テレビ東京のアニメに関する物事を統括し、ビジネスとして取り組むアニメ局・アニメ事業部。その部長・廣部琢之氏への取材の前編では、大ヒットした深夜帯の作品『けものフレンズ』をキーポイントとして、テレビ東京のアニメがどのように生まれ、育てられるのかをみてきた。そこで廣部氏がまっすぐに語っていたのは、「テレビ東京で放送するアニメ作品はできる限り長く取り組んでいきたい」という思いだ。その言葉通り、ゴールデンタイム帯に放送されている『ポケットモンスター』シリーズをはじめ、長期的に放送されている作品は数多い。
その一方で、廣部氏は「アニメは放送するだけではないんです」「むしろ放送が終わった後の方がめちゃくちゃ長い」とも語る。確かに、放送という観点から少し外れて見ると、テレビ東京は2014年から千葉・幕張メッセで毎年、同局のアニメ作品で楽曲を担当した声優やアーティストが集まる音楽イベント・アニメJAMを開催しているし、2017年4月からは独自の配信サービス・あにてれを始動させるなど、その取り組みは実に多岐にわたっている。それらの中心部分に位置する思いは何なのか。後編では、『けものフレンズ』だけでなく様々な角度から、アニメ局の仕事を伺うことで見えてきた"テレビ東京らしさ"についても紹介したい。
できるだけ長期間取り組んで作品の魅力を伝えたい
――先程までは主に、深夜帯の『けものフレンズ』のお話をメインにお聞きしてきましたが、テレビ東京さんのアニメ作品は全体を通して見てみると、夕方帯はじめ息の長い作品が多いですよね。
そうですね。例えば『ポケットモンスター』は2017年で20周年ですし、『遊☆戯☆王』や――『BORUTO-ボルト-』に世代交代しましたが――『NARUTO-ナルト-』も長いです。他局さんは1、2クールものといったように、ある程度、最初から期限を設けて放送する作品が多々あるじゃないですか。テレビ東京でも深夜で放送しているものは、最初は1、2クールですが、ちょっと間をあけて2期、3期……とやっていける作品であれば良いと思っています。
――『ゆるゆり』シリーズなどそれに当てはまりますね。
そうです。それに現在放送している作品でも『銀魂』(4期)、『夏目友人帳』(6期)、『弱虫ペダル』(3期)。休む期間があったとしても、もう何年にも渡ってやってきている作品が多々あるんです。ファンの人たちと一緒に長く愛されるような作品を育てていくことは、テレビ東京らしさの一つかも知れないですね。加えて、ウチで放送する以上、できるだけ長い間取り組んで作品を浸透させて魅力を伝えていこう、さらにそこから派生するアニメのプロジェクト自体が盛り上がるようにしていこう、ということで期限を設けずに腹を据えてやっている作品も沢山ありますね。
幅広い層が楽しめる作品でないと社会現象にならない
――作品数という観点では、児童がターゲットと思われる土日朝のアニメが多い印象を持っていまして。派生プロジェクトも盛り上げたいというお話がありましたが、2016年に公開された『プリティーリズム』シリーズのスピンオフ劇場アニメ『KING OF PRISM by PrettyRhythm』は大人の女性ファンも多かったように思います。
実は一見子供向けの作品でも、子供だけにしか分からないものは、むしろ子供に刺さらないんですよ。今の子供たちはすごく多感だし、色々な経験で常に様々な物に触れていますから。それに子供の方が作品への理解力だったり受け取り方だったりが多様なので、子供が観られる作品は中学生、大学生、親御さんが観ても楽しめるような作品になっていると思うんですよね。
――例えば『妖怪ウォッチ』などはよく親御さんもついつい観入ってしまうと言われますね。
きっと大人が楽しいものは子供も楽しいし、子供が楽しいものは大人も楽しい。たまたま入り口が子供向けにスタートした、深夜で大人向けにスタートした、というだけで話題になる作品は、普段アニメを観ない層も含めて老若男女に広まっていくと思うんですよね。だから『妖怪ウォッチ』も子供向けだと思われても、大人が観ても十分楽しめる。あるいは、『おそ松さん』なんかは深夜に放送していましたけど、今や小学生にも人気です。そういったように、幅広い層が楽しめる作品じゃないと社会現象にならないんです。むしろ大人たちが解釈しているのとはまた違う見方で子供たちが楽しんでいるとか、子供たちとは違う目線で大人たちが楽しめるだとかもあります。ウチで言えば『アイカツ!』や『プリティーリズム』という女の子アイドルを描いた作品は、女児たちはそのキャラクターに憧れて楽しむけれど、アイドルを応援するように楽しんでいるとか声優にひかれて作品を追いかける人もいて……本当にアニメって見方も入り口も多様化しているので。社会現象のレベルにまで広がる作品は、そこも拡大していくというか。
――核に面白いものがあれば、ということですね。
そうです! なので、やはり作品を選ぶ時はまず純粋に作品として楽しいか、面白いかを重視しています。また、その楽しい面白い作品というのは、万人が観て楽しいか面白いかだけでなく――今アニメ局は60人以上在籍しているんですけど――1人2人であっても「これ面白いからやりたいです!」とか「絶対ヒットさせます!」と熱い気持ちを向けている作品ですね。そういったものには絶対に魅力的なところがあるので、尊重してあげたいと思っています。