前回までのあらすじ

超マイペース且つ大雑把なB型男子である僕の彼女は、あろうことか超几帳面なA型女子だった――。このエッセイは独身B型作家・山田隆道が気ままに綴る、A型彼女・チーとの愛と喧嘩のウェディングロードです。

最近、ついにツイッターなるものを始めた。普段の僕はどちらかというとアナログ人間であり、今までツイッターを無条件に敬遠していたのだが、仕事の関係上やる必要が出てきたわけで、不承不承ではあるが手を出すことになったわけだ。

ちなみにツイッターでの名前は山田隆道、アカウントはYamadatakamichi。なんだかんだでどしどし呟いているので、興味のある方は是非検索してみてください。おまけにフォローまでしていただけると感謝感激……と、今回はなんだか宣伝くさい書き出しだが、実を言うと本当にただの宣伝である。ごめんなさい。

というわけで、先日ついに婚約指輪を購入した。来るべき結婚に備え、僕とチーは近々結納を交わそうと計画しているのだが、そのときにチーに贈るつもりの指輪だ。

一般的に婚約指輪というと、男性の月給の三か月分の値段が相場だとしばしば耳にする。なるほど、かなりの高級品だ。おそらく、他人様が手塩にかけて育てた娘さんを赤の他人が嫁にもらう、つまり一生を共にするということに対する男の覚悟みたいなものが試されているのだろう。本来なら値段など付けられない指輪のはずだ。

しかし、そうは言っても購入予算を青天井にするわけにはいかなかった。

あらゆる買い物の基本がそうであるように、婚約指輪についてもなるべく良い品をなるべく安価で手に入れたい。僕が超売れっ子作家で印税収入がバンバン入ってくるような男だったら悩まないことなのだが、それを嘆いても何も始まらないのは百も承知である。かくして、僕は身の丈に合った値段で、尚且つ身の丈以上の婚約指輪を購入するという、どこまでも虫のいいテーマを掲げていたわけだ。

そんな婚約指輪について僕が事前にリサーチしたところ、まず気になったのは一般的に女性に人気とされているいくつかの有名ブランドの宝石は、本来の石の値段にさらにブランド料のようなものが加算されるということだ。つまり極端に言えば、同じ石を使った指輪でも人気ブランドの刻印が入るだけでかなり高額になり、いわゆるノーブランドに近い指輪だと同じ石でも比較的安価になるというわけである。

ならば、ノーブランドのほうが断然お得に決まっているじゃないか。最初、ブランドにまったく興味がない僕はそんな風に安直に考えていたのだが、なかなかどうして現実は厳しいらしい。現代結婚事情に詳しい方に聞いたところ、婚約指輪はどうしてもティ○ニーがいい、あるいはグ○チがいい、などとブランドに対すこだわりを見せる女性は僕が想像していた以上に多いというのだ。

ところが幸いなことに、チーはここでもレアケースな女性だった。「チーって指輪のブランドにこだわりとかってあるの?」僕がそう訊ねると、チーは迷うことなく首を横に振り、「全然ないよ」とありがたいお言葉。確かに普段の洋服やバッグに関しても好きなブランドの話を聞いたことがないだけに、チーはそもそも権威や見栄といったものに欲がない女性なのだろう。

果たして、僕はずいぶん気楽になった。ブランドを気にしないでいいのなら、そのぶん石にこだわろう。例えば同じダイヤモンドを選んだとしても、その石を直接購入して、そこからオリジナルの指輪を作ったほうが、ブランド物のダイヤの指輪よりはるかに安価になる。しかも、そっちのほうが一点モノの貴重品じゃないか。

もちろん世の中には色々な考え方や事情があるため、一概に僕の選択が正しいとは言えないが、少なくとも僕は一人の経験者として、指輪を買うなら石からのオリジナルを作ったほうがいいと思う。そっちのほうが、同じ値段でより良い品を手に入れることができる。ノーブランドでもいいじゃないか。大切なのは僕らの気持ちだ。

こうして、僕はとうとう婚約指輪を買ってしまった。オリジナルなので完成するまでしばし時間がかかるが、結納の日までには間に合うという。

さあ、ここまできたら、次は指輪の渡し方である。何人かの既婚者の知人男性に聞いたところ、一番多かったのが食事デートの席で「結婚してください」と指輪を差し出すパターンだ。ドラマでもよく見かける光景だけに、イメージしやすいだろう。

しかし、僕の場合は結納の席で婚約指輪を贈らなければならない。江戸末期から代々続く山田家の五代目長男坊(農家だけど)であるからして、どうしても「古いしきたり」に縛られてしまう。これを面倒くさいと思う御仁もいるかもしれないが、天邪鬼な僕としては意外に悪い気はしていない。最近はカジュアル婚が急増しているだけに、そういう時代の流れに逆行してみるのも痛快だと思うわけだ。

「こちらは私からの記念の品でございます。幾久しくお受け取りください」

そんな結納の儀の口上も、今から楽しみでならない。

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