鍼灸師・若林理砂さんが、あなたの近くにいそうなキャラたちの健康相談に答えるこの連載。第6回は、夏でもからだの冷えが気になるグラフィックデザイナーさんです。
女性、40代、グラフィックデザイナー
健康には気を遣っていて、ランチはカフェでサラダセットをよく食べる。極度の冷え性で、靴下の重ね履き健康法が最近気になっている。
本日の患者さんの悩み「冷え性で、夏でも手足が冷たい」
第7回の患者さんは、私と同世代のグラフィックデザイナーさんですね。どうされました?
「先生、冷え性って東洋医学で治せます?わたし、夏でも冬でも手足が冷えるんですよ」
おやおや、冷え性ですか。うーん、冷え性の方にはとりあえず聞いてるんですが、BMIと体脂肪率、教えてもらってもいいですか?
「BMIは20、なんですけど……実は体脂肪率が30%近くあるんです。でもこれって、冷え性に何か関係があるんですか?」
なるほど。体格自体は足りていますけど、この数値だと体温を作るおおもとである筋肉が足りませんね。
熱は筋肉が生み出すもの
生き物の体温って、筋肉が作ってるんですよ。だから、筋肉量が足りないとなると体温が作れなくて、結果的に冷えやすくなるんです。ところで、運動ってなさってます?
「生まれてこのかた、まったくやったことないです!体育の授業とか大嫌いでした」
そ、そうですか…。会社の行き帰りの移動は?……電車とバス、急ぐときはタクシー、ですか……。だけど、冷え性を直すとなると、筋肉量を増やすのは必須項目なんですよ。
グラフィックデザインのお仕事だと、日中座りっぱなしであんまり動かないですよね。急にスポーツを始めたりしなくても結構ですから、通勤など、日常のルーチンの中である程度ウォーキングできるように工夫してみてください。
健康=サラダは早合点
あ、そうだ。今日のお昼はなにを召し上がったんですか?
「オフィスの近くにカフェがあって、美味しいサラダランチを出してるんです。よく食べるんですけど、今日もそれでした」
なるほど。そのサラダ、たんぱく質は何か入っていましたか?……ツナが少しだけでしたか。摂取しているタンパク質の量が足りない可能性もありますね。タンパク質は筋肉を作るもとになるだけじゃなく、特異動的作用と言って、食後にすぐに体温が上がる性質があるんです。
「先生、鍼灸師なのに栄養とか運動の話ばっかり~」
まあ、こういうお話をした上で、東洋医学的な手当ってのは効いてくるんですよ。だいたい、不養生なままでは、鍼もお灸も漢方も効かないです。生活習慣をなおす養生が第一、鍼灸や漢方は二の次なんです。
「そうなんだ。靴下重ねばきして、とか言われるかと思ったのに」
ああ、アレですか?ヤダだなあ、アレはそもそも東洋医学ではないし、お勧めしてませんよ。特に、足裏から毒素とか出ませんから。
そうそう、重ね着するんだったら体幹部にしてくださいね。ちゃんとデータがあって、体幹部を保温したほうが、末梢だけ保温した時よりも手先足先の体温が下がらないんですよ。
体を冷やすのは「冷たいモノ」だけじゃない
冷え性は、冷たいものや甘いもの、生野菜や生の果物など、物理的に体が冷えるものの摂取量を減らすことが必要です。
冷え性でない方は、夏場は冷たいものや果物も少しなら食べてOKなのですけど、あなたのような状態だったら、生ビールのように極端に冷たいものはもちろん、甘いものや南国の果物など、体を冷やす性質のあるものも避けてくださいね。アイスクリームなんてもってのほかですよ。
ですが、そうした食養生だけだとあまり温まってこないんです。こういう時にペットボトル温灸を使います。
毎晩一回、湧泉→三陰交→関元→肩井の順にペットボトル温灸を行ってください。これは暑い夏でも寒い冬でも同じようにやってくださいね。暑い時は面倒がってやらない方が多いのですが、夏だって冷えるなら同じことなのでね。基本的なやり方はこちらを参考にしてみてください。
じゃ、養生してくださいね、お大事に!