米Hewlett Packard Enterpriseは6月7日から3日間、年次イベント「HPE Discover」を米ラスベガスで開催している。2015年秋にPC事業との分社化が完了、HPEとして初の米国でのDiscover開催となった。初日の7日、会場に集まった1万1000人の顧客とパートナーを前に、CEOのMeg Whitman氏は「デジタルトランスフォーメーション」を呼びかけ、クラウド、ストレージ、管理などで新製品を発表した。

米Hewlett Packard Enterprise CEO Meg Whitman氏

デジタルトランスフォーメーションとはデジタルを利用してITとオペレーション、ビジネスモデルを変革することだ。デジタル化はいま始まったことではなく、Whitman氏は1951年にメインフレームを導入した米国勢調査局を初期の例に挙げた。当時との違いはスピードだ。緩やかに進行してきたデジタルへの移行は、スマートフォンなどモバイルのトレンドを受けてここ5年で一気に加速している。

デジタルが起こす革命が「新しい転換点を迎えつつある」とWhitman氏、アプリケーションの変更、データ分析などこれまでとは異なるレベルの柔軟性とアジャイルさが要求されており、これに対するHPEの回答が2015年末に開催された「HPE Discover London」で発表したコンポーザブル「HPE Synergy」だ。「デジタル時代、インフラの重要性がさらに高まっている。現在多くを占める伝統的なITから、個々の企業のニーズにあわせてマルチクラウド環境への移行を支援する」とWhitman氏はコンポーザブルインフラのメリットを説いた。

搭乗券がモバイルになり、スマートフォンで送金が可能となり・・・、デジタルは日常のさまざまなものを変革している。米国では秋の大統領選に向けて選挙運動が盛んだが、選挙も変わりつつある。現職のオバマ大統領は2008年の大統領選で高度な技術を使って投票者を分析し、ある程度パーソナライズされた方法で支持者とエンゲージした、とWhitman氏。2012年の再選時にはTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを経由して直接有権者とつながった。

「デジタル技術によりビジネス、政治とさまざまな世界で市民や顧客の体験が変わる」(Whitman氏)

小さなメリットや変化だけではない。Whitman氏は医療分野を挙げ、「医師が遺伝情報にアクセスすることで、その人にあった医療サービスを提供したり、医学的決定ができる。これは実に大きな変化になる」と述べた。

たとえば、ニューヨークにあるNew York Genome Centerは、毎日12テラバイト級のデータを生成しているが、HPEの分析技術「HPE Vertica」を利用してユーザーである医師のニーズに合わせて解析しているという。

HPEは、1)ハイブリッドインフラへ向けた変革、2)デジタルエンタープライズの保護、3)職場の生産性向上、4)データ志向経営の組織、と4つの技術分野でデジタルへの変革を推進している。PC・プリンタ事業と別れた後、エンタープライズ事業のミッションは「この4つを顧客に提供し、顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援すること」とWhitman氏、「IT体験を変革し、ビジネスと開発者のイノベーションを加速し、さらに組織をスマートにする。それだけでなく、まったく新しい体験の構築も支援する」と続けた。

HPEは1)変革、2)保護、3)生産性向上、4)データ志向、と4つの分野でデジタルへのトランスフォーメーションを支援する