英国のクイーン・マリー大学などからなる国際研究チームは8月25日(日本時間)、太陽系に最も近い恒星である「プロキシマ・ケンタウリ」に、生命が生存できる環境の可能性のある惑星「プロキシマb」を発見したと発表した。太陽系とプロキシマ・ケンタウリとの距離は4.37光年で、これほど近くの恒星に惑星が発見されたのは初めて。今後、より詳しい探査により、この惑星の環境などが明らかになることが期待されている。

プロキシマbの地表の想像図 (C) ESO/M. Kornmesser

プロキシマ・ケンタウリをまわるプロキシマbの想像図 (C) ESO/M. Kornmesser

研究チームは2016年の前半に、南米チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の望遠鏡を使い、プロキシマ・ケンタウリを集中的に観測し、この惑星を発見。さらにほかの複数の望遠鏡による観測も重ね、慎重に裏付けを取ったという。

プロキシマ・ケンタウリは、地球に最も近い恒星系であるケンタウルス座アルファ星のなかのひとつ。アルファ星は太陽ほどもある巨大なアルファ星A、アルファ星Bと、A、Bと比べるとやや小ぶりなアルファ星C、別名プロキシマ・ケンタウリからなる三重連星である。

今回発見されたプロキシマ・ケンタウリをまわる惑星「プロキシマb」は、観測によるとプロキシマ・ケンタウリから約700万km離れた軌道をまわっており、岩石を主体とし、質量は地球のおよそ1.3倍。そしてとくに重要視されているのは、この惑星がプロキシマ・ケンタウリの「ハビタブル・ゾーン」のなかにあることがわかった点である。

ハビタブル・ゾーンとは、恒星との距離、またその恒星が出すエネルギーなどから、生命が誕生するのに適した環境、とくに水が液体として存在できるほどよい温度になっていると考えられる領域のことである。たとえば太陽系であれば、地球がハビタブル・ゾーンに含まれている。これまでに、ハビタブル・ゾーンにある太陽系外惑星はいくつも見つかっているものの、プロキシマbはそのなかで最も太陽系に近い。

約700万kmというプロキシマ・ケンタウリとプロキシマbとの距離は、太陽と地球との距離の1/20ほどしかなく、さらには水星よりも近い。またプロキシマbの公転周期(プロキシマ・ケンタウリを1周する時間=1年)も、地球の11.2日ほどしかないため、地球に似た星とは到底思えないかもしれない。

しかし、プロキシマ・ケンタウリは赤色矮星と呼ばれる小さな恒星のひとつで、質量も半径も太陽の1/7ほどしかない。そのため放射しているエネルギーも小さく、太陽よりも近い領域がハビタブル・ゾーンになる。現時点で研究チームは、水の存在については確認できていないものの、「存在しないとは言い切れない」としている。

自転周期については、公転周期と同期、つまりある面のみを常に恒星へ向けているか、もしくは公転周期の2/3になっていることが考えられるとし、もし水があるとすれば、日当たりの良い地方のみにしか存在しないかもしれないのではとされる。また、プロキシマ・ケンタウリから受ける紫外線やX線などの放射線の強さも地球のおよそ60倍と強烈なもので、さらに季節も無い可能性が高く、地球とはまったく異なる気候をもっているのではと考えられている。

研究チームでは今後、ヨーロッパ南天天文台がチリに建設を予定している次世代の超大型望遠鏡「E-ETL」などを使い、より詳細な観測を行いたいとしている。

また同日、米国航空宇宙局(NASA)も声明を発表し、2018年に打ち上げを予定している「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」によって、プロキシマbの詳細な観測ができるだろうとし、また同じく2018年に打ち上げ予定の系外惑星探索衛星「TESS」によって、ほかの恒星でもさらに多くの惑星が発見できるだろうと期待を述べた。

太陽やプロキシマ・ケンタウリなど、主要な恒星の大きさを示した図。アルファ星AやBが太陽ほどある一方、プロキシマ・ケンタウリは木星ほどの大きさしかない (C) ESO

地球から見た太陽と、プロキシマbから見たプロキシマ・ケンタウリの、見え方の違いを表した図。プロキシマ・ケンタウリは太陽よりもはるかに小さいものの、プロキシマbとの距離が近いため、見かけの上では大きく見えることになる (C) ESO/G. Coleman

プロキシマbはもうひとつの地球と呼べるか?

プロキシマbはもうひとつの地球と呼べるかどうかについて、研究チームは以下のように語る。

「プロキシマbがもうひとつの地球か? という問いは、それが何を意味するかによって変わりますが、まず言えることは『NO』だということです。プロキシマbと地球とは、あまりに多くの点で異なっています。したがって、もしプロキシマbが生命の住める星だったとしても、それはもうひとつの地球とは呼べません」(研究チーム)

では、プロキシマbは生命が存在できる環境なのだろうか。研究チームは「まだ確かなことはわかっていない」としつつも、いくつかの仮説を立てている。

たとえばあるシナリオでは、可視光と赤外線によってプロキシマbが暖められ、さらに地球の60倍近い高エネルギーの放射線が降り注いでいることによって、水や大気が宇宙空間へ向けて逃げてしまった可能性があるという。この場合、プロキシマbが形成されてから1~2億年のあいだに海ひとつ分もの量の水が失われ、さらにその後大気がはぎ取られ、現在では太陽系の水星のような、空気も何もほとんど存在しない、乾いた世界になっていると予想される。

しかし研究チームは、今も大気を保ち、また惑星上に液体の水、つまり生命の誕生と生存にとって必要不可欠な要素のひとつが存在しないとは言い切れないとし、「現時点では、プロキシマbは生命の存在に適した惑星の候補であると考えられると結論付けることができます」と語る。また今後のより詳細な観測で、10年以内にその答えがわかるだろうとも付け加えている。

プロキシマbの地表の想像図。空には大きくプロキシマ・ケンタウリが、さらにその隣に小さくアルファ星A、Bが見える (C) ESO/M. Kornmesser

プロキシマbへの訪問は可能か?

プロキシマbが、水や大気の有無も含めてどのような星であるかは、まだ謎に包まれている。将来、E-ETLやジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などを使った観測で、さらに詳しいことがわかると期待されているが、最終的には探査機や有人宇宙船が訪れ、直接探査を行うことになるだろう。

しかし、いくらプロキシマbが太陽系に最も近い系外惑星だとしても、4.37光年(約40兆km)も離れた場所に行くのは簡単ではない。

これまで人類が打ち上げた探査機のなかで最も速いスピードで飛んでいるのは、1977年に打ち上げられた「ヴォイジャー1」で、秒速約17kmという途方もないスピードを出している。しかし、仮にヴォイジャー1をプロキシマbへ向けて打ち上げたとしても、到着までには約7万年もかかる。

現在検討されているなかで、最も現実なものは、「ブレイクスルー・イニシアティヴズ」という団体が研究している「ブレイクスルー・スターショット」という計画である。ブレイクスルー・イニシアティヴズは、ロシアの起業家ユーリィ・ミリネル氏や、世界的な物理学者のスティーヴン・ホーキング氏らによって設立された団体で、地球外知的生命体の探査を目指している。

同団体が研究中のブレイクスルー・スターショットは、カメラなどを積んだ質量数gほどの小さなチップ状の本体と、セイル(帆)からなる探査機「スターチップ」を打ち上げ、その帆に地球から強力なレーザーを当て、その光の圧力で光速の15%から20%まで加速させ、ケンタウルス座アルファ星を目指すというもので、実現すればわずか20年ほどで到着することができる。今回の発表を受け、同団体も「今回の発見は、この宇宙と私たちのいる場所を深く理解するための人類の冒険である天文学という分野にとって、偉大な出来事となりました。そして私たちのブレイクスルー・スターショット計画にとっても、たいへん大きな出来事です。この星こそ、私たちが目指すターゲットです」との声明を発表している。

ただ、スターチップのような小型の探査機の開発には、材料や電子機器など、技術のさらなる進歩を待つ必要があり、また莫大な予算もかかるため、ブレイクスルー・スターショットの実現は当分先のことになるといわれている。

また、かつて1970年代には、英国惑星間協会がへびつかい座のバーナード星へ向けて飛行する探査機「ディダラス」計画を研究していた。核融合のエネルギーによって飛行し、最終的に光速の12%まで加速し、太陽系から5.9光年先のバーナード星まで50年で到着できるとされた。ディダラス計画は検討のみで終わったが、近い将来、恒星間飛行を行う際、核融合ロケットは有力な選択肢として考えられている。

ブレイクスルー・イニシアティヴズが研究しているブレイクスルー・スターショットの想像図 (C) Breakthrough Initiatives

ディダラス計画の想像図 (C) BIS

【参考】

・Planet Found in Habitable Zone Around Nearest Star | ESO
 https://www.eso.org/public/news/eso1629/
・The habitability of Proxima Centauri b
 http://www.proximacentauri.info/
・The habitability of Proxima Centauri b
 http://www.ice.cat/personal/iribas/Proxima_b/faq.html
・AskScience AMA Series: We have discovered an Earth-mass exoplanet around the nearest star to our Solar System. AMA! : askscience
 https://www.reddit.com/r/askscience/comments/4zdkra/
askscience_ama_series_we_have_discovered_an/?ref_source=embed&ref=share
・Breakthrough Initiatives
 http://breakthroughinitiatives.org/Initiative/3