ソフトバンクは4月28日、3月にスタートした消費者参加型プラットフォーム「+Styleプラススタイル」でIoT系の新製品2機種を追加した。同時に、福岡県福岡市にオープンした新たな「TECH SPOT(テックスポット)」での展示も開始した。

プラススタイルは、IoTに関連した新製品開発を支援するプラットフォームで、製品の企画段階(プランニング)から出資(クラウドファンディング)、販売(ショッピング)までをカバーする。

一方のテックスポットは、TECH CAFEやTECH LABなどの名称で展開するソフトバンクのIoT製品体験スペースで、福岡市東区のイオンモール香椎浜にオープンした「ワイモバイルイオンモール香椎浜」に併設されたテックスポットは5軒目となる。

ワイモバイルイオンモール香椎浜

オープンにあたっては、プラススタイルを取り仕切るソフトバンク サービスプラットフォーム戦略・開発本部 担当部長の近藤 正充氏と、テックスポットを取り仕切る同 プロダクト企画本部 商品企画統括部 スマートデバイス企画部 部長の石川 俊司氏の両名が現地に足を運んでいた。

ソフトバンク サービスプラットフォーム戦略・開発本部 担当部長 近藤 正充氏

同 プロダクト企画本部 商品企画統括部 スマートデバイス企画部 部長の石川 俊司氏

B2B2CでIoT製品のすそ野の広がりを

両名へのインタビューについては過去の記事(12)を参照してもらいたい。

その中で両名とも、IoTを体感してもらうことの重要性、ハードウェアとソフトウェアの双方をミックスさせることの重要性について指摘している。いずれも、遠い未来にIoTというキーワードが実現する世界の前段の話のように思えるが、今回オープンしたTECH SPOTでは「携帯電話のスペースと携帯電話以外のスペースが半分半分になっていることを感じてもらいたい」と近藤氏が話すように、ソフトバンクとしては「IoT時代」が遠い未来の話ではないという認識で動いているようだ。

ブースが半分半分となっているIoT製品を取り扱うTECH SPOT

「この製品の設置スペースからわかるように、携帯と携帯以外も楽しんでもらって、(地方都市でも早々にIoT製品体験スペースを用意したことからも)色々な地域の人に体感してもらうことが大事だと思っています。私たちの取り組みが先に進んでいると思いますし、これからの携帯ショップは、確実に携帯と携帯以外が半分半分のブースになっていくと思います」(近藤氏)

TECH SPOTで新たに展示された製品はLEDライト型スマートプロジェクター「Beam」とソファー式ストレス度測定器「エアリトモ ソファータイプ」。Beamはオランダ製のライト型プロジェクターで、小さい筐体の中にCPUなどを搭載しAndroid端末として動作する。単なるプロジェクターではなく、ブラウジングやスマートフォンのミラーリングも可能となる。一方のストレス度測定器となるソファーは、座るだけでストレス測定が行える。

LEDライト型スマートプロジェクター「Beam」。通常のライトとしても使えるプロジェクターで、Android OSを搭載する

ソファー式ストレス度測定器「エアリトモ ソファータイプ」

ソフトバンクでは、こうした海外製品の取り扱いもプラススタイルで行い、単なるものづくり支援だけでなく、幅広いラインナップをプラットフォームに取り揃えることで、ショッピングの場として楽しめるようにする。一方のテックスポットとしても、実際に体験できる場作りが最重要点でもあるため、普段何気なく利用している生活雑貨がスマート家電へと進化することで「こんな便利で楽しい物があるなら買ってみよう、というキッカケになれば」(近藤氏)と、気付きの場として最大限に活かしていきたい考えだ。

IoT製品は、すでにさまざまなタイプのものが出回っているが、一般消費者に根付いているとは言いがたい。いずれの製品においても、これまであった価値とは別の価値を付随して提供しているものの、「家電量販店では、同種類の製品の1つとして展示されるため『なんか別の機能も付いている、ほかの物よりちょっと高い製品』という認識でしかなくなっている」と近藤氏は指摘する。つまり、新たな価値とその対価が"必然性"の前に劣ってしまっている状況にあるのだ。

「もちろん、量販店の方も試行錯誤されていると思います。一方で、ここで明確な差別化を打ち出して、都心のITリテラシーが高い層に『IoT家電といえば蔦屋家電』でしょ、と先行されている例もある。私たちは、それを全国で、先進的なソフトバンクのショップで体験できる、というイメージを持ってもらいたいんです」(近藤氏)

近藤氏によると、プラススタイルの取り組みはB2Bだけでなく、B2B2Cの領域でも広げていきたいという。そもそも、プラススタイルの目指す目標の一つに「ものづくり支援プラットフォーム」がある。

ものづくりサポーターズと呼ばれる30社の企業が、IoT製品を開発する事業者をプロトタイプ開発、チップセット購買ルートの確保、マーケティングといったさまざまな形で支援する。これらのサポートが、そもそも「B2B2C」の「B2B」の役割を果たしており、プラススタイルのプラットフォームとしても法人への話をつなげるケースなども検討しているという。

「すでにプラススタイルで販売されているソニーの多機能シーリングライト『Multifunctional Light』などであれば、ホーム製品として家電量販店などよりも、住宅設備業界につなげた方がより幅広い導入が期待できます。また、ほかにも法人展開を念頭に置いた製品もあり、コンシューマ向け、法人向けを問わず、IoT製品を届けたいと考えています」(近藤氏)

ソニーの多機能シーリングライト『Multifunctional Light』はテックスポットにも展示してある。さまざまなセンサーがこのライト内に備わっており、天井に設置するだけで、電気、エアコン、テレビなどの操作がスマホ1つで可能になる

ある部署の錠前にスマートキーを設置し、多くの部員がハードキーを持たずに電子解錠したり、Webカメラを活用し、部外者の顔を検知してアラームを鳴らすといった簡易的なIoTプロダクトの活用例が徐々に出てきている時代だが、こうした"ちょっとした使い勝手"を職場で体験させ、消費者体験として根付かせることもまた、IoTが浸透する道の一つかもしれない。