ビットコインの普及によって注目を集めるようになったブロックチェーン。昨年あたりから、日本でも各社でブロックチェーンの実証実験が行われ始め、その具体的な活用方法について模索されている。

とは言え、まだまだ謎に包まれた技術となっており、「一体何ができるのか?」「ブロックチェーンの課題は?」といった疑問が持たれている。今回は、NTTデータで行われた、ブロックチェーンに関するセミナーで説明された内容をもとに、ブロックチェーンの現状について簡単に紹介したい。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーン技術の登場は「革命である」とも言われている。ウェブブラウザ「NCSA Mosaic」や「Netscape Navigator」を開発したMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、「1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネット、そして2014年のビットコイン」と、ブロックチェーンがインターネットに次ぐ革命であると述べている。しかし、この「革命」によって一体どうなるのかは、まだ明白になっていない。「PCやインターネット、LINUXの歴史のように、技術が登場してから社会インフラになるまでには時間がかかる」と、NTTデータは見解を示している。

あらゆる技術が、成熟してIT社会のインフラとなるまでに、さまざまな研究期間や資本の流入を経ている

ブロックチェーンの歴史を見ると、「ナカモト・サトシ」によって書かれた論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」の公開により、2008年に誕生したと言われている。2009年には、ビットコインのソフトウェアがネット上に発表され、ビットコインの運用が開始となった。

このビットコインで使われている技術が、ブロックチェーンとなるわけだが、その仕組みはまさしく「ブロックチェーン」という名前が表している。取引情報の集合体となるものが「ブロック」である。同社の説明によると、この「ブロック」の中には、前のブロックの取引情報を要約した「ハッシュ」と、ハッシュ計算で求められるパラメータである「Nonce」が含まれているという。取引が発生するとブロックが生成され、それぞれのブロックには前のブロックのハッシュ値が保有される。こうしてブロックがチェーン状に連なっていくことから、「ブロックチェーン」と名付けられている。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンは、記録の維持を特定の管理主体が行うのではなく、ネットワーク上で対等な関係にある端末間を相互に直接接続し、データを送受信するP2P方式によって、複数のノードに同一の記録を同期させる仕組みとなっている。これにより、分散型で信頼できる状態を創る(維持する)ことを可能としている。

ブロックチェーンには、分散ネットワーク上の複数のノードが単一の結果について合意を形成するにあたって生じるという"問題"を解決するアルゴリズムが存在することから、仮にどこかのブロックを改ざん・複製しようとしても、矛盾が発生してしまいうまくいかない構造となっている。過去に遡ってハッシュ値を書き替えるには、膨大なコンピューターリソースが必要となる上に、時々刻々と生成されるブロックも含めると、改ざんは事実上不可能となっている。

このように、ブロックチェーンの特長としては、「データの高い透明性・トレーサビリティ」「仲介者を介さない直接的なやり取り」「高改ざん耐性」「高可用性」などが挙げられる。しかし一方で、ブロックチェーンの課題もある。「ブロックチェーンは、何にでも使える技術というわけではない」と同社は指摘する。

ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンの課題について、同社は以下の3点を挙げた。

  • データのファイナライズ(最終決定)が不確定
  • 各ノードへ反映されるのに時間がかかる
  • 高可用性だけが重視されていて、データの一貫性や分断耐性が不十分

同社では、分散型アプリケーションやスマートコントラクト(契約の自動化)を構築するためのプラットフォーム「Ethereum(イーサリアム)」上で、分散証券取引の検証を実施している。実際、同社のデモ環境で見ても、情報伝達のスピードはかなり不安定な状態であった。同社は「ユースケース別にコンセンサスアルゴリズムなどの見直しが必要」と考察しており、「ブロックチェーン技術は万能ではないため、特性を理解し、適用領域を考えていく必要がある」と述べている。

NTTデータのブロックチェーン伝播可視化ツールの画面。テキストが赤くなっているものは、ブロック数が最大と異なるもの。つまり、各ノードで不整合が生じている状態となっている

現状だと、厳格なファイナリティ(決済完了性)を求められない領域や、リアルタイム性を求められない領域、安定した運用主体や参加者管理が求められない領域が相性のよい領域として提示された。

また、ブロックチェーンは、すべてのインフラを置き換えるものになるのではなく、これまで費用対効果が見込めなかったシステムを安価に構築することができるようになるといった可能性を秘めている。金融以外の分野でもブロックチェーンに関する注目度は高くなっており、もはや「FinTech」という範疇に限定された技術ではないだろう。

メインフレームが必要な領域も残り続けているように、ブロックチェーンがすべてに取って替わる存在とはならないと予測されている

同社が言うように、ブロックチェーンを活用した実用的なサービスやシステムができあがるまでにはまだ時間がかかるだろう。しかし、昨今ものすごいスピードで進化しているIT技術を考えると、そう遠くない未来に、ブロックチェーンがインフラとなる世の中が実現しているかもしれない。