Amazonプライム・ビデオにて全13話が好評配信中の特撮ドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』が、7月からTOKYO MXおよびBS朝日にて放送されている。人間を食らう危険な実験生物「アマゾン」が潜伏している社会で、自らもアマゾンでありながらアマゾンを"狩る"宿命を持つ鷹山仁/仮面ライダーアマゾンアルファと、人間とアマゾンとの間に立って苦悩し、"守る"ために戦う水澤悠/仮面ライダーアマゾンオメガという、2人の仮面ライダーが登場。従来の変身ヒーローのパターンを大幅に壊し、先の読めないスリリングな展開が話題を呼んでいる。

ここでは本作のプロデューサー・白倉伸一郎氏と、全13話のシナリオを手がけた小林靖子氏の両名に、『アマゾンズ』企画の経緯や、キャラクター造形、そして挑戦的なストーリー作りの秘密などをざっくばらんにうかがった。後編では、『アマゾンズ』が切り拓いたWEB配信版の特撮作品の可能性、そして新たに発表された最新ライダー『仮面ライダーエグゼイド』について訊いた。※一部ネタバレを含むため、未視聴の方はご注意ください。

前編はこちら

白倉伸一郎氏(左)、小林靖子氏

――石田監督に続き、田﨑竜太監督、金田治監督と「平成ライダー」で活躍する実力派監督が次々参加されましたね。

白倉:田﨑監督がすごいのは、撮影所にみんなが集まるとホワイトボードがあり、「第3話のテーマは『ミッション』。第4話のテーマは『脱出』。ここではこういう移動をします。この部屋から脱出します。ここの動きはムダになりますから、ホン(脚本)をこう直しましょう」とか、レクチャーが入ることです。

小林:その直しが、本当に大変だったんですよ(笑)。でも田﨑監督の合理的な説明があってこそ、長い部分を詰めることができました。

白倉:このように言うと、田﨑監督は理屈っぽいみたいに思われるかもしれませんが、すべてはドラマにおいて、駆除班それぞれの見せ場を作り、最後に残った3人がラスボスと対峙するみたいな、映画的なノリ、勢いを具現化するために理屈をこねるんです。「とにかくノリなんだよ!」って押し切るのではなく、ノリを理屈によって説明することができるのが、彼のすごいところなんです。

――金田監督の印象はいかがですか。金田監督はJAEの代表でもありますが、本作のアクション全般を請け負うGocooさんと組まれるのは、もしかして初めてではないですか。

白倉:そうです。会うのも初めて、仕事も初めてです。Gocooのアクション監督・田渕(景也)さんは戦々恐々としていたんですよ。そこにあえて金田監督を投入したらどうなるんだろうと興味を持ちまして(笑)。そうしたら、たちまち意気投合されてね。金田監督は田渕さんを立てつつ、互いにアイデアを出し合ってやられていました。建設的なのはいいんだけど、凝りすぎちゃって(笑)。トンネル、バス、カーチェイスがあって、盛りだくさんになってしまった。

小林:金田組のアクションシーンは、ホン(脚本)から一番膨らんだんじゃないですかね。

――放送時間が決まっているテレビシリーズと違い、一本一本の長さが違う『アマゾンズ』ですが、時間の制約のなさについては当初どのように考えていたのでしょうか。

小林:実は、ホンの長さは毎回ほぼ同じなんですよ。『龍騎』のころの分量とそんなに変わりません。

白倉:どうも石田監督、撮ってるなあ~って思ってたら、第1話は46分になりましたって聞いて驚いた(笑)。まず真っ先に考えたことは、これって2話に割れないかなって。

小林:でもそうしたら、前編にはライダーが一人も出てこないんですよね……。

白倉:10分くらい考えたんですよ。悠が水槽を見つめているところで切るかなって(笑)。

小林:次回の引きも何にもないところでは切れないですよね。

白倉:今回の『アマゾンズ』はたまたまテレビ番組的フォーマットで作ってはいますが、今後やるのならもっと配信に適した作り方が出てくるかもしれないですね。でも『アマゾンズ』に関してはテレビ的に作ったおかげで、他のライダーシリーズとの親和性が生まれたり、今回のように地上波放送できたりしたわけですから、この方向性も大切にしたいです。

――WEB配信とテレビ放送では、どんな違いがあるとお考えですか。

白倉:配信ドラマとして『アマゾンズ』を始めるにあたり、配信はテレビとは違うんだ!って力説したんです。テレビなら途中のエピソードから観る場合があるけれど、配信の場合はみんな必ず第1話から観るんだと。途中参入はありえない。第1話で観るのをやめると、第3話とか第7話を観てもらえないかもしれない。だから、いかにして視聴者を減らさないようにするか、という部分には注意を払いました。連続ドラマとしての「引き」の部分ですね。制約のあるなしではなく、第1話で満足できる完成度のものを作っておかないと、次に続かないという気持ちがありました。

小林:テレビドラマと同じものだと思っているから、書き方も同じです。ただ白倉さんが言われたように、第1話で観るのをやめる人もいれば、2・3話と続けて観てくださる方もいて、7・8話とかではもう好きな人しか観ていないと(笑)。"みんなに"好かれる話にしようという考え方ではなかったですね。

白倉:「だんだん濃くなっていい」って話をしました。前半5話くらいまでは「人食いレストラン」の話はできないかなって(笑)。でも、ここまで観てくださった方には、こういうレベルの話でも楽しんでもらえるだろうと計算して、ストーリーの配分を決めています。

――第9話に出てくる「カニアマゾン」というのは、やはりカニバリズムから発想されたのですか。

小林:CANNIBALってタイトルが先にあって、カニアマゾンと決めました。

白倉:よくわかりましたね(笑)。ほとんどの人にわかってもらえなかったんです。

――人食いレストランのように、地上波では少々放送がはばかられるような題材でも、WEB配信なら可能という部分があったのでしょうか。

小林:それはあまり意識していません。最初から、地上波でもできるレベルでって言われていましたから、具体的な描写は抑えているんですよ。

白倉:スタッフもみな良識がありますから、「やらかしてしまえ」って考えはなかったですね。基本的にエロ・グロ・ナンセンスの類には逸脱していません。仮面ライダーですから、これが正統だと思って作っています。