スマートフォンアプリ(以下、スマホアプリ)の広告効果測定ツールとして、知る人ぞ知るイスラエルのサービス「AppsFlyer」が、日本で本格的なサービス展開を開始した。10月1日付けでカントリーマネージャーに就任したのは、大坪直哉氏だ。

「2015年8月に入社後、勉強のため日本を離れイスラエルに行っていた期間もありました。そのため、日本で営業活動を始めて1カ月程度ですが、みなさんからの強い期待を感じています。やっと来てくれたか! と言われるほどです」(大坪氏)

AppsFlyer カントリーマネージャー 大坪直哉氏

中立的なソリューションであることを強調

AppsFlyerは、スマホアプリを開発・提供する企業向けに、そのダウンロードを促す広告キャンペーンの効果測定・分析を可能にするソリューション。国産の測定・分析ツールも存在するが、大坪氏によると、これらの多くは広告代理店が提供するものだという。

「代理店が提供する故に、キャンペーンに合わせて代理店を使い分けることができません。さらに、接続しているネットワークも多くなく、キャンペーンを展開したい枠に対して出稿できないことや、枠に対して希望の代理店に依頼できないというような課題があります」(大坪氏)

また、機能面において既存のソリューションは、Rawデータの提供がオプション扱いであったり、そもそも提供されないケースがあり「社内のBIでユーザー行動を十分に分析したい」というニーズに応えられなかったという。加えて、アプリのインストールに至った直接のクリック(ラストクリック)しか把握できないため、キャンペーン適正化の機会損失に繋がっている可能性もあった。

「一方、AppsFlyerは代理店フリーで、連携済みのパートナーは1,400社以上となります。Rawデータも標準で提供するほか、ラストクリックから遡って3クリックまで計測できますから、キャンペーン適正化にも威力を発揮すると自負しています」と大坪氏は説明する。

日本語でのサービス展開やサポートを強化

国産でなく代理店にしばりがないことを強調する同社だが、日本ユーザーにとって気になるポイントは"サービスのローカライズ"だろう。

「実はこれまでも、日本語による日本の営業時間に対応したサポートを提供していました。AppsFlyerのイスラエル本社には日本人の女性スタッフがいるんです。彼女が日本時間に対応したサポートを提供してきましたし、ユーザーマニュアルも日本語で提供してきた実績があります。そして今回、日本での直接営業も開始しました。今後は日本でのサポートも強化して行きます」(大坪氏)

(2015年10月末)現在、日本でAppsFlyerの名刺を持って活動しているスタッフは大坪氏1人だが、積極的な人材登用を行なっているほか、Webサイトの日本語化を10月中に完了し、利用画面についても2016年前半には対応する意向。「年内に数名を採用し、早い段階での日本法人化を考えています」と大坪氏は言う。

アプリビジネスの隆盛に対応する熱意

大坪氏によると、現在、スマホの利用はWebからアプリへと移行が急速に進んでいる。一方で、アプリの計測にはさまざまな技術的課題もあり、従来のWeb解析の考え方では追い付かない部分も多いという。しかしAppsFlyerは既に、世界各国の5,000社以上の企業に導入され、年間20億ドル以上のモバイル広告費、月間5億件以上のモバイルアプリ・インストール数を対象に効果測定を行っている(2015年10月時点)という実績をもつ。

この理由として、AppsFlyerが「従来できなかったニーズを実現させることで、企業のマーケティング活動を充実させていく」ことへの期待感があるではないだろうか。たとえば、広告をクリックしたユーザーが既にアプリをインストールしている場合、アプリを起動して直接キャンペーンページを見せるといった仕様や、まだインストールしていないユーザーには、インストールしてもらったあとでキャンペーンページを表示するというような動きを1つのリンクで実現する。オムニチャネルへの対応やテレビ広告の効果測定といったニーズにも柔軟に対応していくといった具合だ。

なお、これから1人で日本市場に切り込む大坪氏は、オーバチュアからCriteoを経てAppsFlyerへと移籍した人物。その目的は、現在盛り上がっているスマホアプリをターゲットにした広告ビジネスに魅力を感じたからだという。その意欲と熱意が、AppsFlyerというツールに乗って日本市場に注がれようとしている。

「責任の重さはもちろん感じますが、楽しいという感覚が大きいです。本社から『いちいちお伺いをたてなくてよいから、必要だと思ったことはやれ』と言われています。創業期を体験させてもらっているような気持ちです。まずはサービスを認知していただく段階ですが、すでにグローバルでは十分な実績を持っています。コストも安価で利用期間の縛りもなく、非常に導入ハードルの低いサービスです。使って、AppsFlyerのよさを知っていただきたいです」と大坪氏は力強く語った。