4月に入り、企業にはエンジニアを目指している新入社員が大勢入社したことだろう。進化が著しいIT業界において、エンジニアはどのような技術を求められているのだろうか?

今回、ネットワーク関連の事業を主軸としているネットワンシステムズに新人エンジニアの教育カリキュラムについて話を聞く機会を得たので、それをもとに、新人ネットワークエンジニアがどのような技術を求められているかを探ってみたい。

イマドキの新入社員の特徴は?

同社の新人研修の話に入る前に、最近の新入社員の特徴について聞いてみた。今回、取材に協力してくれたのは、ネットワンシステムズの教育を担当している「ネットワークアカデミーチーム」のマネージャーを務める木村雄亮氏だ。

ネットワンシステムズ ネットワークアカデミーチーム マネージャー 木村雄亮氏

一般的に、最近の新入社員は「内向的」と言われているが、同社の新入社員にも多かれ少なかれその傾向はある一方、知識が豊富であり、プレゼンテーション力が高いという特徴があるそうだ。

また、各種調査でも指摘されているが、「一人だけ目立つこと」を好まず、皆で協力し合う姿勢が強いそうだ。これは、若い人の間で「空気を読むこと」が重視されていることにもつながるだろうか。

もう1つ興味深かったのは、知識が豊富ながら、意外と簡単な物理環境には疎い面もあるということだ。「シミュレーターやクラウドなど、仮想的なトピックの理解はスムーズなのですが、ケーブルが抜けていてネットワークにもつながらない時、すぐにその原因がわからないといったことがたまにあります。そのため、研修では配線から行ってもらいます」と木村氏。

クラウドが当たり前になりつつある今、物理環境を意識しなくても、ITを使うことは可能だ。そのため、アプリケーション関連のエンジニアであれば、インフラの知識がなくても仕事ができてしまう。しかし、ネットワークなどのインフラに関わるエンジニアは、そうはいかない。

仮想化、クラウドも新人研修で学習

ご存じのとおり、クラウドや仮想化の広がりにより、エンジニアの求められる技術も変わりつつある。こうした背景により、ネットワンシステムズでも新人研修のカリキュラムの変更を行っているそうだ。

1カ月半の研修期間で、ネットワークの基礎知識に加え、ストレージ、サーバ、仮想化、クラウドまで学習する。正直なところ、仮想化とクラウドまで、新人研修で学ぶことには驚いた。一昔前の新人研修に比べると、明らかにレベルが高い。

こうしたトピックについて、座学と実機検証により、学習を進めていくそうだ。天王洲のオフィスには、同社がネットワーク機器、サーバ、ストレージで構成される疑似環境が用意されている。

天王洲オフィスに設けられている教育用のサーバルーム。さまざまな機器が混在しているため、ケーブリングの重要性も実感できそうだ

研修を受けるネットワンシステムズの新入社員たち

研修のおおまかな流れとしては、ネットワークに関する学習が済んだ後、サーバ、ストレージ、仮想化と進めていく。サーバはLinuxベースにWebサーバ、DNSサーバといった基本的なサーバを構築する。ストレージについては、同社が扱っているEMCの製品を用いて、NASやSANなどについて学ぶ。

仮想化については、ヴイエムウェア製品を活用して、仮想マシンを構築する。前述したように、物理環境を意識してもらうため、「あえてワークステーション型のサーバを手元に置き、結線などの物理構成を構築してから論理サーバを構築する」と木村氏は語る。

木村氏は、これからの新人研修において重要なキーワードとして、仮想化と自動化を挙げた。仮想化はすでにカリキュラムとして組み込まれているが、自動化は、プログラミングを取り入れるかどうかを検討しているそうだ。

今年から新たに加わったクラウドについては、Amazon Web Servicesを活用しながら、「触ってみる」ことを学ぶ。同社はこれまでプライベートクラウドの構築を主に手がけてきたが、これからは企業においてハイブリッドクラウドの導入が増えることを見越し、ハイブリッドクラウドの仕組みを知ってもらうことを狙っている。

同社は、こうした疑似環境を活用した研修を顧客企業にも提供している。疑似環境を備えていない企業で研修を行う際は、持ち運べるラックに各種ハードウェアを搭載して、研修会場でも実機を活用した研修を行っているそうだ。

運搬可能なラックに搭載された研修用ハードウェア

最後に、木村氏に新人ネットワークエンジニアにこれだけは押さえておいてもらいたいことを聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

「最近のネットワークは無線が当たり前になっているため、サーバでネットワークを使うにはケーブルを接続するといったことが忘れられがちです。インフラの物理環境については外さないでほしいですね。また、仮想化はネットワークによって支えられているので、通信の仕組みもきちんと知っておいたほうがいいと思います」

クラウドに加え、SDN(Software Defined Network)、SDDC(Software-Defined Data Center )など、インフラ分野でもソフトウェア化が進んでおり、物理的な環境がどんどん見えなくなってきている。しかし、こうしたソフトウェアによって定義された環境を支えているのは、ネットワークやサーバであり、インフラなくしては稼働できない。

インフラにスポットライトが当たる場面は減っているものの、その重要性は増す一方である。ネットワークエンジニアの皆さんには一層の活躍を期待したい。