SAPジャパンと岡田武史氏がオーナーを務めるFC今治は3月22日、FC今治がスポーツ専用クラウドソリューション「SAP Sports One Solution for Soccer」の採用を決定したと発表した。

説明会では、初めにSAPジャパン バイスプレジデント CIOを務める馬場渉氏が、SAP Sports Oneについて説明した。

馬場氏によると、同社はスポーツ産業に対し、プレーヤー、ファン、スタジアムの3つの領域から取り組んでいるが、SAP Sports Oneはプレーヤーを対象とするソリューションとなる。

SAP Sports OneはSAP Cloud Platform上で稼働するスポーツ専用クラウドソリューションで、チームと選手のパフォーマンスを最適化するための分析機能に加え、チームと選手を管理するための統合プラットフォームを提供する。

SAP Sports Oneの概要

これまで、SAP Sports Oneはサッカー以外のスポーツも含め、6カ国20チーム以上が採用しているが、国内ではFC今治が最初のユーザーとなった。馬場氏は、SAP Sports Oneの導入にあたってのポリシーついて、「単にSAP Sports Oneで分析が行いたいというチームではなく、明確な目的の下、新たな手法で戦術を変えたいという意志を持っているチームと一緒にやっていきたい」と語った。

SAP Sports Oneの顧客

今治.夢スポーツ 代表取締役会長 岡田武史氏

今治.夢スポーツ 代表取締役会長の岡田武史氏からは、FC今治がSAP Sports Oneを採用した理由、SAP Sports Oneの具体的な利用法について説明があった。

Sports Oneを採用した理由は「FC今治が開発したサッカーに関するメソッド『OKADAメソッド』を使うため」だという。「OKADAメソッド」では、「日本人の強みを生かした常識にとらわれないイノベーティブなサッカーの確立」と「『守破離』の考えによる一貫指導」を目指す。「日本はストライカーがいないから点がとれないと言われるが、OKADAメソッドでストライカーがいなくても勝てるようにしたい」と岡田氏。

「OKADAメソッド」の概要

「OKADAメソッド」の全体像

岡田氏は「OKADAメソッド」が誕生したエピソードを次のように語った。

「スペイン人のコーチとの出会いがOKADAメソッドの始まり。彼から、スペインでは16歳までにサッカーの基本を落とし込んでから戦術を教えると聞いた。これは日本とはまったく逆のパターン。そこで、日本でも16歳までにサッカーの基本をKATAとして落とし込むチームを作ってみようと思った。OKADAメソッドを作り上げるまでに2年かかったが、出来上がってみて、どうやって運用しようかという時にSAPと出会った」

SAP Sports Oneでは、コーチがOKADAメソッドで定義している攻撃のKATAに関する説明と映像から構成されたプログラムを確認し、それらを選手に見せて、トレーニングを行う。トレーニング終了後は、コーチが評価をSports Oneに入力する。

「統合的にOKADAメソッドに取り組むには、SAP Sports Oneが必要。また、ビジネスモデルとしてOKADAメソッドを出していくために、SAPと組む」と岡田氏。

FC今治のデモ環境下でのSAP Sports Oneの操作画面。マスタデータとして選手のデータを入力し、カタログに対しOKADAメソッドを入力する

FC今治では、トップチームに対しSAP Sports Oneを試験導入したところ、効果を得たことから、育成チームにも導入を始めたという。「SAP Sports Oneの導入により、明らかにFC今治のプレイだとわかるようになった」と岡田氏。

なお、OKADAメソッドのマネタイズについては、海外をターゲットに据えているという。「コンサルティングも含めた導入を考えており、基本的には、1つの国において1チームに導入し、その国で最も強いチームになってほしい。既に中国に人を派遣しており、香港とマレーシアから引き合いが来ている」と岡田氏は説明した。

今後、OKADAメソッドを体得した若いプレーヤーがこれまでの日本のプレースタイルを破って、世界に羽ばたくことを期待したい。