AIQを高めるとは

同社は6月に200社を対象に行ったAIQ(人工知能指数)の調査結果を発表しており、同調査では段階的に「観察者」「発明者」「コラボレーター」「コラボレーティブ発明者」の4つに分類。現状では半数以上が観察者ではあるものの、コラボレーティブ発明者は企業価値が年平均4.2%伸びる可能性があり、他の段階と比べて成長率が高くなるほか、観察者からコラボレーティブ発明者に変わると企業価値が90%高まることが判明したという。

AIQにおける4段階の概要

保科氏は「AIQを高めるために必要な要素としては技術、データ、人の3つの要素が挙げられる」と強調する。

技術については企業の経営者目線では、技術がどこに適用されるのかが重要であり、他社との差別化を図るために、投資と投資のタイミングを考えなければならないと指摘している。

データに関しては、現在のAIはデータで学習・進化することに意味がある一方で、大企業は散在するレガシーシステムのデータを集約し、データがインテグレートされたポイントに、いかにAIを組み込めるのかがカギだという。

人については、データサイエンスだけではなく、顧客体験にどのように寄与するのかという観点から行動心理学や日本語処理に重要な言語学などに重きを置かなければならないとしている。そのような意味では幅広い分野の知識が必要となるが、企業ではそのような人材は少なく、外部の人材を活用しつつ、既存労働者のスキルの再構築をバランスを取りながら行うことが望ましいとしている。

人のためのテクノロジーとしての「AI」

しかし、AIを活用することでメリットばかりがあるわけではない。映画「2001年宇宙の旅」に登場するAI「HAL 9000」に代表されるように、AIが人を脅かしかねないという不安は払拭しきれていない側面もある。いわゆるシンギュラリティについてだ。また、倫理規定も必要となる。

昨今では、理論物理学者であるスティーブン・ホーキング博士や、実業家であるイーロン・マスク氏などはAIの脅威論を唱える一方、米Facebook 創設者兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は前向きにとらえている。

この点に関して、保科氏は「人のためのテクノロジーと、しきりに言っている背景としてはAIの使い方を間違ってはいけないという意味もある。あくまで、人のためのテクノロジーであることが重要だと認識しているため、なんでもかんでも人がやっていることをAIで代替するよりは、人とAIのそれぞれの得意領域を見極めて活用していくべきだ。倫理規定に関しては、さまざまな議論はされてはいる。繰り返しになるが、人を中心に据えることが一番重要なため、無理矢理技術を適用するのではなく、人のために何をしたいのかを明確にした上で、適用する技術を見極める必要がある」と述べており、AIを活用する分野の見極めや倫理規定の策定が、今後の課題だということができるだろう。