「まるきどすえわら」を知っているだろうか。丸山有香(まるやまゆか)、古城門志帆(こきどしほ)、末柄里恵(すえがらりえ)、小笠原早紀(おがさわらさき)の新人声優4名からなるユニットで、ユニット名はそれぞれの名前から二文字ずつ取っている。声優事務所・賢プロダクションの同期4人で結成された自主制作ユニットだ。

「まるきどすえわら」の4人。左から丸山有香、古城門志帆、末柄里恵、小笠原早紀 撮影:西田航

「まるきどすえわら」は、2014年9月の結成以来、Webラジオ、ラジオ公開録音、朗読劇など様々なイベントを開催しており、2016年5月28・29日には東京・ザムザ阿佐ヶ谷にて、朗読劇vol.3「なんと!ここで!まさかの!?まさかのファンタジー!!」の公演も決定している。現在、知る人ぞ知る、だが知ってしまえばやみつきになってしまうような彼女たちに、「まるきどすえわら」結成秘話から、いままでのイベントの振り返り、そして気になる5月28日・29日の朗読劇について訊いた。

新人だからこそできること

丸山有香(まるやまゆか)。10月3日生。『ハイスクール・フリート』松永理都子役、『ベイブレードバースト』佐々木マコト役、『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』女将役など

――まず、どういうきっかけで「まるきどすえわら」が結成されたのでしょう。初めから自主制作としてなにかやるぞ! という目的があったんですか?

丸山 それが違うんですよ。2014年のある日、古城門と末柄と私の3人で遊んでいるときに、プリクラを撮ったんですね。そのプリクラが、自分たちの名前を入力すると全員分の名前を入れたスタンプを作ってくれて、そのスタンプが「まるきどすえがら」になっていて、みんなこの語感が気に入ってしまって、この名前でなにかやりたいねって話になりました。ちょうど3人の共通点は事務所の同期ということだったので、それなら同じ同期の小笠原も入れたいと思って……。

小笠原 ナンパされました!(笑)。そっかー、名前が先行してたんだね。そこから「CD出したいねー」みたいな話をよくしたよね。

末柄 うん。いま、声優はイベントだったり、ラジオだったりと演技以外にも求められていることが多いんです。その中で、自分たちでも経験が積みたい、そしてその経験を仕事に生かしていきたいという思いがありました。

――最初の活動は、2014年9月13日から始まったwebラジオの「まるきどすえわらじお」ですか?

丸山 はい! まず「ラジオやりたいねー、コーナーはどうしよっか」みたいに企画を考えていました。ラジオ配信は手探りでしたね。その後、思い切って「公開録音をやってみよう!」って話になって、初めてのイベントを開催させていただいて。

古城門志帆(こきどしほ)。12月20日生。『ブレイブビーツ』天宮琴音役、『Go!プリンセスプリキュア』アロマ役、『ドリフターズ』オルミーヌ役、『石膏ボーイズ』石本美希役など

――2014年12月5日に行われた「まるきどすえわらじお 公開録音~まきすわーるどにようこそ!」ですね。はじめて自分たちだけでイベントを開催するのは、かなり大変だったのではないかと。

丸山 本当に大変でした。でも、やっぱり新人のうちって経験できることも限られているじゃないですか。だからこそ、自分たちで一から考え、作っていく上で得られる安心感や冒険感がありましたね。衣装や、当日のコラボドリンクのレシピも自分たちで考えたんですけど、当日はお客さんがみんなコラボドリンクを飲んでくれていて……。

末柄 あれはうれしかった~! 制作サイドの苦労も知ることができて、本当にイベントの勉強になりました。あと、会場はライブハウスで、楽屋からステージに行くまでにお客さんの横を通っていかないといけなかったんですよ。一応、壁側に黒幕がかけてあって、客席からは見えないようになっていたんですけど、こっきー(古城門)がね(笑)。

古城門 そうそう。普通にお客さんの真横を通っちゃって。でもお客さんも温かくてねー。客席が狭くて長時間拘束してしまって申し訳ないなと思っていたんですけど、「楽しかったよ」って感想をもらったときは、またやりたいなって気持ちになりました。

小笠原 うん、ファンミーティングみたいな感じで本当に楽しかった!

役者としても勉強になる朗読劇

末柄里恵(すえがらりえ)。1月8日生。『アイドルマスター ミリオンライブ!』豊川風花役、『Tokyo 7th シスターズ』川澄シサラ役、『DIABOLIK LOVERS』小森ユイ役、『ディバインゲート』モルドレッド役など

――公開録音ではラジオのテーマソング「Make it through world!」も披露して。

古城門 そうなんですよ、歌わせていただいて。お客さんもみんなサイリウムを振ってくださって……、私はサイリウムを振ってもらうような現場は初めてだったので、感動して涙が出そうになって……。

丸山 私は泣いてたよー。私もサイリウムを振られる仕事とは無縁だったので、こんな状況に自分が立ち会えるなんて……! と思いました。お客さんも「楽しかった」と言ってくださって、生きてて良かったなあって。

――二回目のイベントは、公開録音+朗読劇vol.1「桜笑む頃、キセキ咲く」。こちらは2015年4月25日に開催と、公開録音から約4カ月しか経ってないんですよね。一回目の公開録音が終わってから、すぐ企画を考えだしたんですか?

丸山 当日の打ち上げの時に決めましたね。次はどんなことをしたらワクワクしてもらえるんだろうって。

――「桜笑む頃、キセキ咲く」は、女子高生4人の友情のお話ですが、主演の古城門さん以外は、昼の部と夜の部で演じている役をチェンジされていましたね。

小笠原早紀(おがさわらさき)。3月29日生。『アイドルマスター ミリオンライブ!』野々原茜役、『リルリルフェアリル』きらら役ほか、『ガールズ&パンツァー劇場版』ニーナ役など

小笠原 昼の部、夜の部両方とも来てくれるお客さんが結構いたんですよ。でも、脚本は一緒なので、どうしたら楽しんでもらえるかを考えた時に、「あ、キャストシャッフルだ!」って。

末柄 あれは、どう演じ方を切り替えるかってことを考えさせられて、役者として勉強になったね~。

丸山 そうそう。それぞれ声のイメージがあるから、お仕事でいただくキャラクターは割と似てきちゃうんです。なので、自分の声のイメージとは違った役をやってみようって。これは自主制作ならではの強みですよね。

――イメージと違うキャラクターということだと、2015年9月開催の朗読劇vol.2「乾杯しましょ! ――OL達のアイドル活動」での末柄さんには特に思いました。

丸山 ですよね! 末柄のドSな台詞!

末柄 「この豚野郎!」だ(笑)。

丸山 「末柄の『この豚野郎』が聴けるのはまるきどすえわらだけ」ってツイートしたらすごいRTされたからね。

小笠原 懐かしいな―。朗読劇vol.1のときに、最前列でビールを飲んでいたお客さんがいて、「いいだろー」と自慢されて、くやしー! って(笑)。だから朗読劇vol.2は、ほんとに乾杯しちゃおうって、最前列の人とは本当に乾杯しましたね。

――そして、2016年5月28・29日に開催される4回めのイベント、朗読劇vol.3「なんと!ここで!まさかの!?まさかのファンタジー!!」では、ライブ会場を飛び出して劇場進出ですね。

小笠原 はい、これまでイベントを開催していてわかったことが、ライブハウスだと置ける椅子の数に限りがある、ということなんです。どうしても後ろのお客さんは立ち見になってしまうんですね。ずっと立って見てるのは辛いし、ゆっくり楽しんで見ていただきたいので、今回は座席数が多い会場を探していきました。探していくうちに、「あれ、そろそろ劇場に行けるんじゃない?」って。

丸山 劇場は私たちにとってちょっと背伸びでした。でも、達成できなくても、そこに向かって頑張ることで次のステップアップにつながるから、やってみようと思いました。きっと皆さん来てくださると信じながら……そうしたら、開催日数も、公演回数も、キャパも増えちゃって、どうなることやら(笑)。でも、お客さんとの物理的な距離を心の距離にはしたくないと思っています。

末柄 うん、いままでのどのイベントよりも大きい会場だから、お客さんからもステージがよく見えるんですよ。なので、私もどこを見られてもいいように……。

丸山 どこを見せるつもりだ!(笑)。