2016年11月2日にTVアニメ『魔法少女育成計画』のOPテーマ「叫べ」でソロアーティストデビューした声優・アーティストの沼倉愛美。続けざまにTVアニメ『風夏』のOPテーマ「Climber's high!」も担当した彼女は6月14日に1stアルバム『My LIVE』を発売した。今回はアルバムについてのほか、アーティストデビューをしてから今までの心境について訊いた。
アーティスト活動は生活の一部
――今回はアルバムのことに加えて、アーティストデビューしてからのこれまでやこれからについてもお伺いできればと思います。
よろしくお願いします。
――早速ですが、まずはデビューしてからこれまでの活動について。沼倉さんは以前のインタビューで「ソロ活動は挑戦」とおっしゃられていました。1st・2ndシングルを発売し、アルバムの収録も終えたいま、何か心境に変化はありましたか?
そうですね……うまく表現できないのですが、日々生活しているなかでソロ活動が「当たり前のこと」、「やるべきこと」のひとつになった気がします。ソロアーティストとしての活動は今までにない挑戦的なことで、一つ一つがとても特別な出来事でした。ただ、シングルを2曲歌い、アルバムを発売するいま、それが生活の一部になった、そんな感覚です。
――以前は特別だったことが、「当たり前」と感じるようになった。
「当たり前」だと感じられるようになったことは、私にとって良い変化だと思っています。少し余裕が出てきたことで、自分が今まで何ができて、何ができていなかったのかが見えてきました。次どうすればいいのか、ということも考えられるようになりましたね。
――今のお話と今回発売するアルバムタイトル『MY LIVE』というのは何だか繋がっているようにも感じます。
アルバムのタイトルは、日々自分が生きていて感じたことをアルバムで綴っているからという理由に加え、8月12日から「LIVE TOUR」も始まることを考慮して付けました。言葉としては正しくない造語みたいなものですが、私にしてはよく思いついたなと。
――インパクトのあるタイトルで、「さすが沼倉さんだな」と個人的には思いました。
本当ですか? よかったです(笑)。
――そんな複数の意味を持つアルバムには1st、2ndシングルの表題曲に加えて、新曲が10曲収録されています。サイバー感のある曲やバラードなどバリエーションも豊富ですね。
今回のアルバムは、6月に発売して8月にはライブもあることから、明度の高いものにしたいという意向がありました。1st、2ndシングルがダークな世界観だったので、それよりは笑顔感や明るさのある曲で、というイメージだけをお伝えし出来上がった曲たちです。ソロ活動では経験してこなかった曲も歌わせていただき、新たな自分を発見できたような気がしますね。
『MY LIVE』は音楽と映像が相乗効果で高めあう一曲
――アルバム全体のことから、続いて個々の曲についてもお伺いできればと思います。まずは表題曲『MY LIVE』について。本曲では作詞を手掛けていらっしゃいますが、この詞にはどのような想いが込められているのでしょうか?
最初はアルバムコンセプト通りの前向きな詞にしようとしていました。ただ、この曲を作詞する時に仕上がっていた曲がどれもイメージ通り前向きな曲で、『MY LIVE』でも同じようなことを書いたらもったいない気がしたんです。それから改めて曲を聴いてみると、一直線よりはちょっとひねくれているなという印象を受けて。それで私なりの前向きを振り切って表現してみたんです。そうしたら、思っていた以上にひねくれちゃいました(笑)。
――自分でも予想外だった?
ここまで鋭角になるとは思っていませんでした。最初にサビのラスト「あなたの選択おおむね正解です」というワードが思い浮かび、それが基準となったから、このくらいひねくれた歌詞になった気がします。
――どのくらい尖っているのか、改めてアルバムを聞いて確認しようと思います! 本曲は初回限定盤Aに、MVの映像特典も同梱されますよね。
はい、こちらの映像は今までシングルで収録したMVにないくらい、ストーリー性のある映像に仕上がっています。ドレスを作っていただいたり、スタジオのセットを組んでいただいたりと、思っていた以上に作り込んでいただきました。
――YouTubeにアップされている映像ではドレス姿の沼倉さんがカーテンをちぎったり、瓶を割ったりなど衝撃的なシーンが公開されていました。
スタッフの方にどういうイメージですかと聞かれたときに「強いて言えば、何かを投げている感じ」とお答えして、出来上がったのがこのMVです。でも……うーん、どこまで種明かししよっかな(笑)。
――な、なんですか!?
実はYouTubeでアップされているシーン以降でもっと衝撃的なことが起きます。失敗できないカットだったので、そのシーンの撮影はとても緊張しましたね。演じた自分からしてみると「何してんねん」という感じなのですが(笑)。ただ、その衝撃的なシーンも含めて、今回のMVは最初から最後まで私の中にはなかった発想でした。それでも、私の書いた歌詞、歌からこの映像が生まれた。私の歌なのに、私の発想にない作品が生まれるなんて、何だか面白いですよね。このMVがあることで『MY LIVE』という曲の幅が広がった、拡げてもらった気がしています。
――歌だけを聞いたときと映像を見た後だと、印象も変わってきそうですね。
そうですね。見れば見るほど、聞ければ聞くほど相互に高め合っている、そういう作用が働いているMVだと思います。
――MVの完全版を見るのが楽しみです。続いて、本アルバムでもう一曲作詞を手掛けられた「暁」について。こちらはバラード調の曲ですが、どのような想いを込めて作詞されましたか?
「暁」は相手を限定したラブソングにしようと思っていたのですが、曲が壮大だったので、もう少し広い意味の愛を表現することにしました。詞のなかには「あなた」と「私」がいますが、込めた想い自体はすごく広くて。ラブソングよりも温かいゆったりした愛情を詞の中に込めています。かなり思うがまま作詞したので、聞く人によっては情景が思い浮かべにくい曲になっているかもしれません。
――それくらい、自分の気持ちが歌詞に表れている?
そうですね。素直な言葉が並んだかなと思います。
――今回作詞された2曲はどちらもオリジナル曲です。以前のインタビューではアニメタイアップだからこそ作詞しやすかったとおっしゃられていましたが、実際にオリジナル曲を作詞されてみて違いを感じましたか?
違いましたね。アニメタイアップだと作品からヒントをもらって作詞していきますが、オリジナル曲にはそれがない。作品に変わる何かが必要だったのですが、私にとってそれは、「サウンド感」でした。聞いたサウンドや音の流れの中に気持ちよく言葉をはめていく、それが今回の作詞のスタイルでしたね。
――楽曲からインスピレーションを受けて作詞した?
そうですね。今回アルバムで作詞した2曲とも最初に思い浮かべていた詞の方向性を、曲を聴いてからガラッと変えました。ただ、今回はそういうやり方をやってみただけだと思うんです。まだまだ経験が足りないので。これから作詞を繰り返すことで、どういうやり方がいいのか、見つけていこうと思います。