声優・芹澤優が自身初となるバースデーソロライブ「Yu Serizawa Birthday Live ~Present Box~」を2016年12月18日、東京・Zepp DiverCityにて昼夜の部で開催し、ソロデビューを発表した。今回は夜の部をレポート。
本公演は、2016年12月3日に22歳の誕生日を迎えた芹澤優のバースデーを祝したライブとなっている。芹澤は、自身が所属する声優とアイドルのハイブリッドユニット・i☆Risのメンバーでもあり、11月25日にはi☆Risとして初の日本武道館単独公演を成し遂げた。
「私は最初、i☆Risがあんまり好きじゃありませんでした! だって、ゆうは一人でアイドルと声優になりたかったんだもん!」。日本武道館公演では、ラストのMCで芹澤は涙をこぼし、想いを吐き出した。今でこそi☆Risの一員として、メンバーやグループのことを愛し、i☆Risの6人でなければ武道館の景色は見られなかったと語る芹澤だが、2012年のグループ結成当時はソロじゃないこと、そしてセンターじゃないことに驚くなどギラギラに燃えていた。そんな「ソロデビュー」の夢が、4年という年月を経てとうとう花開く。
バースデーをコンセプトとしたステージには、プレゼントボックスや巨大なリボン、シャンデリアなどが飾り付けられている。開演前には芹澤本人からライブ注意アナウンスが行われる。アナウンスは噛み噛みで、もちろん声だけだから表情は見えないのだが、マイクの前の芹澤は間違いなくいつもどおりのまぶしい笑顔なのだろう。これから始まる大イベントへの期待を隠しきれない様子が伝わってくる。いよいよ運命のライブが始まる。ステージに設置された高台に、赤を基調とした白と水色のストライプが入ったドレスに身を包んだ芹澤が登場。i☆Risではブルーをイメージカラーとしている芹澤だけに、真っ赤なドレスは新鮮だ。
一曲目は『犬とハサミは使いよう』の秋月マキシから「マジカル☆ラブ」を届けていく。マキシ様がいつも従えている黒服も、i☆Risのメンバーも今回はいない。今日の主役はただ一人、いまこの瞬間、ステージの、いや世界の中心は間違いなく芹澤優だ。続いてステージに降臨したのは『実は私は』の白神葉子。「今日は盛り上がっていくでー!」と葉子の言葉で客席を煽っていく。ステージを上手から下手へ縦横無尽に動き回り、自身のバースデーを祝いに来てくれたファンたちへ、丁寧にお返しをしていく。三曲目に送るのはマキシの「BRIGHTEST LOVE!」。三曲ぶっ続けだが、芹澤のはじけるような笑顔とダンスパフォーマンスにまったく疲れは見えず、むしろどんどんと盛り上がりを増していく。
続くMCでは、i☆Risおなじみの自己紹介「いつでもー! みんなを-! あいらぶゆうちゃーん!」をソロで披露。「芹澤優としてのライブは初めてで、出てくるまではお客さんいるのかなと思っていたんですけど、いっぱい! ありがとうございます!」と感謝を述べ、「ここにいる誰よりも芹澤が楽しみにしていたので、めっちゃ楽しみたいと思います!」と期待を煽っていく。楽しさに満ちあふれている様子だが、いつもより水を飲む回数が多かったのは、ちょっぴりの不安と緊張の表れだろうか。
落ち着いたところで、『GO!GO!575』より、「ふぁいっおー!」の掛け声が心地の良い小野小梅の「コトバ・デ・ダンシング」を歌い上げていく。ステージに設置されたプレゼントボックスに上っていき、間奏では芹澤が得意な早口言葉を言い切り、ファンからの大歓声に最上級のどや顔でお返しをする。続いては、ゲーム『大合奏!バンドブラザーズP』よりラジオ番組「オールナイトスッポン」のメインパーソナリティを務める新人声優・彩崎ゆうの楽曲「Song For You」をカバー。2016年9月に行われたデビューCDリリースイベントで見せたダンスを中心としたパフォーマンスとは打って変わって、終始リラックスした姿を見せてくれた。プレゼントボックスに座り、足をぷらぷらと投げ出す。踊らない分客席をよく見渡しており、客席に向かってしっかりと手を振っている。「Song For You」は、いつもたくさんの人に支えられ、励まされている彩崎からファンのみんなへ送る歌。今回のイベントにはぴったりな選曲だ。
曲終了後のMCでは、i☆Risの、そして11月25日に開催され大成功に終わった日本武道館の話題に。「いつもみんなと一緒にやっていて、今回一人でライブのレッスンをしていて、ほんとにメンバーってありがたいんだなと思いました。いつも頼り切っているんだということを痛感しました」と、i☆Risから一歩離れることで生まれた真情を吐露していく。そして、日本武道館公演で涙を流しながら語ったMCについても触れていき、「『一人でやりたかった』って話をしたあとにソロの発表もあって、『あいつやめんのか』ってなったと思いますが、やめません! i☆Risも一生懸命やります! それだけはちゃんと伝えたいなと思っていました」と語っていく。i☆Risとして活動してきた4年間があったから、今回のソロがある。そのことを誰よりも感じているのは、他ならない芹澤自身なのだろう。
「22歳の誕生日ライブは今日しかありません。やりたいことをやりまくっていくので、みなさんついて来てくれますか!」と問いかけ、本日の衣装の話にシフトしていく。デザインはオサレカンパニーの茅野しのぶが手がけており、芹澤も「足首を出したらいいんじゃないですか?」など提案にも参加し、これまでi☆Risの衣装にはなかったピンヒールはこだわりが詰まっているとのこと。そんな芹澤いわく今回のライブは「私の夢空間」。
黒いワンピース風ドレスに衣装チェンジし、次に見せてくれた夢は『プリシラと魔法の本』より桃太郎の「金糸雀」と、『乖離性ミリオンアーサー』よりベイリンの「Out of Control」だ。「Out of Control」の曲途中に芹澤は一旦袖へはけ、気付けばステージにはピアノが設置されている。白いドレスにお色直しをした芹澤はまっすぐ一点だけを見つめ、座り、ピアノを弾き語り始める。曲は中島美嘉の「雪の華」。いつもの生気溌溂とした姿からは想像できないほど、しっとりと表現していく。歌い終えると、ピアノのミスに触れ「くやしー!」といつもの笑顔を見せてくれた。「ピアノは小学生のころにちょっと習っていたくらいなんですけど、一人じゃなきゃできないことをやってみたいなと練習していました。でも、ギターのほうがうまくできるかな」とはにかむ。ソロアーティスト・芹澤優として、初めてファンの前に顔を見せた今回のライブ、いつもとは違う方法で楽しませたいという向上心の塊のような彼女の一面を見ることが出来た一幕だった。
そして、「恋の歌のようだけど、みんなに向けた」と前置きして歌い始めたのは、芹澤優待望の新曲「Imaginary」。壮大なメロディと、表情で魅せるバラードで、表現力の高さをまざまざと思い知らされることになった。一点、「シャイニーング!」から始まる「outshine」で再びステージにマキシ様が降臨する。先ほどまでのバラードゾーンからは打って変わって力強く元気な歌声と、衣装であるスカートの一部を剥ぎ取るという激しいパフォーマンス。緩急のあるステージングを演出し、ファンを虜にしていく。