東京ミッドタウンで12月14日から16日まで開催された「2016 TRON Symposium」。最終日の16日に、「文化庁特別セッション『インバウンド 4000 万人に向けた文化情報発信のあり方』」が行われた。

2020年を契機とした文化芸術国実現のためのプラットフォーム構築

登壇したのは東京大学教授・トロンフォーラム会長の坂村健氏、東京大学名誉教授・前文化庁長官の青柳正規氏と文部科学省顧問の竹内佐和子氏。まず坂村氏がどうしてこのようなセッションが開かれたのかの概要を紹介した。

東京ミッドタウンで12月14日から16日まで開催された「2016 TRON Symposium」。最終日の16日に、「文化庁特別セッション『インバウンド 4000万人に向けた文化情報発信のあり方』」が行われた。

東京大学大学院情報学環教授、トロンフォーラム会長の坂村 健氏

現在、「文化庁プラットフォーム」というものが構築され始めており、これは2020年のオリンピック・パラリンピックを契機とした文化芸術国実現のための文化プログラムに関する情報発信のためのプラットフォームだそうだ。

五輪開催の2020年まで、日本という国の文化情報を発信する必要がある。その一方で、「20万の文化情報発信」をすべて文化庁が発信するのは費用的にも人員的にも無理であるため、共通した枠組みをつくって情報を持っている人に入力してもらい、かつ情報をオープンデータとして第三者が自由に利用してもらおうというものだ。

情報の出力は多言語で発信する必要があり機械翻訳が重要になってくるが、現在の機械翻訳はまだまだ不十分だと語る。進歩のためにはコーパス(言語データベース)が重要となる。翻訳だけでなく、マッシュアップでの活用を考えると、コンピューターが読める形でデータを蓄積する必要があるという。

文化情報の情報基盤を構築し、オープンデータとして国内外に発信するためのプラットフォームが完成間近だという

文化情報が一元的に管理しておらず、第三者が活用するのが難しいのでこれを何とかしなければならない

一方で情報収集と権限が重要となり、たとえば情報提供の協力者には編集権限を付与するが、情報発信を許可する権限を持った施設の職員が行うなど、多様な実態に合わせた権限設定が重要だという。

文化情報を共通に扱う仕組みによって第三者の活用を促進し、かつ機械翻訳精度向上のためのコーパスを集めるのが狙いだという

情報数の目標は「2020年までに20万件」。特定の組織が登録、管理するのはムリなので、枠組みだけ作り、あとはオープン化で皆に使ってもらおうという趣旨となっている

また、モチベーションを上げるためには情報登録へのインセンティブが必要であり、アメリカのXプライズのように賞金を付けて競争させる仕組みも考え得ると言う。このプラットフォームは文化庁の資料を見る限り、すでにスタートしているはずだが、坂村氏は「着々と作っていて、今『前夜祭』みたいなところにある」そうだ。

情報の編集・登録も権限を割り振ることで多くの人に関わってもらう。管理も分散化するのでこの辺りの権限設計も鍵になる

モチベーションを上げるためにはインセンティブが必要で、懸賞付きのコンテストもアリだという