【インタビュー】

年300回以上のUI変更は「小さな単位」のPDCAサイクルから - グルメサービス「Retty」UIの現在と今後

 

グルメサービス「Retty」。同種のグルメサービスとしては後発ながら急成長を続けており、月間利用者数は1,700万人を超えた(2015年11月時点)という。

この成長を支えているのは、スピード重視の「UI(ユーザー・インタフェース)」改善――そう語ったのは、同社チーフデザイナーの近藤雄亮氏。同サービスのデータベースを構成するユーザーの口コミ投稿をはじめ、サービスの利用を促進する上で、UIの絶え間ない改善は大きく効果を及ぼすという。

今回は、現在注力しているUI改善の対象をはじめ、2016年にRettyが目指すUIの行き先について、近藤氏にお話を伺った。

――最初に、Rettyへのアクセスにおける利用デバイス、PCとスマートフォンの比率はどのようになっていますか?

現在、ユーザーさんのうちほとんどの方がスマートフォンから利用されていますね。割合はかなり高いほうです。

――「Retty」は大きく分けてWebブラウザ版とスマホアプリで展開されていますが、アップデートの頻度はどちらが高いですか?

アップデートの頻度は、スマホアプリの方が圧倒的に高いです。

そして、アプリとWebで比較すると、実はWebブラウザ経由でアクセスされる方が非常に多いです。これは現状公表している数値ですと、月間1,700万UU(ユニークユーザー)となっています。

アプリDL後のチュートリアルの段階でも、「行った」飲食店が登録できるようにサジェストを行うデザインに変更。施策後の「初投稿者率」の数値は118%上昇(+40人/日)したという

――スマートフォンからWebブラウザ経由の利用が多くある中、アプリの改善に注力するのはどんな理由が?

Rettyのアプリをダウンロードして使ってくださっている方はブラウザ経由の方に比較すると、投稿の頻度が高く、僕たちにとって大切なユーザーさんだからです。

「グルメ」は対象となるユーザーさんのボリュームが大きい分野なので、弊社サービスにとどまらず、「Webでグルメ情報を集める/発信する」人はこれからも増えてくると想定しています。そんな中で、わざわざ弊社サービスのアプリを使って投稿、お店の検索をしてくださる方には、(Webブラウザからの利用とは)また別のニーズがあると思っています。

――スマートフォンからの利用に際して、指標としている数値は何ですか?

アプリ全体という意味では、大きなKPIとして、投稿者の利用継続率、そして月間利用者数(MAU)があります。

また、先ほど申し上げたKPIのほかに、投稿数の増加も注視しています。RettyはCGMサービスなので、口コミが増えることが、そのままお店探しの体験を作ることにつながります。そのため投稿数を重視しておりまして、いかに、熱心なユーザーさんの方が投稿しやすい環境を作り、利用し続けていただけるかということを中心に置いています。

――スマートフォンアプリですと、数値が大きくなりがちなダウンロード数などを掲げる企業も多いですが、そうした数の大きさよりは、ユーザーのアクティブ性を重視している、というところでしょうか?

はい、そうですね。ユーザーさんの方に長く使っていただくことを第一目標として、UIの変更など、デザインの改良は進めています。その継続性を追うためのサブの指標として、デイリーのアクティブユーザーや、アプリのダウンロード数なども見ています。

また、弊社の特徴として、UIをはじめとしたインタフェースデザインについて、デザイナーだけでなくて、プランナーやエンジニアが一緒になってデザインを作っていく体勢を取っています。企画から制作まで順に工程が下りていく、いわゆるウォーターフロー開発の流れではなく、アジャイルで攻めていくという体勢です。

――セクションをまたいで、UIを検討していくのですね。

そうですね。そういう意味では、職種間の境界はあまりないです。プランナー、デザイナー、エンジニアは例外なく、ユーザーが使いやすい状態をどうしたら達成できるか考えます。

一般的には、その部分はプランナーがやるもの…という風に役割が分担されているかと思うのですが、そうではなくて、チーム単位でユーザーさんの課題に向き合い、解決していくという方法で進めています。

RettyはPC向けのサイト、スマートフォンではWebブラウザ版と、スマホアプリ。アプリはiOS版とAndroid版があり、それぞれのデバイスで違いがありますから、課題は多岐にわたります。

――デザイン変更の頻度は月次、あるいは週次などで行っているのでしょうか?

いえ、もっと短いスパンですね。1日にいくつか変更が行われているような状況です。

アプリに関しては、以前別の媒体で年間200本以上のPDCAを回して改善を行っているとお話したのですが、実はあの後洗い直してみたら、実は300以上あることが分かりまして(笑) 「月間●●件改善!」と目標の件数を立ててからUI改善をするのではなく、仮説とゴールを決めて、小さな単位でPDCAを回しているんです。

――アプリに注力されているというお話から少し横に逸れるのですが、利用者の多いWebブラウザ版について、PC向けのサイトはドロップシャドウがかかったヘッダ部分など、Webデザイン的な観点で言うと「少し前のデザイン」という印象を受けます。PC向けにあえて行っているデザインなのでしょうか?

実を言うと、スマホ向けアプリおよびWebの改修を集中的に行っていたので、PC版のWebサイトはそれらに比べて更新頻度が低いため、結果としていわゆる「Webデザイン」のトレンドとして「少し前のデザイン」が残っている状態なんです。スマートフォンのWebサイトもデザインや機能の改善など改修を検討しています。

――アプリの話に戻ると、Rettyのスマホアプリのアイコンは、Rの文字をお皿に見立て、食卓のように見せています。少し前の時期はフキダシ風のグラフィックも含まれていたと思うのですが、現在のデザインになった経緯を教えていただきたいです。

ご指摘の通り、以前はサービスのマークをフキダシの中に入れたようなデザインにしていました。フキダシのグラフィックは、実名の口コミを重視しているというメッセージを伝えるためのものでした。

アプリアイコンも変えましたが、実はもう少し大きな変化として、2015年にサービスのロゴタイプを変えているんです。

――そうなんですね、そこには気がつきませんでした。

比べて見ると分かるかと思うのですが、旧ロゴはポップな雰囲気で、「親しみやすさ」「カジュアルさ」を重視したものでした。これは、サービスをローンチした当初は、ユーザー間のコミュニケーションや「楽しさ」が、サービスの主だった利用目的だったからなんです。

「Retty」旧ロゴ

「Retty」新ロゴ

ローンチから時間が経ってサービスが成長し、情報の信頼性、そしてお店探しをする上である程度以上の品質の情報が整っているという点についての印象を、ビジュアルからも与える必要のフェーズになったと判断し、ロゴを変えました。その目的に沿ったイメージとするため、旧ロゴと比べると"シュッとした"、少しシャープな印象になっているかと思います。ここは、UI変更のように指標ベースで計るのではなく、ブランディングの観点から変更した部分です。

ブランディングもデザイナーの重要な仕事のひとつです。現在のロゴは僕と代表の武田で制作しました。

――Rettyを利用していて印象的なのはやはり「行きたい」というフィーリングベースの(未訪問段階でも使える)ブックマーク機能なのですが、アイコンの「ハート」のデザインはどういったユーザー反応から導き出されたのでしょうか?

ユーザーから見た時に「行きたい」と思った時、何かしらポジティブな感情に刺さっているという意味で、ハートに設定しました。一般的なブックマーク機能のアイコンは☆やクリップのマークになっているかと思うのですが、この「行きたい」がハートになったのは、ユーザーの「気持ち」をカタチにした結果です。

――アプリを立ち上げて最初に表示される「ピックアップ」では、各ジャンルの「まとめ」の中身を見る前、本で言えば「表紙」の位置に「行きたい」のボタンがありますね。

ここは最近変更したUIです。細かなサブミッションについては、それを追うためのチームを作って、1カ月から3カ月のスパンで取り組むのですが、その中のひとつの試みです。「行きたい」の数を上げていくと、KPIとして追っている数値の増加にも寄与するのではないかという仮説をたてて検証するチームが手がけた部分です。

検証の過程で、できる限り(アプリ立ち上げから)早いタイミングで行きたいお店を見つける状態を実現すると、継続的に利用していただく方向へつながっていくことが分かりました。そのため、アプリの立ち上げからなるべく早い段階で「行きたい」への追加が可能になるような位置にボタンをつけたところ、仮説通り他の数値にも好影響を及ぼしました。

――この変更によって「行きたい」に登録される数自体も増えたということでしょうか。

はい、増えましたね。アプリの利用全体で「行きたい」の登録数が上がったことによって、行きたいお店がストックされていって、それを見るためにアプリを立ち上げ、またお店探しをする…というユーザーさんが増えました。

――今回取材するにあたって見ると、少し前とUI(グラフィック)の変更があると感じる箇所がいくつかあったのですが、近々(半年以内)で行った改修のなかでもっとも効果があったのは?

一番効果が上がったのは「投稿数を上げる」プロジェクトです。コメント投稿のUIを大きく変えたことが、投稿数増加に大きく寄与しました。

旧コメント投稿の画面。投稿に関するすべての要素を1画面に表示していた

これまでは、コメント投稿にあたって必要なすべての要素を、ひとつの画面に詰め込んでいたんです。この旧UIがユーザーに与える印象として、圧迫感がある、たくさんのことをしなくてはいけないので抵抗を感じてしまうという仮説を立てました。

改修後は入力項目をひとつずつ表示し、入力後に次を提示するようにして、自然な流れで投稿できるようにしました。この変更が最も投稿率の増加に影響を与えました。

PCであれば画面が大きいので、さまざまな情報をひとつの画面に入れ込んでもそこまで圧迫感は感じません。ですが、スマートフォンは、限られた面積の画面しかないので、体感的に圧迫される感覚が強くなってしまいます。

現在のUIは項目を減らしただけでなく、表示面積も削減しました。画面の下部のバナー上で投稿が完了するので、見せ方によって投稿に対する心理障壁を下げることに成功しました。

コメント投稿の新しいUI。項目をひとつずつ画面下部に表示する

――UI変更に際して、投稿者数などの数値以外に、ユーザーヒアリングなどは実施していますか?

はい、こういったユーザーさんからのヒアリングも「全員」でやっています。

――職能問わずですか?

はい。要は、デザインは対話から始まると考えているので、ユーザーさんの課題は何なのかまず対話するところから始めています。ヒアリングをして、どういうところに課題があるのか全員で考えます。

――手段は対面ですか?

要件や聞きたい内容によって様々で、対面でも実施しますし、Web上や電話ヒアリングもよく実施します。

Rettyのユーザーさんはみなさん親切で、電話ヒアリングをしたいというメッセージを送ると、かなり高い確率で応じてくださるんです。電話で質問をする中で、どういうところに課題があるのか見つけることを定期的に行っています。

それに加えて、開発に関わるメンバーは全員がRettyのヘビーユーザーです。自分たちが自社サービスを積極的に使うことで、ユーザーさんの気持ちを理解することはとても大切にして、これもヒアリングの枠内に入ると考えています。課題発見を日常的にやっているのが特徴ですね。

――最後に、Rettyが今後目指す「ユーザー体験」はどんなものになりそうでしょうか?

お店さがしをしているひとの課題を解決するという、シンプルで大きなゴールを目指しています。デザイナーとして、何よりそのためには、お店探しをしているユーザーさんのことを誰より理解しようと思っています。ユーザーさんが楽しくお店を探すために、現状のUIが抱える課題は何なのか。それが分かれば自然とゴールは達成できると思います。



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