5月13日~15日に東京ビッグサイトで開催された、日本最大級のIT専門展「Japan IT Week 春」。今回は「通販ソリューション展 春」の中から、顧客を理解し、顧客の求めるオムニチャネルのエンゲージメントを実現するコンテクチュアル・マーケティングソリューションとコマースソリューションを提供しているSAPジャパン(旧:ハイブリスジャパン)のブースをレポートしよう。

Jpan IT Week 春 2015「通販ソリューション展 春」同社ブース

試着室を単なる着替えの場所から、ときめく空間へ

SAPジャパンのブースで、最初に目に飛び込んできたのは2つのデモ展示だ。まずひとつめは、アパレルショップの試着室での利用を想定したソリューションで、試着室に持ち込んだ商品を壁に掛けると、横に設置されたタブレット端末に商品情報を表示するというもの。サイズやカラーバリエーションも表示されており、「ちょっと大きいかな」「別の色も試着してみたいな」と感じたら好みのサイズや色をタップ。すると店舗スタッフへリアルタイムに指示が送られ、指定した商品を試着室へ持ってきてくれるのだ。 仕組みとしては、商品に取り付けたICタグを試着室の壁に埋め込んだリーダーで読み取り、タブレットへ送信する。

商品に取り付けられたICタグを壁に埋め込まれたリーダーが読み取る。ダブレットを通してユーザーに様々な情報を届ける

SAPジャパン CECソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング マネージャの北詰尚弘氏

SAPジャパン CECソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング マネージャの北詰尚弘氏は「こちらの展示はあくまでも活用法の一例です。たとえば、タブレット上で選択した商品の情報をお客様のメールへ送信しFacebookやInstagramなどのSNSに投稿できるようにしたり、メンバーカードをスキャンし、その情報と組み合わせてECサイトのお気に入りへ追加できるようにしたりと、さまざまな活用が考えられます」と語る。 さらに「試着室は単なる着替えの場所から、ときめく空間へと変えることができます。また、こうした取り組みはお客様を中心としたオムニチャネルの形成にも役立ちます」と続けた。

リアル店舗でレコメンデーションを実現

続いて目に入ったのは、棚に複数のワインボトルが並べられた、リカーショップや百貨店向けのソリューションだ。店頭でワインを選ぶ際、顧客はまずスマートデバイスから専用アプリ「Wine Wizard」を起動。アプリ上では「白/赤」の種類に加え、ワインの重さ(ボディ)やフルーティーさ、樽の材質などをタップで選んでいく。そして送信ボタンをタップすると、自分の好みにマッチするワインが光り教えてくれるのである。 ワインボトルを手に取るとセンサーが反応し、横に置かれたタブレット端末にワインの産地情報や価格などを表示。さらに、先ほど選んだ自分の趣向に何%合っているかといった詳細な情報も示してくれる。また、POS情報と連携させ、何が売れ筋かを表示することも可能という。 北詰氏は「こちらはリアル店舗でレコメンデーションを実現できるソリューションです。今回の展示ではワインを採用しましたが、アプリの設問と商品データを変更すれば、ほかの酒類や香水などアイデア次第でさまざまな商品に活用できます。弊社では“ワクワク”をテーマに、今回展示している試着室やワイン選びなどの新しいソリューションを提案しています」と語る。

スマートデバイスを使ったワインレコメンデーション

オムニチャネル対応の包括的コマースソリューション「hybris Commerce Suite」

「hybris」ブランドの製品についても、デモを交えて分かりやすく紹介していた。 hybrisは、PCM(Product Content Management:製品情報管理)をコアに複数のモジュールから構成されたコマースソリューションだ。企業では製品に関するさまざまな情報を保有しているが、hybrisはこれらの情報を集約し、製品を一層魅力的に見せる写真や動画を用いたコンテンツ制作、口コミの表示をはじめ購買率向上へと結び付く施策の実施など、よりリッチな情報管理と活用が行える。また、営業や企画など社内の部署ごとに分かれている情報を一元管理したい、といったニーズにも応えてくれる。

オムニチャネル対応の包括的コマースソリューション

hybrisは、オムニチャネル・コマースを前提に作られているのも特徴のひとつ。ウェブやモバイル、コールセンターやカタログといった既存のチャネルに加え、新しくデバイスやチャネルが追加されても対応できる構成になっていると言う。また、コマースサイトに求められる基本機能はもちろん、BtoB/BtoCそれぞれのための各種テンプレートが用意されているので、ビジネスモデルにあわせたサイトを構築することができる。テンプレートをベースとして、業種・業務内容に応じてフレキシブルにカスタマイズすることも可能だ。また、一般的にBtoCとBtoBのコマースサイトは、システムを個別に構築・メンテナンスする必要がある。

SAPジャパン CECソリューション事業本部 シニア ソリューション エンジニアの河原﨑剛氏

しかしhybrisの場合、ひとつのプラットフォーム上でBtoCにもBtoBにも販売する仕組みを構築できるため、システムのメンテナンスコストも削減できる。 さらに、製品販売後に必要となる決済や出荷などフルフィルメントに対応したワークフロー、在庫管理やオーダー管理のモジュールと、あらゆる領域で活躍してくれるのがhybrisだ。 CECソリューション事業本部 シニア ソリューション エンジニアの河原﨑剛氏は「hybrisは、小売/製造/保険/メディア&エンターテインメントなど多彩な業種においてグローバルでの実績がありますので、安心してお使いいただけます。コマースだけでなく、地方自治体や公共団体などパブリックセクターのサービス提供に利用できるのもポイントですね。また、ブラックボックス的なパッケージではなく各種テンプレートのご提供や、オープン・アーキテクチャを採用しており、APIや画面のソースコードも公開されているので、自由にカスタマイズすることも可能です」と語る。 コマース製品の中には低価格なパッケージもあるが、取引量が増えた際に対応できなくなるケースも多い。その点、hybrisは高いスケーラビリティを備えているため、将来的にもお得といえるだろう。

コンテクチュアル・マーケティングソリューション「hybris Marketing」

コンテクチュアル・マーケティングソリューション「hybris Marketing」

そしてもうひとつ、こうしたオムニチャネル対応のコマースソリューションと連携できる「hybris Marketing」にも注目したい。こちらは、さまざまな顧客情報を収集・分析し、顧客を理解し、企業のマーケティングに活用するためのソリューションだ。 一口に顧客情報といってもさまざまだが、hybris Marketingでは既存顧客の購入履歴などの過去情報の管理や分析だけでなく、たとえばSNSなどのソーシャルデータから自社および製品に対するイメージ、話題のキーワードなどのリアルタイムな情報を収集・分析することが可能。得られた分析情報と社内の顧客情報とを結び付け、どのような製品・サービスをどのタイミングで誰に向けて届けるのが最適なのか、求められているのか、ターゲティングリストとして出力してくれる。コマースソリューションと連携すれば、顧客がECサイトへアクセスした際、ターゲティングリストを基にバナーの出し分けなどを行うことも可能だ。

このようにSAPジャパンのブースでは、顧客を“ワクワク”させる新たなソリューション、そしてオムニチャネルのコマースからマーケティングまで幅広くカバーするトータルソリューションを展示し、来場者の目を惹いていた。