アニメ音楽誌「リスアニ!」が主催する音楽フェス「リスアニ!LIVE 2017」が1月27日から29日まで3日間にわたって、日本武道館にて開催された。

今年から開催期間が2日から3日へと規模を拡大した本イベント。初日はKalafinaとLiSAのツーマンライブ"CROSS STAGE"が、2・3日目にかけては例年通り様々なアーティストが出演する"アニメ音楽フェス"ド真ん中の内容で行われた。本稿では、1月28日に行われた「SATURDAY STAGE」の模様をお伝えする。

綾野ましろ

他の音楽フェスと比較したときの、「リスアニ!LIVE」の特徴は2つ。まずひとつは、"全出演者が生バンドを引き連れて楽曲を披露する"というもの。いつもサポートメンバーを引き連れてライブ・ツアーを行っているアーティストは、普段通りのメンバーで参加し、生バンド未経験であったりメンバーが固定されていないアーティストも"リスアニ!バンド"がサポート。アニメ音楽誌主催らしい、ライブならではの臨場感を何より大事にしたライブイベントとなっている。また、ステージ袖にて歌唱した直後のアーティストを迎えてのトークも実施。今年も昨年に引き続き音楽評論家・冨田明宏氏をMCに据え、セットチェンジの時間にも、貴重な裏話を楽しむことができた。

そんな、"音楽の楽しさを十二分に味わえる"準備の整った武道館に、トップバッターとして立ったのは綾野ましろ。昨年"Extra Artist"として3曲のみの披露だった彼女は、今年は1曲目「vanilla sky」から、何から何まで違っていた。頭サビからイントロにかけてのわずか数十秒だけで、歌声の伸びに力強さ、堂々たるステージパフォーマンスを展開する度胸、その全てが段違い。おそらく1年ぶりに彼女を目にした人は、度肝を抜かれたに違いない。それほどのインパクトのある、鮮烈な登場だった。

もちろん攻め曲のみならず、彼女のパフォーマンスにより幅を与えるきっかけのひとつとなったであろう昨夏発表のバラード「Lotus Pain」では、いたずらに力強く声を張るだけでなく、端々に儚さをも表現。MCや間奏での煽りの言葉で観客を引き上げたら、「スパイラルガーデン」の頭サビ後にはステージ端へとダッシュ。しかもそのまま歌い始めた彼女の声には、息切れがない。ここに、彼女のここ1年の研鑽の氷山の一角が表れていたような気がした。

この曲の間奏でも「もっと声聴かせてくださーい!」と客席を最高潮まで高めたところで、最後にメジャーデビュー曲「ideal white」を披露。イントロが流れた瞬間の歓声は、もう去年の"新人を迎える温かい歓声"とは違う。"演者に高められて思わず発してしまった大歓声"だ。真っ白に染まった客席を前に熱唱しつつ、1サビラストでは不意に客席へとマイクを向けて最後のフレーズを合唱。"堂々と"の域を超えた、スター性すら伴った6曲を披露して、綾野ましろは完全燃焼でトップバッターを見事に務めきった。

この熱気を引き継いてステージに立ったのは、水瀬いのり。伸びのあるボーカルに細かいビブラートが持ち味の彼女は、「夢のつぼみ」のイントロに乗せてステージ階段上に登場。一礼してから歌い出していく。続く「MELODY FLAG」まで笑顔で手を振りながら歌う彼女は、歌詞のメッセージに乗せてアーティストとしての力強い決意を改めて明示。その想いの旗に、観客も笑顔と青の光で続いていくかのようだった。

水瀬いのり

曲明けのMCでは、ソロで初めて立つ武道館への意気込みや、初めて生歌を聴く人々への感謝を改めて語り、ピアノの音色から始まる「Starry Wish」でライブ再開。背後の星空のVJも、また曲に歌声にマッチしている。この曲は歌声に込めた強さと儚さとのバランスが絶品で、なおかつその背後に凛々しさが一本通っている点も、素晴らしいポイントだった。

一方、「あの日の空へ」は、ライブ初披露のスローバラード。雪をバックにみずみずしくもしっとりと歌い上げていき、ラストナンバー「harmony ribbon」へ。温かなミドルナンバーを柔らかく優しい歌声から入り、そこに徐々に力強さが込められていく。その両輪を、声優としての表現力も用いて1曲のうちに両立させているところに、彼女のすごさがある。生のステージを目にして、改めてそう感じさせられた。最後には後奏のコーラス部を武道館全体で大合唱。場内の心をひとつにして、彼女はステージを降りた。

続く三森すずこのステージは、水瀬ともまた違う視覚的な魅力も織り交ぜた、いわば"総合芸術"。まずダンサーふたりを引き連れて登場した三森は、「Light for Knight」を振付も交えながら凛々しく楽曲を展開していく。頭サビのダンスも3人揃えて、随所に織り込まれるバレエ調のステップをこの曲でも軽やかにこなす。また、「せいいっぱい、つたえたい!」ではダンスは少しキュートめに。ワルツに拍子の変わるBメロでは、くるみ割り人形のようなステップが印象的だ。

三森すずこ

「FUTURE IS MINE」では、Aメロでファンとのやり取りを交えたりサビでのコール斉唱があったりと、盛り上げバッチリ。歌声とともに、おもちゃ箱のようなVJと連携したような振付の持つストーリーも展開していく。そして、今年一発目の"みもりんコール"なるコール・アンド・レスポンスで場内の一体感をさらに高めたら、再び凛々しく「Xenotopia」でライブ再開。一瞬のフリではあったが、Bメロでは歌唱しながらにもかかわらず、歌声もブレずに腰の入り方が深くしなやか。そのほか髪のなびき方まで計算され尽くしたかのようなパフォーマンスで、場内を魅了する。

さらに「ヒカリノメロディ」では、間奏でタップダンスのような軽やかなステップも交えて、様々なバリエーションで観客を楽しませたら、ラストにはイントロと同時に会場が沸く鉄板ナンバー「ユニバーページ」を投入。攻め攻めなナンバーなのに、そのステップは最後まで軽やか。歌声も息切れせず安定した、円熟味さえ感じられるようなパフォーマンスを最後まで貫き通した。思い返せば、昨年10月の自身のツアーファイナル以来の生バンドでの武道館。そのときのような大仕掛けはなくても、この日の彼女のステージはたしかに"三森すずこのステージ"だった。