フライトシステムコンサルティングは11月17日、東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座およびジェナとAI・ロボット技術を医療で活用するための共同研究を行うと発表し、同日、報道陣向けの説明会を開催した。

共同研究で使用される「Pepper」

近年、医療分野における人手不足が喫緊の課題となっている。同研究は、フライトとジェナのもつAI、ロボットのICTテクノロジーを活用することで、医療現場の人手不足問題を解決することを目的として実施される。具体的には、東京慈恵会医科大学内において、「Pepper」およびジェナとフライトが共同開発した法人向けPepper管理ソリューション「Scenaria(シナリア)」を使い、医療従事者、および患者関係者の情報コミュニケーションの評価・改善の手法開発を行うというもの。

3者は同研究において3つの研究テーマを設定しているという。まずは、Pepperの「検診センターのコンシェルジュ」としての利用だ。これは、Pepperの顔認識機能によって患者を特定し、予約の確認や受付を行い、患者に当日の流れや行き先の案内を行うというもの。日本語だけではなく、英語や中国語など、多言語対応も実現することができ、外国人リピータも安心して病院を利用することができる。

患者の顔を認識し、予約内容の確認を行う。その後、当日の流れの説明や受付を行い、道案内を行う

2つ目は、Pepperの血圧測定の場における利用検証。血圧測定は患者の精神状態が関与するため、リラックスした状態での測定が重要となる。しかし、医師や看護師を見ることで緊張して血圧が高くなってしまう「白衣症候群」も少なくない。そこで今回の実験においては、「感情認識機能」をもつPepperが患者の緊張度を判定することで、患者がリラックスしたタイミングでの測定を行う。

血圧測定器と自動連係しているPepperが、患者の表情を認識し、リラックスしたタイミングで血圧測定を開始する

3つ目は、認知症医療分野における利用検証。超高齢化社会において、認知症は医療における重大なテーマの1つ。同研究は、日本テクトシステムズが提供する認知機能検査エンジンとPepperを連携させ、Pepperと患者間の会話から、声の質や表情、質問内容などのデータをとり、検査内容とのスクリーニングによって認知症であるかどうかを判断するもの。これは、医師偏在地域における遠隔医療においても利用が期待できるという。

東京慈恵会医科大学の高尾洋之 准教授は、「今回の共同研究において、患者の待ち時間が削減される、医療従事者の労働時間が減少する、などといった結果がでると、同様なサービスの展開が図れる」と実験への期待をコメントした。

左から、フライトシステムコンサルティングの代表取締役社長 兼CTOの片山圭一朗氏、東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座の高尾洋之 准教授(高尾氏の「高」は「はしごだか」)、ジェナの代表取締役を務める手塚康夫氏