2017年に登場するであろう新しいiPhoneでは、デバイスの表面全てがディスプレイになるような予測が大勢を占める。その通りになれば、ホームボタンを配置する場所はなくなり、「ホームボタンがなくなるのではないか」という話が現実のものとなる。

2016年8月に、本連載の中で、「iPhoneのホームボタンがなくなる未来も」という話題に触れた。ちょうどホームボタンが感圧式に変わったiPhone 7登場直前に、「感触」にフォーカスした機能を多く取り入れたAppleの新しい体験について考えた原稿だった。

iPhone 7。Touch IDが内蔵されたホームボタンは感圧式に変更され、今までの押し込むタイプのボタンとは異なる設計に変更されている

iPhone 7ではデバイスの上で、これまでと同じ位置に、物理的な「ホームボタン」として残された。しかしその操作感は、今までのボタンとして押し込めるものではなく、圧力を検知するプレートに変更され、感触のフィードバックがあるディスプレイと同様のものだった。電源が入っていないiPhone 7のホームボタンを触って初めて、本当に押し込めないボタンなのだと認識できる。それだけ、TapTic Engineによる押し込んだ差異のフィードバックに、我々がだまされて、ボタンを押しているように感じているのだ。そうした、今までの押し下げられるホームボタンではなくなったiPhone 7と、既に搭載されていた3D Touchをサポートするディスプレイを使っていると、ホームボタンがなくても大丈夫な環境が着々と整えられていたことに気づく。

iPhoneの操作のためのインターフェイスは、登場以来、ホームボタンと画面のタッチ、側面にある電源とボリュームボタン、ミュートスイッチが全てだ。加えて、デバイスに内蔵されている照度センサーや加速度センサー、マイクも、より直感的な操作環境を提供してくれる。

ホームボタンは、iPhoneを使う上で、最も分かりやすい機構であり、操作する上での「安心材料」と言えるかもしれない。画面が消えているときに押せば、画面が点灯する。もし指紋登録済みの指で押せば、Touch IDで認証され、ロック解除される。アプリを使っている時、ホーム画面に戻ったり、他のアプリに切り替えたい場合は、ホームボタンを押せば良い。とにかくホームボタンから何かを始めれば解決する、そんなボタンだった。

しかし、その役割は、だんだん分散されつつある。

例えば、iPhoneが机に置いてあるとき、あるいはポケットから取り出したとき、iPhoneを自分の方に傾ければ、画面が点灯する。電源ボタンやホームボタンを押さなくても、端末を使おうとすれば、画面が点灯するのだ。またアプリ切り替えについても、新たな方法が提供されている。アプリを切り替える際にホームボタンを2度押ししていたが、3D Touch対応のiPhoneであれば、画面の左端をぐっと押し込むことで、タスク切り替えが行えるようになった。加えて、何かのアプリを使っている時に、メッセージアプリの通知をタップしてアプリを切り替えたとき、画面最上部の右端には、今まで使っていたアプリ名と矢印が表示され、タップすれば前のアプリに戻ることができるようになった。ついつい今までの癖で、ホームボタンをダブルクリックしてタスク切り替え画面を表示させてしまうのだが。

さらに、Siriの起動方法もホームボタンを頼らない方法が追加されている。Siriは登場以来、ホームボタンを長押しすることで、どんな場面でも音声を聞き取る状態に入ってくれていた。しかし同時に、声で「Hey Siri, ○○」と話しかければ、聞き取り状態に入るのを待たずに、指示を出すことができる。

このように振り返ってみると、iPhoneのホームボタンが担っていた役割は、だんだん他の方法が追加されていき、その負担が軽減されていることが分かる。