声優・東山奈央のソロデビューシングル「True Destiny / Chain the world」の発売を記念したイベント「虹のはじまり」が2月12日、神奈川・ラゾーナ川崎プラザにて開催された。2月1日のソロデビューシングルリリースを記念して行われたこの日のイベントには、表題曲通りまさしく彼女にとっての「True Destiny」が詰まっていた。

東山奈央

凛々しさと笑顔で彩られた、はじまりのステージ

会場に到着した瞬間、まずその人の多さに驚かされた。開演15分前にもかかわらず、観覧スペースだけでなく3階のデッキ部分にも人がいっぱいで、開演直前にはより密度を増し、ざっと4,000人ほどは集まっているように感じられた。彼女の、初イベントへの期待値の高さを伺わせる。一方、天候も彼女に味方。雲に包まれていたステージだったが、開演5分前には会場周辺から完全に雲が消え去り、抜けるような青空のもとでのイベントとなった。

定刻となり、東山はCDジャケットの衣装で登場。「ホントにたくさんありがとうございます! すごーい!」と感激しつつ「寒い中ずっと待っててくれてありがとうございます!」と観客を気遣う言葉に続けて、まずは「Chain the world」を披露。頭サビの瞬間、"アーティスト・東山奈央"と現実世界とが繋がる。歌唱中はとにかく凛々しく心響く歌を響かせていき、サビラストの最高点も力強く歌いきる。一方で、間奏に入ると素直にうれしそうな表情も。

曲明け、「改めまして、声優の東山奈央です!」と名乗った彼女は、眼前に広がる人たちに「たくさんのみなさんの笑顔が見られてうれしいです!」と続けつつ、「寒いなりにも、まだ温かいほうの日でホッとしています」と再度観客を気遣う言葉もかけてくれた。

そして、「個人名義の歌手活動のスタートというなかで、私がみなさんと共有したい気持ちや、『こんな人に、こんな声優・歌手になっていきたいな』という想いが込められた曲です」と紹介して歌いだしたのは、「I WILL」。先ほどよりも若干穏やかな表情で、少しずつ観客サイドを見回しながら、まっすぐな想いを漏れのないように届けていこうとする姿が印象的。その実直な歌声が、EDMに近いサウンドに混ざり合い、場内に染み込んでいくかのようだった。歌い終わると、少し笑顔の明るさを増した東山は「伝わったでしょうか?」と問いかけ、観客からはもちろん大歓声が返ってくる。

そして今度は、『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃(ひかり)~』に登場する伝説の歌姫・ムジカとして歌った「風空花人」を歌唱。アコースティックギターとストリングスがメインの、実に穏やかなバラードだが、その表情の没入具合から、少々"演じる"ような表現アプローチも込められているように感じられた。ただこの曲でも、観客へ向けての彼女の意識は変わらない。すべての人へ"届ける"ことを大事に、おおらかにたおやかに歌い上げていく。

より大切になった"2月12日"という日

歌い終えると彼女は、この"2月12日"という日への運命的なめぐり合わせについて語り始める。実は彼女、声優として、初めてのソロライブとなる「中川かのん1stコンサート」(TVアニメ『『神のみぞ知るセカイ』』)を開催したのが、5年前の2月12日。これはスタッフも知らなかったとのことで、そのときの「ふぁっ!?」というリアルなリアクションを再現しつつ、「偶然でこの日になったというのが運命のような、まさしく『True Destiny』のような日だなと思っております」とラストナンバーのタイトルにかけてその感慨を語ってくれた。

そして、ここでも歓声を送ってくれた観客をはじめ、改めてすべての人へ感謝の言葉を伝え始める東山。「みなさんとこうして出会えているのは、7年間演じさせていただいたキャラたちが連れてきたご縁だとすごく感じています」と、CDのSpecial Thanksにも込めた"今まで出会ったキャラクターたち"へまず感謝し、「私は伝えたいことを言葉にするのがうまくなくて、セリフや歌に込めてお伝えすることにやりがいを感じていたんですが、そんな想いを受け取ってくださった、私よりも私のことを考えてくださる皆さんに見守っていただけて、本当にうれしいです」と、改めて感謝の言葉を口にしていた。

「そんな感謝を込めて……」との言葉に続いて、彼女からその最大級のお返しとして歌われたのが、ラストナンバー「True Destiny」だ。イントロでは今日いちばんの笑顔を見せる一方で、やはりこの曲でも歌いだした瞬間に凛とした表情に変わる東山。しかしこの曲では、その喜びが隠しきれないのか、笑顔も時折漏れる。おそらくこれが、キャラを通してでなくにじみ出てくる、彼女自身の今の素直な想いなのだろう。

そんな想いに呼応してか、再び天候が彼女にミラクルをもたらす。なんと1サビの間だけ、彼女のもとに向かい風が吹き付けた。それは、向かい風に力強く立ち向かって歌い続ける彼女を、どんな舞台装置よりも輝かせる奇跡。はじまりのステージに込めた決意にふさわしい光景だ。しかもパフォーマンスの面でも、力強くDメロを歌い切ったあとの繊細な落ちサビの歌声などからは、この4曲だけでは底知れない伸びしろも感じさせる。実力とめぐり合わせを味方につけた、最高のステージだった。

そして最後に、この日のイベントタイトル「虹のはじまり」について触れる東山。彼女のアーティストロゴについて、「人と人との輪、あと"和"のイメージが入っていたらうれしいです」と話して完成したロゴが、虹が輪のようになっているもの。そして「ここにいるみなさんが、私が作ったものに魅力を見出してくれた方々なんじゃないかなと思います。そんな"みなさんあっての私"という意味が、虹には込められています」と続け、「そのみなさんに楽曲を生で聴いていただけた今日この日をもって、モノクロだった虹のロゴが七色になります!」と宣言。このイベントでデビューシングルは一旦の完成をみた、というわけなのだ。

そんな虹色のはじまりを刻むべく、観客をバックにした記念撮影も敢行。撮影後には「本当に今でも夢みたい!」と感激しきりの様子で、ライブパートは幕を下ろした。

その後、イベントは購入特典のお渡し会に。準備中、不意に「反対を振り切って出てきちゃった!」とサービス精神全開でステージに上がる東山。小さな子どもや、懐かしい昔のキャラグッズを手にした人々についてもうれしそうに触れた。準備のための、止むを得ずの降壇も、惜しんで惜しんで仕方のない様子だった。

そのお渡し会も人がぎっしり。大人数にも関わらず、一人ひとりとていねいに言葉をかわし、笑顔で手を降って送り出す東山。その"神対応"のおかげで、イベントが終了したのはライブ開始から実に約4時間半後のことだった。

いち表現者として、その歩みを始めた"アーティスト・東山奈央"。これからは芝居に加えて歌声でも自らの届けたいものを表現し、伝えていくこととなる。この日彼女が語ったような感謝と確固たる想いが心の中にあれば、それは受け手に届いたときに漏れなく虹色に輝くことだろう。いや、7色以上に、無限のグラデーションを伴わせて輝くこともできるはず。彼女の、これからのますますの飛躍から、目が離せない。

東山奈央デビューシングル発売記念イベント「虹のはじまり」

M-01 Chain the world
M-02 I WILL
M-03 風空花人
M-04 True Destiny