「着ける」から「着る」へ

ウェアラブルEXPOでは製品を構成する素材や部品についても多数展示されていたが、今回特に目立ったのが通電繊維の存在。通電繊維というと、すでにスマートフォン対応の手袋などに利用されている例もあるが、これからは回路そのものを繊維上に構築しようというのがトレンドになりそうだ。この分野については繊維・衣料の企業が積極的にプレゼンしていたほか、IT系の部材メーカーや、ベンチャー系企業なども多くの展示を行っていた。

  • グンゼ

グンゼは、「導電性ニット線材」を使って配線を施した衣料型デバイスを展示。線材が曲がることで抵抗値が変わることを利用して姿勢を判断したり、逆に電流を流してヒーター的に使うこともできる。

  • 東洋紡

こちらは東洋紡のフィルム状導電素材「COCOMI」を内蔵したシャツ。厚み0.3mmの極薄フィルムに導電シートが組み込まれており、電極と配線を用いて心電図の測定もできる。

  • エーアイシルク

エーアイシルクの通電繊維は、絹糸の繊維自体に導電性を持たせることで、絹が持つ吸水性やアレルギー反応の低さといった特性を生かしたまま、ウェアラブルデバイスに活用できる。天然素材由来の導電性繊維は珍しい。下の写真では左腕のスイッチ部分がエーアイシルク製。

  • ミツフジ

ミツフジの銀メッキ導電性繊維「AGposs」。銀の特性を持った繊維で、配線や電極の役割を担わせられる。意図やニット状の布地、カットファイバーなど形態もさまざまだ。

一方、旭化成のように繊維メーカーでありながら、導電繊維ではなく伸縮性のある銅線ケーブルを展示しているメーカーもあった。これは、導電繊維では抵抗が高すぎて、電力供給の観点からは絶対不足することが明らかなケースがあるため、まだ銅線が必要とのこと。コスト面も含め選択肢は多いほうがいい。

  • 旭化成

銅線を利用しながら、ゴム紐のような伸縮性を持ったケーブル「ROBODEN」。抵抗の少なさに加え、関節部などに使ってもたるみが出ないなどのメリットがある。

また導電繊維ではないが、セメダインが導電性を持った接着剤を展示。昨年にも話題になったのでご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、弾性を持った接着剤が一定の導電性も持つというもの。工業用途としてはもちろん、個人のDIY的な電子工作用としても、かなり可能性を秘めた製品だと感じさせられた。

  • セメダイン

接着剤なので様々なところに塗りつけて、導電性のある繊維どうしをくっつけてもいいし、そのものを回路代わりにしてもいい。写真では布地に直接LEDを貼り付け、接着剤で回路も描いている。

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導電繊維はまだ洗濯耐性が数十回程度だったり、折ったり伸ばしたりといった扱いへの耐性が低いといった問題があるものの、衣服として着てしまえば存在を意識しなくて済む。会場での盛り上がりぶりを見るに、今後、さまざまな製品が登場することを期待できそうだ。