原雄司氏が代表取締役をつとめるケイズデザインラボは、2006年の設立以来、3D造形に関するツールの販売やソリューション提供などを手がけてきた。原氏自身は3Dプリンタに関する著書も多くあり、講演活動やメディア出演なども行っていることから"3Dプリンタ"のイメージも強い。

同氏は3Dプリンタとの最初の接点について「私は元々切削マシニングセンタの開発をしていましたから、3Dプリンタはどちらかといえば敵でした。いつか自分たちの仕事が3Dプリンタに置き代わってしまうのではないかという不安を感じて研究をしたのが始まりです」と語る。

ケイズデザインラボ 代表取締役 原 雄司氏

原氏は以前、通信機器メーカーに6年勤務する中で、試作における物作りと、2D/3D CADの社内普及に携わったという。原氏にとって、この頃がインターネットと3Dデータによる物作りが結びついた時期だ。

「実は働きながらプロの格闘家もやっていたんですが、当時、Macintoshに感動して、ファイトマネーを注ぎ込んでClassicを買いました。原点はここで、設計データをネットで送れば、別の場所で同じものを作れそうだと感じました」(原氏)

その後、CAD/CAMのソフトウェア会社に移り、2000年頃にローランドDGが開発した個人用のデスクトップ切削加工機向けにソフトウェアを開発する会社を設立したことが、現在に至るきっかけになる。

「当時は、2Dデータの図面のプリントアウトは当たり前にできるようになったのに、立体のモックアップを作るのはものすごく敷居が高かった。設計の意図を上司に説明し、稟議書を書き、試作業者に出す。その手続きだけでも時間がかかり、戻ってくるまでに早くても2週間。ひどい時にはモックアップすら作れないこともありました。そういう時、手元で2Dプリンタのように造形ができればすごいなと思っていました。ローランドDGがそれを実現してくれ、設計者の手元で物作りができるようになって、世の中が変わるなと思いました」と原氏は語る。