VMwareは今年8月にマルチクラウド戦略「Cross-Cloud Architecture」を発表し、11月に国内での展開を宣言した。この新戦略の重要な要素となるのが、ストレージ仮想化ソフトウェアの「VMware Virtual SAN」だ。このたび、米国本社でストレージ・アベイラビリティ部門副社長 兼 ゼネラルマネージャを務めるヤンビン・リー氏にストレージ事業の最新動向について聞いた。

VMware ストレージ・アベイラビリティ部門副社長 兼 ゼネラルマネージャ ヤンビン・リー氏

リー氏の話を伝える前に、Cross-Cloud Architectureを整理しておこう。Cross-Cloud Architectureは戦略でもあり、アーキテクチャでもある。統合SDDC(Software-Defined Data Center)プラットフォームの「VMware Cloud Foundation」と、パブリッククラウドを含めアプリケーションを横断的に管理できる仕組み「VMware Cross-Cloud Services」で構成される。

VMware Cloud Foundationは、ハイパーコンバージド・ソフトウェア(VMware vSphereとVMware Virtual SAN)と、業界先進のネットワーク仮想化プラットフォーム(VMware NSX)、コアコンポーネントとなるVMware SDDC Managerによって構成されている。

リー氏は「HCI(Hyper-Converged Infrastructure)は最も成長している市場であり、2016年はHCI元年だと思っている。そして、Virtual SANはHCIのメインストリーム」と語った。その理由については、「まず、サーバとフラッシュストレージが進化し、最後の障害となっていたパフォーマンスの問題が解消された。また、遅延が少ないフラッシュの活用により、クリティカルなシステムをSDSで利用されるようになったことで、システムの効率化が図られ、TCOが削減した。TCOを50%削減した企業も出てきている。Virtual SANの導入にあたり、コストが大きなポイントとなっている」とした。

同社の顧客を対象に行った調査では、64%がクリティカルなビジネスアプリをSDS上で実行していると回答したほか、25%がTCO削減を目的としてVirtual SANを導入したと回答したという。

続けて、リー氏は最新版の「Virtual SAN 6.5」の紹介を行った。最新版では、iSCSIストレージとして利用できる機能、リモートオフィス/支社環境を対象とした2ノード構成への対応、コンテナへの対応、VMware Virtual SAN Standard Editionでのオールフラッシュ対応が新機能として追加された。

「Virtual SAN 6.5」の主な新機能

物理ワークロードや他のハイパーバイザーに対するiSCSIとしての接続性の提供は、顧客の要望を受けてのものだという。これにより、限られた台数の物理サーバ上で稼働するフェイルオーバークラスタリングを搭載したMicrosoft SQL Serverなど、クラスタ化されたアプリケーションなどでも利用が可能になった。

また、2つのノードを直接接続することが可能になったことで、これまで2ノードを接続するために必要だったルータやスイッチが不要になったため、1つのリモートオフィス/支社環境につき最大20%のコスト削減を見込めるという。さらに、リー氏は機器が減ることで、運用における複雑性も回避されると語った。

2ノードの直接接続によるメリット

リー氏は同社のコンテナへの取り組みとしては、「vSphere」「vSphere Integrated Containers」「Photon Platform」における取り組みを紹介した。Virtual SAN 6.5では、VMware vSphere Integrated Containersと併用することで、コンテナ化されたアプリケーション向けの永続的なデータレイヤを構成できるようになった。Photon Platformでは、Virtual SANで実証済みのストレージサービスを利用可能だ。

ヴイエムウェアのコンテナへの取り組み

Virtual SANの開発ロードマップについては、データの保護を強化するため、アナリティクスベースの機能による管理の自動化を促進するほか、ビッグデータ向けのアプリケーションへの対応として、異なるワークロードへの対応を進め、NFSのサポートも視野に入れているとした。

先日開催されたCEOのパット・ゲルシンガー氏と日本法人の代表取締役社長であるジョン・ロバートソン氏による事業戦略説明会でも、好調と紹介されたVirtual SAN。来年は、VMwareと AWSによるハイブリッドクラウド 「VMware Cloud on AWS」の提供が開始されることで、新たな局面を迎えることが予想され、今後の展開に期待したい。