【レポート】

PHSによる内線環境をFMCサービスに刷新した大同病院はどう変わったのか?

名古屋市南区の社会医療法人 宏潤会 大同病院では、医師および各部署の上位役職者に配布した外線通話可能な約200台のPHSと固定電話で構築していた内線環境をFMCサービス「ホワイトオフィス」に刷新。それと同時にiPhoneを200台導入し内線環境を大幅に改善している。

多くの医療機関で内線環境として導入されている構内PHSシステム。これは昭和35年に制定された薬事法と平成9年に不要電波問題対策協議会(現:電波環境協議会)が発表した指針により院内で使用できる無線通信機器が規制されていたためである。施設内での移動が多いスタッフ同士の連絡が頻繁に発生する医療機関では、その手段として構内PHSシステムを導入する以外に選択肢がなかった。

それが平成27年に電波環境協議会が発表した指針で規制が緩和され、安全を確保したうえで院内でもスマートフォンが使用できるようになった。しかし、大学病院などで試験的にスマートフォンが導入されているものの、多くの医療機関は安全性への懸念やコストが障壁となり依然としてPHSを使用している。

そんな中、名古屋市南区の社会医療法人 宏潤会 大同病院では、医師および各部署の上位役職者に配布した外線通話可能な約200台のPHSと固定電話で構築していた内線環境をFMCサービス「ホワイトオフィス」に刷新。それと同時にiPhoneを200台導入し内線環境を大幅に改善している。


移動時に切れない内線環境へ

社会医療法人 宏潤会 理事長 𠮷川 公章氏

「医療現場では、急患受け入れやナースステーションからの呼び出しなど医師が移動しながら通話をすることが頻繁にあります。ところが構内PHSはエレベーターや階段によるフロアを跨いだ移動時は切れてしまいます。現場には急いで行かないといけない、しかし現場到着までにできるだけ多くの情報を知っておきたい、というジレンマがありました。これは最適な医療提供の責務がある我々にとって悩みの種でした」

こう語るのは同院 𠮷村理事長。9階建ての同院は404床を有する入院棟として機能し、外来は隣接するグループ施設の大同クリニックに集約。入院・外来両方の患者を診る医師は日々このジレンマを抱えていた。しかし今回のFMCサービス導入でそのジレンマから医師を解放。医師と上位役職者に配布していたPHSをiPhoneに切り替え、モバイル通信網による内線通話が可能になりエレベーターや階段でも切れることはなくなったという。

院外の医師との連絡も容易に

FMCサービスはモバイル通信網圏内であれば全国どこにいても内線通話ができるため、院外にいる医師との内線通話も可能になった。以前は休日やオンコール等で院外にいる医師へ内線をかけた場合、自動的にその医師のPHSに外線発信する仕様になっていた。さらにそのPHSが圏外の場合は予めPBXに登録している医師個人の携帯電話へ転送する機能も備えていた。そのため院外にいる医師との連絡がシームレスにできる利点があったが院外にいる医師には不便だったと宇野医師は語る。

社会医療法人 宏潤会 理事 宇野 雄祐 医師

「私個人の携帯電話に転送された電話に出られなかった場合、不在着信として病院の代表番号しか表示されず、誰からの着信だったのか分かりませんでした。その場合、電話がかかってきそうな病棟や医師にかけ直しますが、担当する患者は複数の診療科や病棟にいますし、医師も同じ診療科の医師とは限りません。しかも代表番号にかけて繋いでもらう必要があったので非常に手間でした」(宇野医師)

これはPBXの仕様で内線から自動的に外線発信をする際、代表番号の固定電話回線から発信するためで、同院が使用しているPBXでは改修することができなかった。

またこの自動外線発信は別の問題も生んだと内線運用を担当する加藤氏は語る。

社会医療法人 宏潤会 医療統括本部 医療職管理部 副監理部長 執行役員 加藤 彰裕氏

「内線からの自動外線発信で代表番号の回線が塞がり外からの電話が繋がらない、ということが起きていました。実際、代表番号への電話が繋がりにくいとクレームを受けたこともあります」(加藤氏)

この原因は院外にいる医師への自動外信発信だけではない。院内に設置されている構内PHSアンテナは1機あたりのPHS同時接続数が3台となっている。医師が集まる医局などでは、構内PHSアンテナに3台が同時接続することが日常的に起こっており、そこにいる医師に内線発信するとアンテナが塞がっているためPBXが自動外線発信をしてしまうのだ。その場合、院内にいるスタッフ同士で外線通話をしていたことになり、当然通信費も発生していた。

しかしこれらの問題もFMCサービスの導入で全て解決となった。特に院外での不在着信について宇野医師は「iPhoneになってからは不在着信画面に発信者名が表示されるので、すぐに折り返せるようになりました。気分的にもずいぶん楽です」と語った。

不在着信履歴が発信者名で表示されるようになった

インターネット上の様々な医療情報にも閲覧できる

費用対効果が高いFMCサービス

FMCサービス導入で今まで不便に感じていたことを解決した同院だが、コストについて聞いてみると「今回の導入に際し、FMCサービスおよびiPhone200台の運用コストと構内PHSサービス利用時のスタッフ間通信費を比較したところ、わずかにコストアップとなることがわかりました。しかし、それ以上のメリットがあると判断し導入を決めました」と加藤氏は語る。

今まで利用していたPHSがFMCサービスでも利用できるため利用者が増えたこと、さらにiPhone限定ではあるが、MDMによる端末管理やiPhone紛失・故障時の無償交換対応など管理者の負担を減らすサービスも利用可能となった。

通信コストと運用面の比較

また, 安全性に関して加藤氏は「今の携帯電話やスマートフォンの電波は微弱になっています。iPhoneを導入して1年半になりますが、医療機器への影響は一度も報告されていません。またアプリの制限なども一切行わず医師に自由に使ってもらっています。医師はモラルの高い人たちだと信じていますから」ときっぱり言い切った。

しかし加藤氏が最後に語った「どこでもつながる、メールやインターネットが利用できる、日常で当たり前のことが医療現場でも当たり前になったことが大きいですね」という言葉が筆者には一番印象的だった。

同院では現在、画像データや電子カルテをiPhoneで見られるよう準備を進めているという。単なる音声デバイスではなく医療行為そのものをサポートするデバイスとしての活用を目指す同院の今後に注目したい。

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