世界の食料問題の解決に取り組むNPO法人、TABLE FOR TWO International(TFT)は6月16日に、TFT活動報告会を開催した。この報告会では、TFTの活動報告のほか、TFT参加企業の取り組みについても発表があった。

"おすそわけ"の精神、TABLE FOR TWOの取り組み

2007年に設立されたTFTは、「TABLE FOR TWO=二人のための食卓」をコンセプトに、先進国と開発途上国の子どもたちが食事を分かち合えるような活動を行っている。TFTによると、世界の約70億人のうち、約10億人が飢餓や栄養失調の問題で苦しむ一方で、20億人近くが食べ過ぎが原因で肥満状態にあるという。この「食の不均衡」を解消するために、TFTでは社員食堂や店舗でカロリー・栄養のバランスが取れたTFTヘルシーメニューを展開し、購入代金のうち20円を飢えに苦しむ世界の子どもに給食1食分として寄付するというプログラムを実施している。1食購入することによって、二人分の食事になるというわけだ。

これまでに、TFTは東アフリカとアジアの計7カ所で学校給食を提供してきた。支援した数は7年間で3,300万食、これは2万4000人の子どもの7年間分の給食に相当するという。

同報告会では、タンザニアとフィリピンでの活動内容が紹介された。タンザニアでは、学校給食を導入してから、子どもたちの就学率が70%から96%に、出席率が50%から90%に改善されたという。フィリピンでは、750名の子どものうち、栄養失調だった115名が約半年後には53名に減ったという。

日本国内では、現在650を超える企業・団体がTFTの活動に参加。2015年5月にはトヨタが国内全ての社員食堂(62食堂)へTFTプログラムを導入したと発表されている。

また、2014年からは新しいプログラムとして、「カロリーオフセットプログラム」が開始された。対象商品の購入やサービス利用などでカロリーを抑制、消費することによって、カットしたカロリー分が寄付金になるという仕組みだ。この寄付金は開発途上国の農業支援の費用となり、新たなカロリーを生み出すために使われている。

日本国内に限らず、アメリカやヨーロッパ、中東など世界13カ国でTFTの活動は展開されているという。TFTの活動について国連機関から、「日本文化らしい"おすそわけ"の仕組みだ」と評価されたというエピソードが語られた。

社員の健康を考えた企業各社の取り組み

TABLE FOR TWO参加企業各社の取り組みとして、5社が活動内容について披露した。

左が東京エレクトロン コーポレートブランド推進室 CSR推進室 安原もゆる氏、右がエームサービス BDS事業本部 豊川光恵氏

東京エレクトロンは、「社員の健康と心の豊かさの実現機会を提供する明るくワクワクする楽しい場」をコンセプトに、2011年に赤坂の本社にカフェテリアをオープン。同社が社員の健康指導を行い、エームサービスがメニューを提供しており、その中にTFTメニューとなる12種類の野菜が選べるサラダバーを用意しているという。

TFTメニュー以外にも、毎週月曜日は「Healthy Day」とするなど、健康に関するさまざまな取り組みが実施されている。現在までに、累計約4万4000食のFTFメニューが販売されたと発表された。

三菱日立パワーシステムズ 営業戦略本部 横浜営業部 宮下広明氏

三菱重工業と日立製作所の発電事業を担う三菱日立パワーシステムズは、現在三菱重工業とあわせて、全国11事業所、8支社、6研究所でTFTプログラムを導入しているという。

導入のきっかけは一般社員からの提案だったという。社内コンセンサスを取るべく、経営陣やコーポレート部門、食堂メーカーなどに巡回説明を行ったり、社内でPR活動を行ったという。また、既にTFTを導入している企業へ訪問するなど、真剣な取り組みの経緯が説明された。同社では、これまでに累計約5万5000食の支援を行っているという。

三井住友銀行 経営企画部 CSR室 山岸誠司氏

三井住友銀行では、自社内だけでなく、グループ企業へもTFTプログラムが広がりをみせているという。三井住友ファイナンス&リースや三井住友カード、SMBCフレンド証券など計5社で、食堂や自動販売機でTFTプログラムを実施しているという。また、日本国内だけでなく、ニューヨーク支店でもTFTのパートナー企業であるBent Onと提携し、お弁当購入代金のうち25セントを寄付に当てていると語られた。



FiNC 代表取締役社長 溝口勇児氏

FiNCは、フィットネス分野では国内初となるカロリーオフセット参加企業として発表された。同社が提供するダイエットアプリ「ダイエット家庭教師」で1kg減量するごとに100円を寄付するという仕組みで活動を行っている。この活動の副次的な効果として、従業員のモチベーションアップや、採用につながるケースがあったと語られた。

各社が手を取り合って取り組む

そのほか、当日は「TABLE FOR TWO 総選挙」が開催され、全国のTFT導入企業の取り組み事例を集めて、投票が行われた。また、TFT対象のお弁当を提供するオフィスおかんの惣菜やビナーシェのビスコッティがふるまわれた。

TFTでは、「地球はひとつの食堂」という考えから、社会貢献活動では、各社が手を取り合い、積極的に成功事例(魅力的なメニューづくり、食堂での広報活動など)を共有し、企業の垣根を越えて皆で参加企業数を増やそうと一丸となって努力しているという。

オフィスおかんのお惣菜

「TABLE FOR TWO 総選挙」の様子。50社を超える事例が紹介された

TFT導入各社が提供するお弁当