眼鏡ブランド「JINS」を展開するジェイアイエヌは、同社が販売するセンシング・アイウエア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」と連携する、3種類の新しい公式アプリをリリースし、これらのアプリ群の共通キーワードである"集中"と、"集中力マネージメント"をテーマとしたプレスセミナー『JINS MEMEで実践する「集中力マネージメント」』を13日、東京都・原宿にある同製品の旗艦店「JINS MEME フラッグシップストア 原宿」にて開催した。ここでは、同イベントで説明された「集中状態」を可視化する方法や、元陸上競技選手の為末大氏や医学博士の石川善樹氏といった専門家によるトークセッションの様子をレポートする。

井上一鷹氏(ジェイアイエヌ JINS MEME 開発担当)

「JINS MEME」は、メガネとしての形状や機能はそのままに、三点式眼電位センサーと六軸センサーを通じて、眠気や集中度、体のバランスなどの生体データ(DEEP DATA)を取得できるウェアラブルデバイス。スマートフォンの専用アプリを通じて、心と身体のさまざまな情報を可視化できるのが特長の製品だ。

同社はこれまでJINS MEME用のアプリとして、心と身体のバランスをリアルタイムにチェックできる「JINS MEME」、ランニングフォームのブレを可視化する「JINS MEME RUN」、体幹トレーニングを実践する「JINS MEME TAIKAN」、眠気の可能性を察知して安全運転に役立てる「JINS MEME DRIVE」の4つを公開していた。

上記のアプリはいずれもフィットネス系であったが、このたびリリースされた3つは「集中」をテーマとしたアプリだ。ユーザーの集中状態を可視化し、生産性向上へと導く「JINS MEME OFFICE(オフィス)」、集中しやすい状態をつくるための、心のトレーニングアプリ「JINS MEME ZEN(ゼン)」、そして心と身体をリフレッシュするウォーキングトレーニングアプリ「JINS MEME WALK(ウォーク)」というラインナップで、これらはApp Storeより無償でダウンロードできる(4月13日 19時現在、「JINS MEME WALK」のみダウンロード不可)。なお、今回はiOS版のみの提供となっており、Android版は今後、順次提供予定とのことだ。

最初に登壇した同社のJINS MEME 開発担当 井上一鷹氏は、冒頭に「人間のマルチタスクは、脳の構造上難しい」と述べ、「過剰なマルチタスクは約25%の時間をムダにしていると言われている」と紹介した。人間が集中できる時間は、2,000年の時点では12秒と言われていたが、現代人は8秒以下になっているそうだ。そこで同社は、ひとつのタスクに専念して進めるほうが作業効率が高いであると考え、「集中」というキーワードに着目したという。世の中には、スポーツ選手や棋士、エンジニアなど高い集中力を発揮する「マインドアスリート」と呼ばれる人が多く存在するが、一部の限られた人だけではなく「集中を測る」ことで普通の人でも集中力を鍛えることができると述べた。

JINS MEMEを装着したユーザーの集中状態を計測できる「JINS MEME OFFICE」

次に、今回リリースされた新しい3つのアプリが紹介された。最初は、"集中を計る"アプリ「JINS MEME OFFICE」。JINS MEMEを装着しスマートフォンで集中したい時間を選び計測をスタートさせる。あとは、ひたすらひとつの作業に没頭していれば、アプリがユーザーの集中状態をリアルタイムに計測するという。時間になるとスコアが表示され、測定中に高い集中状態であった時間がわかるという。

画面上の円を見つめて集中力を鍛える「JINS MEME ZEN」

次に紹介されたアプリは、"集中を鍛える"アプリ「JINS MEME ZEN」。瞑想の考え方に基づいて集中力や創造力の向上を目指すもので、例えば集中力を高める「Focused Attention」モードでは、ひとつの対象に注意を傾けることで深い集中を促すトレーニングを実践できる。画面上の円を見つめていると、JINS MEMEがユーザーの瞑想の深さを測定し、終了後はユーザーの瞑想状態の特徴が表示されるということだ。

最後は、"集中に歩み寄る"アプリ「JINS MEME WALK」。井上氏によれば、頭の状態をリフレッシュし、より集中しやすい状態を作るためのウォーキングメニューを提案してくれるものだという。ウォーキングのフォームやスピード、ストライドをリアルタイムに計測&可視化し、終了後にはウォーキングの質をスコアが表示されるほか、その履歴を詳細データとともに振り返ることが可能とのことだ。

より集中しやすい状態を作るためのウォーキングメニューを提案し、計測&可視化する「JINS MEME WALK」

また、JINS MEMEは集中状態を「"まばたき"の状態変化」で定義していると説明した。まばたきは様々な脳活動を反映し、集中すると回数が減少するという。東北大学工学部・高橋信氏が実施したゲームによる実験では、12人中10人が高いワークロード環境下でまばたき回数が減ったということだ。こうした事実により、「まばたきの回数の減少=集中の深さ」と定義したとしている。また、より深い集中状態では、「まばたきの強度」(まばたきの質)にも差が出ることが明らかになったという。伝統工芸品の制作に携わる、熟練工とその弟子の2人がJINS MEMEを装着して作業を行ったところ、両者にまばたきの強度の安定さに差異が認められたという。そのことから「まばたきの強度の安定=集中の持続力」であると定義したということだ。さらに、ヨガの瞑想トレーナーと一般人とでは、まばたきの回数や強度の安定さに大きな違いが見られたと述べた。こうしたまばたきのデータに、JINS MEME計測した「身体の安定性」(JINS MEMEは身体のブレも計測できる)を加味することで「集中」を計測しているということだ。