2015年のデジタルマーケティングをめぐる動きを振り返ると、ユーザーの行動履歴をはじめとするデータの利活用は当たり前になり、スマートデバイスの普及により時間や位置情報といったデータを活用したO2Oの展開も活発になってきた。一方、テクノロジーの分野ではIoT(Internet of Things:モノのインターネット)への注目が高まり、今年は一層技術の進化が期待できるところだ。

こうした動きを踏まえ、2016年のデジタルマーケティングはどうなっていくのか。その展望について、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)プロダクト開発本部広告技術研究室長の永松範之氏にお話を伺った。

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム プロダクト開発本部広告技術研究室長の永松範之氏

――2015年は、アドテクノロジーにおいて一層「データドリブン」の必要性が高まったのではないでしょうか。この動きは今後どうなっていくと感じていますか?

永松氏:私たち広告技術研究室では「テクノロジー」、「メディア/コンテンツ」、課金や効果指標、取引手法といった「メソッド」、そして「データ活用」という4つの領域で研究を行っていますが、近年はそれぞれの領域が複雑に絡み合い、融合してきていると感じています。

データの領域について、私たちが注目しているのはロケーションデータの活用です。これまでもロケーションデータはターゲティングの手段として使われてきましたが、それに加えてスマートフォンのGPS機能によってデータが収集しやすい環境が整い、またPOI(Point Of Interest)のデータが整備されてきたことによって、「どの位置にどのような関心を持ったユーザーがいるのか」ということが見えてくるようになりました。つまり、ユーザーのロケーションデータとPOIデータを組み合わせることで、より精度の高いプロファイリングができるようになったのです。さらに、オンラインの行動履歴とリアルな位置情報を組み合わせることで、より深いターゲティングもできるようになります。

――アドテクノロジーの最大の関心は「どこに潜在顧客がいるのか」ということであり、それを探すための技術ということが求められています。ロケーションデータとPOIデータの組み合わせはその答えのひとつということでしょうか?

永松氏:そうですね。今のアドテクノロジーではあくまでもオンラインにおける行動をベースとしたデータの活用が盛んに行われていますが、今後はこれにリアルなロケーションデータを加えることで、よりユーザーの興味関心に応えるアプローチが可能になるのではないでしょうか。PCとモバイルといったクロスデバイスの利用シーンで、複数のデバイスを横断するユーザーに対して広告配信を最適化させる仕組みも、今年は活用していきたいと考えています。

――「潜在顧客を探す」という点では、CRM=既存顧客データの活用も昨年から注目されてきています。

永松氏:アドテクノロジーとマーケティングテクノロジーの融合、つまり顧客データをはじめとする企業が保有するアセットとの融合もひとつの大きなテーマですね。私たちでも、いくつかの案件でデータの連携を開始したり、LINEビジネスコネクトを活用して間接的に企業のデータをマーケティングに活用したりといった動きが出てきました。いかにして企業の保有するデータをマーケティングに活用するかという点は、重要視されてきていると感じています。まずは企業が持っている顧客のデータを解析し、それを私たちのようなサードパーティが持つデータと融合させることで、企業の顧客と近い見込み顧客がどこにいるのかを発見することができるようになる。私たちもそういった価値を提供する仕組みを用意しているので、実際に企業に活用していただき、そのメリットを実感してもらいたいと思っています。