歴代の"先輩"を参考に河本啓佑らしい島村ジョーを形成

――そんな裏話が! 河本さんは島村ジョーを演じる上で意識したことはありますか?

河本:これまでの作品で見られるものは全て見ました。島村ジョーを演じてこられた先輩方の演技の共通点を探りましたね。ジョーのナイーブな部分ですとか、優しさの中にある芯みたいなものを、先輩のお芝居を見て参考にさせていただき、その上で自分が演じるジョーならどういうものになるだろうと考えていきました。お芝居を先輩に寄せるのではなく、核となる部分を参考にして、僕にしかできないジョーを作り上げていったのです。

――プレッシャーもあったことと思います。

河本:プレッシャーはすごかったですね。でも島村ジョーって、これまでに何人もの先輩方が演じてこられているんです。そういう意味では思い切ってやれました。これが2作目とかだと、もっとプレッシャーもすごかったと思います。

柿本監督:オーディションで声を聞かせていただいたとき、特に重要視していたのはジョーの強さの奥底にあるナイーブさでした。河本さんは、そもそもそれを持っていたんですね。

シリーズのファン、若い女性、幅広い年代層から好評を獲得

――強さの奥底にあるナイーブさとは?

柿本監督:言葉にするのが難しいのですが、誰かに強く何かを言い放つときなどに、相手のことを考えての強い言い方だったり、ジョー自身の悲劇的な背景だったりを言葉ににじみ出すということです。この表現でいいのかはわかりませんが、声に湿り気がほしいんです。その雰囲気を河本さんは持っていました。

河本:オーディションのときって、「島村ジョー役の河本啓佑です」みたいに名乗ってから入るんですが、その名乗った部分がもう島村ジョーだったよって打ち上げの席で言ってもらえたんです。作っていないところがジョーに近かったというのはうれしいですね。

――昨年11月から12月にかけて劇場公開されましたが、反響などはいかがですか。

柿本監督:反響は逆にあまり見ないようにしていたんです。怖いので(笑)。ただ、見た方や昔からのファンの方がイベントなどで「昔の作品を大事にしてくれてありがとう」とか「この先が楽しみです」とか言ってくださって。他には「ジェットはジェットだったし、ジョーはジョーだったね」と言ってもらえたのがうれしかったです。

河本:舞台あいさつのとき、幅広い年代の方に来ていただいて、これほど歴史のある作品だとそうなんだなと感じました。若い女性もいたし、そういう方にはTwitterでもコメントをいただけて。

Netflixでは……「一気見してほしい」「作品を知らない方にも見ていただきたい」

――Netflixでの独占配信が始まりました。さらにたくさんの人が鑑賞されると思います。

柿本監督:Netflixでは全話一挙公開になりますので、ぜひ1話から12話まで一気見してほしいですね。どの話もちゃんと一つひとつのエピソードとして完結しているのですが、つなげて見ると9人の関係や役割、意外な面が見えたりするのです。終盤のエピソードは加速感を意識しているので、そういうところを楽しんでほしいですね。

河本:Netflixなら全世界の方に見てもらえるのがうれしいですね。作品を知らない方にも見ていただきたいし、映像の美しさやいきおい、リアルでスタイリッシュな戦闘シーンを楽しんでいただきたいです。僕らも心をこめて命を吹き込んでいますので、最後まで堪能していただければと思います。


Netflixで独占配信がスタートした『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』。少しずつ公開された劇場版とは異なり、1話から12話までの一気見が可能なのはNetflixならではの特権といえる。

『サイボーグ009』のファンも、初めて見るという人も、ぜひこの機に楽しんでみてはいかがだろうか。

■プロフィール
河本啓佑
1986年11月18日生まれ。岡山県出身。2007年にデビューし、TVアニメ『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』(2013年)で主人公ラウル・チェイサー役に抜てきされ活動の幅を広げる。これまで担当してきた主な役どころとして『東京ESP』(2014年)の東京太郎、『美男高校地球防衛部LOVE!LOVE!』(2016年)の別府月彦、『私がモテてどうすんだ』(2016年)の七島希など。本作では主人公の009/島村ジョー役を務める。

柿本広大
Production I.Gに制作進行として入社し、『精霊の守り人』(2007年)で初めて絵コンテおよび演出を担当。『図書館戦争』(2008年)、『東のエデン』シリーズといった同社の作品を中心として活動した後、フリーに。『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』シリーズでは、助監督と絵コンテおよび演出を務めた。続いて『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』では絵コンテと演出を担当。本作が初の監督作品となる。

Photography:西田航(WATAROCK) 
(C)2016「CYBORG009」製作委員会