もう1つ、ブームによる大きな変化として原氏が挙げたものにMac OSでの物作り環境がある。

「これまで3DのソフトでMac OSで動くものは限られていたのですが、一気にMac OSやiOS対応のものが出てきました。これは画期的でした。CAD/CAMベンダーがWindows版とMac OS版を同時リリースするようになってくれました」(原氏)

原氏はiPhoneで実際に3Dの人体模型を動かせるアプリを動かしながら、「すでにこういうアプリも弊社から出しています。今後はタブレットからも作れるようになったり、一部機能を制限して一般の人でも使えるようになったりと変化していくでしょうね。すでに我が家では小学生の子供が子ども向けの3Dデータを作れるアプリを使って、3Dプリンタに出力したりして遊んでいます」と進化を語った。

iPhoneでケイズデザインラボの3Dアプリ「K’s 3D Viewer」を操作する原氏

簡単な模型を動かすようなアプリはいくつかあるが、環境が多彩すぎるAndroid版に比べて、iOS版の方が安定しているともいわれている。また日本ではiOSユーザーが多いこともあり、今後普及して行くことが考えられるという。

ケイズデザインラボでは自社開発のボディスキャナに対応するiOSアプリも用意しているほか、図書館などの公共施設に3Dプリンタを設置し、3Dデータが作れるiOSアプリを使ったワークショップの開催など、子供をはじめとした一般ユーザーが3Dデジタル技術に触れることのできる入り口となる取り組みも行っている。

新しく取扱をはじめたデスクトップ型3Dスキャナ

こちらはボディスキャナ

一方、産業側からも試作品作成のような内部利用だけでなく、一般ユーザーが触れられる形で出てくるものが増えそうな動きが見えてきている。

「衣類や靴などを個人のサイズにフィットするようにカスタマイズするサービスも出てくるでしょう。大量生産に近いコストでカスタマイゼーションができるわけです。ショップの店頭でカスタマイズして販売するという手法を大手メーカーが目指しているという話もあります。それくらい幅広い分野で必要とされうる技術だと思います」(原氏)

3Dプリンタは切削加工等に比べて複雑な形状が作れるほか、複数の材料を組み合わせた合成素材をその場で作れるという特徴を持っている。医療分野で使われる生体適合性のあるものや、フードプリンターなども研究されており、適用できる分野も幅広い。近い将来、実際に我々が日常的に身につけるようなもので3Dプリンタ製品が登場しそうだ。

「いま目に出来る限りで3Dプリンタで出てくるものというと、どこかオモチャっぽいものが多いですし、フィギュアなどの作例が多いですよね。これが少し誤解を招いている部分があると思います」と原氏は語り、すでに産業分野での活用が十分に進みつつあることを示した。その大きな一例が、ケイズデザインラボの開発した「D3テクスチャー」だ。皮等の表面に凹凸をつけるシボ加工では型を作る時、従来薬品で金属を腐食させていた。当然計算された結果を出すのは難しく、同じ型を複数作りたいという需要にも応えづらい。「D3テクスチャー」はそうした課題をデジタル加工で型作りすることで解決する。

D3テクスチャー」(右)

3月2日に開催される「iOSコンソーシアム無料セミナー」では、原氏が「3D技術革新が拓く未来の製造業」と題した講演を行うが、同日に講演を行うオリンパスが展示する「OPC Hack & Make Project」の製品に「D3テクスチャー」で作成したシボ加工つきの素材を貼り付けるなどコラボレーション展示も行われる予定だ。

明るい未来の製造業を拓く iOSコンソーシアム無料セミナー ~次世代 one to one~

日時:2016年03月02日 13:15- 18:00(開場12:45)
会場:イトーキ東京イノベーションセンター SYNQA
  (〒104-0031 東京都中央区 京橋3丁目7-1
対象:製造業、開発者、デザイナー、IT、新規事業創出
定員:先着150名
費用:無料
詳細・申込:iOSコンソーシアムのサイト
プログラム:
基調講演:「マスプロダクションにおけるこだわりの逸品」(関ものづくり研究所 代表 関伸一氏)
講演1:「3D デジタル技術による“ハラダイムシフト” マス・カスタマイゼーション時代のものづくり」(ケイズデザインラボ 代表取締役社長 原雄司氏)
講演2:「OPC Hack&Make Project - ユーザとの共創による新しいものづくりへの挑戦 -」(オリンパス 技術開発部門 佐藤明伸氏)

※参加した人にはもれなく、iOSコンソーシアム製造WGが総力を上げて作りあげた総ページ数100ページを超える「iOS導入・運用ガイド」を無償進呈する。

「製造業にとってiOSやMac OSは馴染みの薄いものかもしれませんが、実は工作機械や3Dプリンタの中にカスタマイズが許されている機種が増えています。私の知り合いにもFileMarkerを使ってiPadで機械の効率化やスケジューリングをしている人もいて、身近になりつつある存在です。iOSにも製造業向けのアプリも出ていますから、下請け作業ではなく一般コンシューマー向けに自らビジネスを行おうと考えた時には、それらを活用する意義は高いと思います」と原氏。

今後、製造業が伸びて行くにあたって1つの鍵になりそうな3DプリンタとiOSという組み合わせについて知ることができるチャンスになりそうだ。