ただし、「同時に企業はクラウド選択の新たな課題を突きつけられた」とGelsinger氏は指摘する。それが、元CIOのEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏が公開した国家による情報収集の実態だ。企業は情報のプライオリティを鑑み、プライベートとパブリックを使い分ける必要に迫られた。また、データのロケーションにも一定の制限がかかるようになっている。

Gelsinger氏は、「ユニファイド・ハイブリッド・クラウドで、アプリケーションやデータが(プライベート、パブリックを問わず)自由に行き来できるようになった。ユニファイド・ハイブリッド・クラウドの本質は、1つのビューで複数のクラウド管理できること。つまり(複数のクラウドを)1つのクラウドとして運用できることだ」と語る。今後はこうしたクラウド管理の手法が、重要になるというのが同氏の見解だ。

仮想化はセキュリティのルネサンス?

企業にとってセキュリティの確保は、最重要課題である。日本と比べて、米国はセキュリティ対策に積極的な投資を行っている。しかし、Gelsinger氏は、「その投資構造は、必ずしも正しくない」と指摘する。

「ある大手金融では、年間のIT投資予算は前年比5%減であるのに対し、セキュリティに関する投資は、前年比50%増になっている。ただし、セキュリティ投資が増加するのは、セキュリティ侵害があった時だけだ」(Gelsinger氏)

企業が守るべきは、人、アプリケーション、そしてデータである。Gelsinger氏は、「セキュリティ機能は『Built in VS. Bolt on(組み込みか追加か)』の議論があるが、これはナンセンスだ。セキュリティは『Architecture in(アーキテクチャの一部)』であり、それを実現しているのが仮想化だ」と語る。

Gelsinger氏の考えはこうだ。仮想化は、人・アプリケーション・データとコンピュータ・ネットワーク、そしてそれに接続されるデバイスの中心に位置する。その"立ち位置"を利用し、適切なユーザーに、適切なアプリケーション/データを、適切なセキュリティレベルで提供できることが、仮想化のアドバンテージであるという。

Gelsinger氏は、「アーキテクチャとして組み込まれたセキュリティ機能は、コスト面でもメリットがあり、運用管理面でも、後付けセキュリティ機能より簡素化されている。(仮想化をセキュリティの中核とする考え方は)セキュリティのルネサンスだ」と、その優位性を強調した。

「プロアクティブな技術の導入」では、人工知能(AI)を挙げる。過去において、AIの流行は何度か訪れたものの、いずれもビジネスに定着するものではなかった。しかし、Gelsinger氏は「現在のAIは、次のイノベーションの波」であると指摘する。その理由は、ビッグデータだ。IoTやセンサーなどから収集される、膨大なデータ分析から得られる知見と予測が、既存の技術をプロアクティブな技術に変化させる可能性を秘めているという。

「例えば、極小のセンサーを人体に取り付け、呼吸を計測することでぜんそくの発作を予測するといったことが可能になっている。また、人工知能を搭載したソフトウェアが、新たなソフトウェアのプログラムを書くといったことも可能になった。こうした技術は今後さらに加速していくだろう」(Gelsinger氏)

最後にGelsinger氏は、「ある調査によると、S&P 500の企業のうち、40%は10年以内に消滅すると言われている。リスクを取ることを恐れては、次の時代に生き残ることはできない」と語り、講演を締めくくった。

Gelsinger氏は「企業にとってハイブリットクラウドは、この10年間で最も戦略的な要素だ」と指摘したGelsinger氏は「企業にとってハイブリットクラウドは、この10年間で最も戦略的な要素だ」と指摘した