30年ぶりに『ルパン』がTVシリーズで帰ってくる! 昨年10月飛び込んできたニュースに、いったいどれだけの人が胸を躍らせたことだろう。ついに10月1日から、TVシリーズPart4となる新生『ルパン三世』(日本テレビ系 毎週木曜25時29分~25時59分)の放送がスタートする。

はたして、新しい『ルパン』はどのような作品となって私たちを驚かしてくれるのか。そして、なぜ今このタイミングでTVシリーズを作ることになったのか。新たなキャラクター・レベッカ、ニクスを投入した理由とは? 今回プロデューサーを務めるのは、長年『ルパン三世』作品に関わってきた制作スタッフを束ねるテレコム・アニメーションフィルムの浄園祐社長。自身もTVアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、OAD『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)など、さまざまな角度から『ルパン』の魅力を描いてきた人物だ。本作の最重要キーマンともいえる浄園氏に、新TVシリーズの気になるポイントを聞いた。

新TVシリーズ『ルパン三世』から

――"浄園"さんというのは珍しい名字ですね。ご出身である静岡県には多いお名前なのですか?

"浄園"という名前は、佐賀のお寺がルーツなんです。父親が教員をしていて静岡に来たため、静岡県が出身地になっています。祖父は門前の小僧からパチンコ店を経営したりとめちゃくちゃで、結果として誰も寺を継ぎませんでした。オヤジが英語の教師だったというのもあって、劇場で英語版の『トムとジェリー』を見せられたのがアニメとの出会いです『ルパン』を知ったのもその頃ですね。田舎だったので、当時は『キョンシー』と『ルパン』が一緒にあったりと、みんな2本立て3本立ての同時上映が当たり前の時代でした。

昔好きだった『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(1987年)などを作っていたのがテレコム(当時は東京ムービー)だったことを知ったのは業界に入ってから。それで3年前に「テレコムの社長をやれ」と言われた時に、じゃあこの人たちとど真ん中の『ルパン』を作りたいなという思いが生まれました。

浄園祐プロデューサー 撮影:荒金大介

――TVアニメのプロデューサーというお仕事について、あらためて教えていただけますでしょうか。

本来で言えば、役者を決めたり予算やスケジュールを決めたりします。でも『ルパン』は長きにわたってやっているので、ある程度のフォーマットも役者さんも決まっています。そういう意味で今回は『ルパン』の歴史の中で、「どういう『ルパン』を作るのか」ということを説明する必要がありました。

実はここ数年、会社の事業として『ルパン』を盛り上げようと、さまざまな取り組みを行っています。『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』(2013年)のような異色ものをやってみたり、俳優の小栗旬さんを主役に実写化をしてみたり。私のほうではTVシリーズ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、OAD『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)など、スピンオフ作品でルパン以外の人物に焦点を当てました。

僕は、『ルパン』には原作の幅広さがあるし、顧客も多様である印象があります。『旧ルパン』(TV第1シリーズ)のようなエッジの効いたものが好きだという人もいれば、『新ルパン』(TV第2シリーズ)のようなど真ん中の作品が好きという人もいるので、その人たちを満足させるためには、いろんなコンテンツを会社として発信する必要があるわけです。そこに着目して企画を立てたのですが、そこは僕が企画書を作って売り込んで……というサクセス・ストーリーは実はあまりなくて、もうやろう! って決めていたものなんです。ただ、そこには30年ぶりに復活させるぞ! という強い思いはありました。

――TVシリーズ第1~3作、劇場版などさまざまな展開がある中で、『ルパン』らしい『ルパン』、ど真ん中の『ルパン』というものは定義付けが難しい気もします。

明確な『ルパン』らしさを説明できる人ってなかなかいないんですよ。でも、僕は作り手なので、それを分析する必要があります。どういうものを届けたら「これぞ『ルパン』」と言ってもらえるのかということを考えた時に、やっぱり長年作品に携わってきたテレコムのスタッフが描くと、まず『ルパン』らしい『ルパン』になるということがあります。

例えば、線の温かみ。2000年以降アニメはデジタル化が進み、絵を描いても途中からはパソコンで作っています。どんなに有名なアニメも、それは『エヴァンゲリオン』、『ドラえもん』、『アンパンマン』であっても、作画したものをデータにして作業しています。データってやっぱり味気がないもので、人が描いた線もドットになってしまう。つまり、線の温かみがなくなるということです。手書きの手紙のぬくもりと、メールの文書の味気なさの違いに似ていますね。

僕たちが小さい頃に見ていたアニメはセル画だったから、人が描いた絵を転写していたんです。つまり、かすれたり、よれだったり、逆に力強さ、粗さなど、描く人の気分にもよるところが全部画面に出ていました。僕たちはそういうところから、画面から出てくる"圧"を感じていたんです。でも、今はデジタルになったことで、きれいにする技術だけはとても進みました。美少女モノとか髪の毛の先まできれいに描けますし、目の中のハイライトまで細かくできます。そういった精密さは再現できるけれども、人の荒っぽさや生きざままでは出せない。

ルパンたちは誰にも縛られず、欲しいものをなんでも手に入れていきます。彼らのそういう生きざまが、『ルパン』作品のかっこよさであり、ほかのアニメ・キャラクターにはない魅力です。そんな生きざまを描く上で、整理されたもの、フォーマットにのっとったものは『ルパン』を作る上では邪魔になるんです。だから今回、僕たちはあえて劣化させました。ジーンズでいえばあえてダメージジーンズを作るような、あえてもう1回汚すイメージです。そういった人のぬくもりの部分が、もしかすると日本のアニメが海外で作るものと違うところなのかなと思っています。