ウェアラブルデバイスといえば、今一番ホットな「Apple Watch」を最初に思い浮かべる人が多いだろう。もしくは、少し前に話題になったGoogleのメガネ型デバイス「Google Glass」かもしれない。
これらのデバイスは、人々が身につけている既存のアクセサリーをデジタル化するイメージが強いだろう。実際に製品を販売しているメーカーも、Appleやサムスン、LG、ASUS、そしてソニーなどのPCやスマートフォンメーカーがずらりと並ぶ。
しかし、リクルートテクノロジーズのITソリューション統括部 アドバンストテクノロジーラボ 塩澤 繁氏は、こうした流れに異を唱える。
「現在、販売されている多くのウェアラブルデバイス、IoT端末は男性目線で作られている。"これがあれば何ができるのか"といった機能ばかりにフォーカスしてしまい、市場の半分を占める女性の目線がなかった」(塩澤氏)
そこでリクルートテクノロジーズは、現役女子大生とコラボレーション。講談社の理系女子応援サービス「Rikejo」とタッグを組む事で、こうしたテクノロジーにも明るい女性の知見を活かしたウェアラブルデバイス開発に取り組んだ。
女子大生が考えることは"思いもしないようなこと"
リクルートテクノロジーズは2014年6月に女性をターゲットにしたデバイス「Lily」を開発。デザイン性を高めた一方で、機能をシンプルに抑えている。「着信が来たら振動する」「スマートフォンを忘れたらランプが光る」といった具合にだ。今回のプロジェクトでは、この機能をベースに「女性が身につけたくなるようなデザイン性」を追求したという。
塩澤氏いわく、女子大生にこのデバイスを開発してもらう過程を見ていて感じたことは、「男性目線では思いもしようなところを気にしていた」ことだそうだ。
「合コン中に時間を気にすると場の空気を乱すので、終電時間になったらバイブレーションで通知する」や「親からの電話は取りづらいので、3回着信があった場合にバイブレーションで通知する」といったシチュエーションから機能を考えていたという。
そうした考え方が「面白かった。気付きになった」といい、今回の試みは今後、グループ各社に共有して、実際のサービスづくりに活かしていく。
「(ウェアラブルデバイスの可能性について)今のところ、機能が先行して語られているので、利用者の使い方を意識できていなかった面が多いと思う。ただ、アプリやハードウェア面でもライフスタイルに寄り添った物が必ず出てくるはず。私たちは2年前から研究しているので、トレンドを先読みして動こうとしている。まだまだこれからのデバイスだし、未来もあると思っています」(塩澤氏)
女子大生が考えるウェアラブルデバイスとは
そんな女子大生たちのデザインしたウェアラブルデバイスは、ブレスレットやバングル、シュシュ、ネックレスなど、多くの形状で提案されていた。どれをとっても個性的なデザインが並んでおり、単なるデジタルデバイスの趣が強い、現在のウェアラブルデバイスとは一線を画す。
かつて、NTTドコモが「TOUCH WOOD」という木を利用した携帯電話を発売した時にも話題になったが、工業製品のデザインはより人間に近い、人間に寄り添ったものになりつつある。それは、iPhone 6がiPhone 5などの直線的なデザインから再びラウンドしたデザインに戻った時に手に馴染む曲面仕上げを強調した点にも表れているだろう。
また、KDDIが出資する米国のベンチャー企業「Monohm」の「Runcible」も、メガネ型や時計型とは大きく異なった懐中時計のような、なおかつ一風変わった操作性を提案している。
今回のリクルートの取り組みでは「Lily」をベースにしていることから、通知方法やアプリはそれぞれ、あまり変わらない。ただ、こうしたウェアラブルデバイスは、多様なデバイスを繋ぐ"IoT"の中核技術の一つと目されているだけに、消費者それぞれの好みに合わせた「選べる自由」が、普及の鍵となるのかもしれない。