2015年、Dellのアジア太平洋・日本地域におけるエンタープライズ事業の売り上げは対前年比で2桁の成長率を見込んでいる。そんな好調な事業環境の中、エンタープライズ事業の2015年の総括や2016年に向けた課題・注力分野、EMC買収による同地域への影響などを中心に、米Dell アジア太平洋・日本地域エンタープライズ・ソリューションズ事業部バイスプレジデントのPeter Marrs氏とデル 執行役員エンタープライズ・ソリューションズ事業本部長の町田栄作氏に話を伺った。そのインタビューの模様をお届けする。

米Dell アジア太平洋日本地域エンタープライズソリューションズ事業部のPeter Marrs氏

―アジア太平洋・日本地域全体のエンタープライズ事業の環境と業績は?

Marrs氏:2015年の売り上げは対前年比で2桁の成長率であり、エンタープライズ領域では最も伸長が著しかったベンダーがわれわれだと自負している。アジア太平洋地域でサーバの出荷台数はNo.1となっており、ストレージの出荷容量も外付、内蔵含め同様だ。これからSoftware Defined(ソフトウェア定義型)の時代が到来するということで、ストレージからネットワーク、データセンターまでSoftware Defined化が進んでおり、主役となるのがサーバの部分となる。このような中で、サーバでNo.1のポジションを獲得しているということは非常に大きなアドバンテージだろう。

また、テクノロジーの面でも他社にひけをとらないと自負しているうえ経験・実績も豊富なため、今後のSoftware Defined化の流れの中では良いポジションに立っていると考えている。近年はフラッシュのコストも下がっていることから、サーバにフラッシュストレージを搭載したソリューションは安価に導入可能になってきているため、敷居も下がっており、Software Defined化の流れにも対応した環境が容易に構築することが可能となってきている。今後もこの流れは加速していくだろう。2015年は全体として好調な1年だった。

―2015年で最も好調な地域は?

Marrs氏:アジア太平洋・日本地域ではインドが最も成長が著しく、好調だった。インドはEコマースに対する投資としてITインフラ整備の需要があり、われわれとしても成長が著しい市場であり、アジア太平洋地域だけでなく、グローバルにおいても伸びが著しい国に挙げられる。モディ政権の誕生で投資が加速しているため追い風が吹いている状況であり、業績だけでなく、市場を上回る勢いで伸びている。日本でもシェアを増やしたいが、シェアの伸びから見ればインドが勝っている。また、中国や東南アジアといった国・地域でも2桁の成長率となっている。

―2015年の日本における事業環境と業績は?またどのよう製品が好調だったのか?

町田氏:為替のチャレンジはあるが、日本の中でのビジネス全体の収入は増加しており、サーバ、そして特に飛躍的に伸ばしているのがストレージだ。国内におけるストレージの総出荷量が伸びてきており、成長のスピードと国としての市場の成長という観点では、他のアジア地域の国が勝っているが、市場に対してはシェアを伸ばしている。

―EMCとの統合について。仮にEMCを買収した場合、エンタープライズ事業が強化されるがアジア太平洋・日本地域における影響は?

Marrs氏:買収はあくまで仮定だが、両社において前向きな話であり、もし実現すれば成長の加速が見込まれ、今まで困難だったことができるようになるのではないか。現状においてもわれわれはデスクトップからサーバ、ストレージ、クラウド、仮想化技術、ハイブリッドクラウドまで幅広くワールドクラスのソリューションを展開しているが、それに加えてEMCが有する顧客層は違うため、融合すれば相乗効果が期待できる。顧客のインフラを改革していく上で良い位置に立てるのではないかと考えており、右肩上がりで成長できるチャンスとなる。私自身は何の懸念もなく、むしろさまざまなチャンスが出てくるだろう。

―クラウドをはじめとした第3のプラットフォームの台頭により、ハードウェア製品は減少していくのか?

Marrs氏:クラウド化が進むことにより、ハードウェアが減少するという懸念はあるが、実際はすべてのシステムがクラウド化されることはないだろう。クリティカルでないものはパブリッククラウド、クリティカルなものはプライベートクラウドで使い分ける。今後もその流れは加速していくため、従来のプライベートクラウドや仮想化の分野で十分にハードウェアを提供できると考えている。われわれがハードウェアを提供する顧客は大きく分けて2つあり、まずはパブリッククラウドを運用しているクラウドベンダー、もう1つはプライベートクラウドとパブリッククラウドを活用するグローバル企業に対してだ。

プライベートクラウドとパブリッククラウドのデータ連携が大きな課題になるが、われわれが買収したBoomiのソフトウェアにより可能だ。また、従来はプライベートクラウドを中心に稼働していても、ワークロードをクラウドにバーストする需要もあるため、そのような場合には「Dell Cloud Manager」が有効であり、クラウド化の促進による懸念はない。

町田氏:デバイスやデータはますます増加していくことが見込まれており、そこに対して標準化、オープン化、自動化を進めていけば、全体的にはITを使う要求は増えていくだろう。日本はいまだにプロプライエタリな部分があり、もっとオープンにしていくことで日本市場のオポチュニティは大きくなる。また、日本企業のシステムはユニークな環境も多く、レガシーシステムをリプレースしていく需要が多いのではないか。