI)に対応していませんが、バンド19(Band XIX)に対応しており、ドコモFOMAサービスの800MHz帯(FOMAネットワークの仕様としてはバンド6になっている。Xiサービスでは同じ周波数帯をバンド19として利用している)を利用できるとのことです。

■表2
Band 周波数帯 MotoZ ドコモ Softbank WCP Y!mobile UQ
3G LTE 3G LTE 3G LTE LTE(TD) 3G LTE LTE(TD)
1 2100MHz
2 1900MHz
3 1800MHz
4 1721MHz
5 850MHz
6 800MHz ○*1
7 2600MHz
8 900MHz
9 1700MHz
11 1500Mhz
12 700Mhz
17 700MHz
18 800MHz
19 800MHz ✓*1
20 800MHz
21 1500MHz
25 1900MHz
26 850MHz
28 700MHz
38 2620MHz
40 2400MHz
41 2500MHz
42 3600MHz
*1:Band 6と19は別のバンドだが、周波数としてはBand19が6を含む。どう振る舞うかは端末により違いがある

国内の事業者の全バンドをカバーしているわけではありませんが、Y!mobile以外は、複数のLTEバンドをカバーしています。また、TD-LTEにも対応しています。なお、Moto Zはcdma2000には対応しないのでauには対応できないとのことです。

ドコモのMVNOのデータ通信専用SIM、FOMA契約のSIMの組合せで、データ通信も通話も問題はありませんでした。

次回は、もう少し細かく、Moto Zを見ていくことにします。