ここ最近、ロサンゼルスでも「BOWL」というワードが定着してきた。つまり「丼」だ。とは言え、日本で牛丼の代名詞的な存在である「吉野家」は、そんなブームが起きるずっと前の1979年に、「YOSHINOYA」という看板でロサンゼルスにて1号店を出店している。
その後もチェーン展開を続け、YOSHINOYAは米国でメジャーなファストフードの地位を確立。現在はロサンゼルス市内だけでも10店舗を展開している。そんなロサンゼルスで35年以上の歴史を持つYOSHINOYAに行ってみると、どうやら日本の吉野家とはちょっと様子が違うらしい。
ハンバーガーショップ式を採用
店名は吉野家ではなくYOSHINOYAになっているものの、見慣れた牛の頭をイメージさせるロゴは日本と同じ。店内に入ると想像以上に広く、余裕で30席は超えている。マクドナルドなどのバーガーショップ同様、オーダーできる場所と食べる場所がハッキリと分かれている。
定番の牛丼は「Beef Bowl(ビーフ丼)」というネーミングで、5.19ドルと日本のより高めの設定。日本にはないが、現地の人々に人気なのが「Teriyaki Chicken Bowl(テリヤキチキン丼)」(4.79ドル)だ。
丼メニューは、並盛から特盛まである日本ほど細かい設定ではないがちゃんとラージ(大盛)がある。加えて、同じ丼メニューに「Ramen Bowl(ラーメン丼)」(4.49ドル)があるのも興味深い。
丼メニューのほか定食メニューも用意されており、取材時には新商品として「Grilled Tilapia(焼き白身魚定食)」(5.79ドル)が提供されていた。また、単品で用意されているドリンクはスモールからラージまで選ぶことができる。
店内飲食のほか、テイクアウトができるのは米国でも同じだ。店内のテーブルには自由に使えるスパイシーな調味料が並んでいるので、店内飲食の場合はちょっとトッピングも試してみていただきたい。
甘いテリヤキはシャキシャキキャベツと
オーダーしてから待つこと10分。奥の調理場で作られたばかりの丼たちが、吉野家ロゴ入り袋に収まって提供された。丼を見たところ、プラスチック容器は日本のデザインと同じのようだ。
早速、テリヤキチキン丼の上にぎっしり盛られたチキンを一口食べてみると、その甘さがじわっと広がる。甘いテリヤキソースがグリルされたチキンによく絡まっており、表面の焼かれたカリカリ具合がおいしい。もちろん、食べ応えも十分だ。
付け合わせのゆで野菜(ニンジン、キャベツ)もこの甘いテリヤキソースと相性バッチリ! 口の中で茹でキャベツのシャキシャキ感が広がる。チキンや野菜の下には、細長く粘り気の少ないカルフォルニア米ではなく、もちっとした日本の米が盛られている。全てのバランスがぴったりな一品、いや一丼だ。
定食はコールスローのチョイスも可能
新商品の白身魚定食はというと、ティラピアという白身魚が使用されている。ティラピアは日本ではあまり見かけないが、日本でもその昔、タイの代わりとして使われていたこともあるといい、海外では現在でも一般的に親しまれているようだ。
バターでこんがり焼いた白身魚が2枚、白いご飯の上に載っている。付け合わせは、ゆでた野菜かクリーミーなコールスローから好きな方をチョイス。さらに、白身魚の上にはレモンとガーリックソースをかけられており、食欲がそそられる。
身はふわっと、でも外側はカリッ。部位によって異なる食感が楽しめる白身魚定食は、日本でいう焼き鮭定食のように定番的な位置づけになっているのだろうか。メキシカンなどのヒスパニック系も含め、様々な人たちに愛されているようだった。
日本の吉野家は"コの字"型のカウンターでビジネスパーソン等がもくもくと食べるというスタイルが一般的だが、ロサンゼルスのYOSHINOYAは友達や家族と一緒に食べられる和気あいあいな雰囲気が広がっている。日本のイメージで米国のYOSHINOYAに入店すると、米国らしいシステムにきっとあなたもびっくりしてしまうはず。
※記事中の情報・価格は2015年4月取材時のもの
筆者プロフィール: 佐々木 綾(ささき あや)
フリーライター。ニューヨークやパリにも居住歴あり、現在はロサンゼルスから発信している。ファッションとフード業界に精通しており、お酒好き! 実際に足を運びたくなるような取材を心掛けている。