【インタビュー】

ガンダム、マクロス、トランスフォーマーも! 二人三脚で発展したロボットアニメと玩具開発の密接な関係 - 『ロボットアニメビジネス進化論』著者に聞く

『ロボットアニメビジネス進化論』(光文社刊)

日本が世界に誇るエンターテインメント・コンテンツのひとつに「ロボットアニメ」というものがある。1972年に巨大ロボットジャンルの革命児たる『マジンガーZ』が誕生してから今年で45年。この間に、『ゲッターロボ』(1974年)、『グレートマジンガー』(1974年)、『UFOロボ グレンダイザー』(1975年)、『鋼鉄ジーグ』(1975年)、『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年)、『大空魔竜ガイキング』(1976年)、『無敵超人ザンボット3』(1977年)、『機動戦士ガンダム』(1979年)、『百獣王ゴライオン』(1981年)、『超時空要塞マクロス』(1982年)、『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(1985年)、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)……などなど、キラ星のごときスーパーロボットたちが誕生し、それぞれの時代の子どもたちから絶大な支持を集めてきた。

国産アニメーションの歴史における巨大ロボットの元祖『鉄人28号』(1963年)や『アストロガンガー』(1972年)、そして『マジンガーZ』などは、単体のロボットをなんらかの形で操縦するシンプルなスタイルだったが、やがてUFOスペイザーとの合体・分離で悪の円盤獣と戦う「グレンダイザー」や、ロボットからゴッドバード形態へ変形する「勇者ライディーン」、体の各パーツを磁力によって引き寄せることでロボットを形成する「鋼鉄ジーグ」、5台のメカが合体して完成する「コン・バトラーV」、ロボット+ライオンメカ+戦闘機という異なるコンセプトを備える3機が合体する「未来ロボ ダルタニアス」、実在する大型トラックから人型のロボットへと変形を行う「コンボイ司令官(トランスフォーマー)」など、ヒロイズムと意外性に満ちた変形・合体のアイデアを取り入れたスーパーロボットが続々と登場。これらのスーパーロボットを扱うアニメ番組の歴史は、そのままロボット・メカ玩具のマーチャンダイジング(商品化計画)の歴史と深く結びついている。

バンダイのキャラクター商品専業メーカーとして1971年に創業したポピー(現在のバンダイ ボーイズトイ事業部にあたる)から、1974年に発売された「超合金マジンガーZ」は、マジンガーZを構成する金属「超合金Z」を思わせる亜鉛合金の重量感が従来のソフトビニール人形にはないリアリズムを子どもたちに感じさせ、大ヒット商品になった。やがて「超合金」はポピーの人気ブランドに発展し、他社もこの勢いに乗って創意工夫に満ちた合金玩具を開発・展開していく。

「超合金マジンガーZ」がそれまでのキャラクター玩具商品と違っていたのは、"テレビに出てくるキャラクターと実際の商品のイメージが限りなく近い"ということだった。テレビのキャラクターを忠実に立体化してリアリティを持たせる商品を開発するのであれば、「最初からリアリティのある商品アイデアを実際のテレビ作品に反映させればよりよい玩具が開発できるのではないか」という発想から、次第に玩具メーカーがロボットアニメの企画段階から深く関わるようになっていった。

光文社から8月17日に発売された新書『ロボットアニメビジネス進化論』は、このようなテレビのロボットアニメ番組における「商品開発」の歴史を追いかけることで、日本におけるキャラクタービジネスのトレンドがどのように移り変わっていったのか。あるいは、送り手(メーカー)と受け手(ユーザー)との関係がどのような動きを見せたかなどを、著者である五十嵐浩司氏の少年時代からの実体験、および長じてから編集者・ライターとして数々の取材を重ねた結果知りえた、玩具業界や映像業界の動きと共に詳細に解説した書籍である。

ここでは、まさにロボットアニメとロボット玩具の夜明け~隆盛期に少年時代を過ごした1968年生まれの著者・五十嵐氏に話を聞き、本書執筆のいきさつや、著書のポイントを尋ねてみた。

――まずは、本書を執筆されていきさつからお話をうかがってみたいと思います。

これまで編集者・ライターとして「超合金」「ガンプラ」「トランスフォーマー」「ダイアクロン」など、各メーカーさんの専門書、研究本を作ってきましたが、それだとなかなか他メーカーとのヨコの関係……ある大ヒット商品が生まれ、他メーカーが追随して商品を開発し、玉石混合の乱世時代に突入する……みたいな、玩具開発全体の歴史を追うことがなかなか難しいんです。本書の後書きで作家の月村了衛先生も書いてくださっているのですが、"ロボットアニメの歴史を軸にしたキャラクター商品の開発史"を、しっかりと文章に記しておきたかったんです。

――本書は序章を含めて9つの章で構成され、キャラクター商品開発とロボットアニメ番組との密接な関係について時代順に語っていく内容ですが、章分けにはどのような考えが込められているのですか。

まず序章は1972年の『科学忍者隊ガッチャマン』と『マジンガーZ』から、アニメ番組におけるメカニック描写が飛躍的にリアルになっていったという事象を取り上げています。続く第1章では、ほぼ1年もの開発期間を費やして作り上げた「超合金マジンガーZ」をはじめとする各種キャラクター玩具が大当たりし、当初はわずか7名で創業したポピーが日本トップクラスの売り上げを示すヒットメーカーに成長するまでを語っています。

――「超合金マジンガーZ」がその後のロボットアニメにおけるキャラクター玩具商品展開の道筋をつけたというわけですね。

第2章は、70年代にテレビのロボットアニメ番組と連動してヒット作を連発したポピーの超合金シリーズに対抗し、玩具メーカーの老舗たるタカラ(現:タカラトミー)がキャラクター商品主導で『鋼鉄ジーグ』の企画に参入し、「マグネロボット」というアイデアで大ヒットを飛ばしたほか、「変形・合体玩具の進歩」「他社が続々とダイキャスト玩具商品を発売」といった、激動の時代を記しました。

――五十嵐さんはそのころちょうど小学生というど真ん中世代。ロボットアニメや特撮ヒーロー番組のタイトル数も膨大なものがあり、まさに子ども向け番組におけるマーチャンダイジングの仕組みが確立した時代といえるでしょうか。そして次の第3章では、アニメキャラクターを題材にしたプラモデル商品の発達史に移ります。

第3章では、バンダイ模型が70年代初めより模索してきた「低年齢を対象としつつ、リアルで見栄えのよい完成形が得られるプラモデル」の開発の流れを追いました。その中心にあったのが、1977年に映画で大ブームを起こした『宇宙戦艦ヤマト』(テレビ放送は1974年)です。

次の第4章では、80年代に青年層から子どもまでを巻き込んで大盛り上がりを見せたバンダイの『機動戦士ガンダム』プラモ=ガンプラのブームについてまるまる一章を割いています。続く第5章では、ガンプラブームに追随して各メーカーが次々と新しいロボットアニメ番組に参画し、プラモデル商品を開発していった乱世の時代について説明しています。ここで「ポスト・ガンダム」として出てくるのが『超時空要塞マクロス』なんです。

――『マクロス』では戦闘機をロボットの姿に落とし込んだバルキリーの人気が高かったですね。イマイとアリイの2社から数種のプラモデルが発売され、タカトクでは戦闘機からガウォーク~ロボットへ完全変形できる合金玩具のバルキリーが出て、これも大ヒットを収めました。次の第6章では、80年代の半ばに日本へ現れた「黒船」にスポットを当てられています。

第6章では、タカラによるオリジナル玩具シリーズ『ミクロマン』『ダイアクロン』の変形ロボット商品がアメリカで「トランスフォーマー」と名付けられて売り出したところ大ヒットし、1985年にテレビアニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』と共に日本へ「逆輸入」された事例を「黒船襲来」と題し、国内の他メーカーが受けた衝撃と対抗策などについてまとめています。

――リアルロボットのプラモデルが子どもから大人までを取り込むホビーとして完全に認知された80年代、リアルとはまた違った視点から新しい商品が生まれましたね。

第7章は、80年代中盤に誕生した「SD(スーパーディフォルメ)」キャラをプラモデルに落とし込んだ「SDガンダム BB戦士」(1987年発売)や、当初からディフォルメ風にデザインされたキャラクター(魔神)が活躍する作品『魔神英雄伝ワタル』(1988年)のヒット、などを中心に記しています。

――第8章では、かつて「超合金マジンガーZ」を子ども時代に楽しんでいたという大人の世代に向けた、バンダイの「超合金魂」が取り上げられていますね。

第7章までは、社会の流れの中でロボット玩具商品がどのような変遷を遂げていったかを語っていました。最後の第8章では、1997年に第1弾「マジンガーZ」が発売された「超合金魂」や、タカラトミーの「マスターピース」シリーズといったハイエンド向け商品の歴史を紹介し、ロボットアニメキャラクター商品展開の「今」と「未来」について語っています。

――こうして全体の流れをうかがいますと、確かにひとつのキャラクターやひとつの会社をタテに追うだけでは見えてこない、キャラクター玩具の開発や競争といったヨコのつながりが判るとともに、ロボットキャラクター商品がアニメ番組と組み合わさることによってどのような進歩・発展をしていったのかが明かされる思いです。

ロボットアニメと玩具商品は、常に二人三脚で発展していったと思っています。作品だけだったり、商品だけだったりでは『ガンダム』や『マクロス』は生まれていなかったでしょう。もし仮にそうであったならば、日本のロボットアニメの歴史は今とはずいぶん変わっていたはずですよ。ロボットアニメの可能性を広げたのはマーチャンダイズ。本書は、そのような視点でロボットアニメの歴史を見つめてみようという主旨で書かれたものなのです。

――本書ではキャラクター玩具開発史における、いくつかのエポック的出来事や、大ヒット商品が生まれた背景なども詳細に語られています。書名にもあるように、これからヒット商品を作り出そうとする玩具業界、あるいはテレビ業界の方々にとっても重要なことが書かれているのではないでしょうか。

本書を読んでもらって、これまでのロボットアニメの歴史や商品開発のあり方を知ってもらいたい、という思いは強いです。モノづくりに携わる方たちが「こういうことって大事なんだな」と何かヒントを得てもらって、新たな商品や作品を生み出すのに役立てば、と思っています。

8月27日には本書刊行を記念して、世田谷区の「本屋B&B」にてトークイベント「ビジネス視点で読み解く『ロボットアニメ』」が開催される。かつてバンダイで玩具企画開発に多く携わったフリークリエイターの野中剛氏、いんちき玩具研究学者のいんちき番長氏と共に、五十嵐氏が「ロボットアニメとビジネス」というテーマについて語りつくす。
(取材・文 電七郎)

五十嵐浩司(いがらし・こうじ)
アニメーション研究家。1992年より編集プロダクション・タルカスに参加し、編集兼ライターとして、多くの書籍や映像ソフトの解説書を手がけている。主な編著に『超合金・ポピニカ大図鑑』(グリーンアロー出版社)『ガンプラ・ジェネレーション』『タカラSFランド大全集』(講談社)『トランスフォーマージェネレーションデラックス』(ヒーローX)『ダイアクロンワールドガイド』(ホビージャパン)などがある。2015年より全国で開催された「メカニックデザイナー大河原邦男展」では、出展作品の監修を務めた。
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