『アイドルマスター ミリオンライブ!』のユニットCD「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER HARMONY 09&10」発売記念イベントが5月2日、都内で開催され、ユニット「ミルキーウェイ」より小岩井ことり(天空橋朋花役)、斉藤佑圭(永吉昴役)、野村香菜子(二階堂千鶴役)、「ARRIVE」より近藤唯(篠宮可憐役)、中村温姫(ロコ役)、山口立花子(百瀬莉緒役)の計6人が登場した。

『ミリオンライブ!』は毎月のように精力的なCDリリースを続けており、第一シリーズの「LIVE THE@TER PERFORMANCE」、第二シリーズの「LIVE THE@TER HARMONY」では、ゲームに登場する50人のアイドル全員がソロ楽曲(とユニット曲)を歌うという、途方も無い量の制作を積み重ねてきた。第一シリーズの「LTP」各巻の発売時には、ラジオ『ミリラジ』のパーソナリティトリオが中心となり、765プロの先輩たちの助けを借りながらイベントを行なってきた。それに対して第二シリーズ「LTH」のリリースイベントは、各ユニットの所属メンバーだけでのイベントが多く、フレッシュなメンバーが自分たちの力でイベントを回してきた。

そんな中でも今回のイベントは、斉藤佑圭、野村香菜子、中村温姫がアイマスステージ初参加。本人曰くLTPイベントも2ndライブも泣いてばかりだったという近藤唯が進行役を担当し、今まででもっともフレッシュかつ予想がつかないイベントがスタートした。初参加組の3人は今日のために秘密特訓を重ねてきたとのことで、他のメンバーたちからは「私も呼んで!」との声が飛んでいた。お題に対するユニット全員の解答を揃える「ハーモニーシアター」のコーナーでは、「こどもの日と聞いて思い出す食べ物は?」「会場の近くにある武道館と聞いて連想するのは?」というお題にチャレンジ。こどもの日の問題では斉藤と「ARRIVE」チームが当然のように「柏餅」を書く中、野村が「桜餅」とボケ、小岩井はまさかの「チマキ」。唯一のツッコミ斉藤の「一言言わせてくれかしわもちだろ!」との昴ばりのツッコミが響いていたのだった。続く武道館のお題では、「ARRIVE」チームが「ブドウ」というダジャレ解答に逃げる中、「ミルキーウェイ」チームは歌詞の中に"ぶどーかん"が登場する『ミリオンライブ!』のテーマソング「Thank You!」と解答。ゲームとしてはきっちり解答を合わせた「ARRIVE」チームの勝利となったが、客席の拍手では「ミルキーウェイ」が勝っていたように思う。

ゲームコーナーで緊張がほぐれたところでミニライブコーナーへ。トップバッターの小岩井ことりは黒いドレス姿で「鳥籠スクリプチュア」を初披露する。ドレスに合わせた黒の薄手の手袋や、そこにあしらった薔薇のコサージュなどは雰囲気十分で、「朋花がこの衣装で歌ってくれたらいいな」と思って選んだとのこと。4月5日に行われた『ミリオンライブ!』2ndライブでは幕張イベントホールの大きさと大スクリーンを最大限に活かしたステージを見せた小岩井だったが、小会場でも少しでも朋花らしさを表現しようとする小岩井のこだわりは変わらず。彼女のトレードマークは非常に長い黒髪だが、今回も一本のロングテールに結わえた髪先を指先でくるくると蠱惑的に回したりと、身近な材料を使って雰囲気を出すのが本当にうまい。近距離だからこそ指先に込めたニュアンスに引き込まれてしまった。そして「鳥籠スクリプチュア」といえば、「一つ、心に信仰を忘れないこと」に始まる七ヶ条の宣誓が印象的だ。今回のステージでは客席が一斉に七ヶ条の文言を唱和。このサバト感は小会場ならでは生まれた一体感で、会場が大きくても小さくてもそれに合わせた見せ方をきちっとしてきたのには驚かされた。

山口立花子は「WHY?」を披露。山口によれば前のソロ曲「Be My Boy」ではメールも打てなかった莉緒が、成長してメールを送れるようになった歌詞だとのことだ。緊張の色も濃い山口だったが、Love you Love you、Miss you Miss you、といったフレーズを音楽的に口にするのに合わせた細かいハンドアクションが入るのが、シリアスな歌詞に対してどこかコミカルで楽しい。リズミカルなフレーズと聴かせるフレーズが畳み掛けるように長く続く楽曲なだけに後半ちょっと息がつらくなってくると、客席が一緒に叫ぶ「Love you!」の音量が力強くなったりと、一緒にステージを作っている感じがあるのが近距離のライブならではの良さだろう。緊張で足がガクガクだったという山口だが、「とても大好きな曲を皆さんの前で歌えて嬉しいです!」と楽しそうな笑顔だったのは会場の温かさあってこそだろう。

ステージに立った中村温姫が体操のように首を回し、表情豊かに、飛び跳ねるように「STEREOPHONIC ISOTONIC」を歌い始めると、「あ、ロコだ!」と思わず感じた。英語フレーズのたどたどしくもまるっこい感じが英語というよりロコ語でかわいい。「STEREOPHONIC ISOTONIC」と言えば超高速早口パートが印象的だが、これも生できっちりと歌いきった。間奏ではなく後ろに歌のフレーズがそのまま続くタイプの早口なこともあり、言い終えたところで歓声が上がったのが面白かった。中村によれば、プロデューサーさんやシアターのみんなの影響で変わってきたロコの心情を歌ったとのこと。「舞台袖から出る瞬間変な息が出ましたが、皆さんのおかげで歌えました」と感謝した中村だった。

野村香菜子が歌う「恋の音色ライン」は和のテイスト。まわるまわる、めぐりめぐる、のリズムに合わせて客席にもオレンジの光が舞う。アイマスでは初ステージとなる野村は、かなり難しめな曲なこともあり、正確に音を出すように、高音で声をひっくり返さないようにかなりていねいに歌っている様子で、サビの歌い上げの懸命さも応援したくなる。しかし、緊張して丁寧に歌っていながらも、だんだんと表情が柔らかくなって、歌うことを楽しんでいるのは見る側にも伝わるもの。歌い終えた野村は「わー! すごい! オレンジだらけですね! わー!」とハイテンションだ。野村は舞い上がりながらも「千鶴さんの切ない気持ちと淡い恋心を歌った曲で、千鶴ちゃんのことがますます大好きになりました。この曲に出会えて本当に良かったです」と想いを込めて語っていた。

斉藤佑圭は、ゲーム内のカードで永吉昴が着ていた野球のユニフォームっぽい衣装をイメージした服装で登場。「Day After "Yesterday"」で一番に印象に残ったのは、昴を演じる時の斉藤自身の華だった。客席をすっと見つめる時の吸い込まれそうな眼力の強さ、長身から伸ばした指がぴっと天をつくと、メリハリの効いたキメポーズがこの上なく決まる。そしてサビの芯の強い華やかな歌声と、色合いを変えて語りかけるような歌声。一言でまとめると、アイドルとしての華がある。LTHイベントでは多くのキャストのパフォーマンスを見たが、大きなステージでアイドル衣装で歌っている姿を見てみたいと一番強く感じたのは彼女かもしれない。イベント直前、ラジオのおまけ放送で斉藤が「一緒に歌ってほしい」と頼んでいたフレーズで、ぴったりと合わせて見せたの客席も流石だった。歌い終えた斉藤の「やっと歌えたね! 昴の曲をプロデューサーさんたちに届けることができました嬉しいよ!」の言葉は心からのものに思えた。

ソロのラストは、近藤唯の「夕風のメロディー」。先月の幕張イベントホールでは数千人の前で歌った曲を、小ホールでどう聴かせるか。フォークロア調な楽曲の音の広がりは流石に大会場には及ばないが、より際立って感じられたのが近藤自身の歌声のふくらみと伸び。演出がシンプルだからこそ、風が渡っていく夕暮れの情景がよりはっきりとイメージできる。歌い終えた近藤は「見ての通り、今日は泣いてないんです!」とアピール。LTPイベント、2ndライブという大舞台では泣いてしまった彼女にとっては、それは大きな変化。涙とふるえのイメージが強かった彼女が「皆さんが応援してくれてる気持ち、届いてるよという私の気持ちもこめました」と自分の気持ちをしっかりと伝え、二回のステージで進行役を務める姿は、『ミリオンライブ!』のステージにはまだ慣れていないメンバー6人でステージを作ったからこそ見られたものだろう。

最後の挨拶では言葉は違えど、また『ミリオンライブ!』の仲間と、もっと大きなステージで歌いたい! という強い気持ちが感じられた。締めのナンバーは、もちろん「Welcome!!」。天空橋朋花のソロに入り込んで歌う時のオーラを抑えた素に近い小岩井が、本当にアイマスが好きでアイマスの曲を歌うのが嬉しいんだな、という感じが伝わってきたのが収穫だった。恒例となった「Welcome!!」も、歌い手が違えば全く印象が変わる。この曲で「子豚さんたちもっと啼いて!」「ぶひぃ!」なんてやりとり、もう二度と聞くことはないかもしれない。間奏の台詞を歌い継ぐパートが新しい色合いを見せるのを感じながら、早くも『ミリオンライブ!』の次の舞台が待ち遠しくなるステージだった。