電子書籍レンタルサイト「Renta!」のテレビCMに登場した麻生久美子さん。先日の麻生さんへのインタビューに続き、今回はCMで話題になった嫌味上司の素顔にせまった。

謎の嫌味上司の素顔

仕事や日頃の人間関係に疲れ、レンタルコミックに“癒やし”を求めるOL。彼女が仕方なく参加した会社の飲み会で、不意に上司から「壁ドン」を喰らいドン引きする。 その中で、勘違い上司を演じているのが俳優の村上ヨウさんだ。CMではマンガ好きを揶揄する役柄だが、実際は大のマンガ好き。

そんな村上ヨウさんのマンガへの思いや、撮影における秘話とは?

――村上さんはCMの中ではマンガファンを揶揄するようなスタンスの上司を演じられていましたが、実際のところ、マンガを読んだりするんですか?

村上さん 実は重度のマンガオタクだったりします(笑)。原点は幼少期の藤子・F・不二雄先生(当時は藤子不二雄)。「ドラえもん」はもちろんですが、「魔太郎がくる!!」や「夢魔子」、「ブラックユーモア短篇集」なんかの“ブラック側”の作品も大好きでしたね。 そこに端を発し、高橋葉介さんや高野文子さんらをはじめとしたニューウェーブの旗手とされる作家さんの作品にハマっていき、本格的にマンガ熱が加速していくことになります(笑)。

――好きなカテゴリってあるんですか?

村上さん 先に述べたニューウェーブ時代の作品はじめ、近年は石黒正数さんがお気に入りです。基本的には、あまりカテゴリーにこだわらず「良いものは良い」というスタンスでマンガと向き合っています。 だから少女漫画も大好き。吉田秋生さんの『BANANA FISH』や萩尾望都さんの『11人いる!』なんかは、男性が読んでも面白いと思いますよ。

――あのCMの役どころからはまったく想像できない“筋金入り”のマンガ好きですね!

村上さん 「オタク」という言葉が生まれる前からの筋金入りのオタクでした(笑)。マンガだけでなくアニメも大好きで、アニメショップが僕にとっての聖地。お金が貯まると『アニメイト』などのアニメショップに通ってましたね(笑)。 今でも、「今日はマンガの日だ!」と決めて、一日中御茶ノ水や神田を回って絶版のコミックスを探しまわったりしてますよ(笑)。

書斎にはマンガ専用棚

――蔵書数ってどれぐらいあるんですか?

村上さん 現在で2000冊近くありますね。本当はもっとあったのですが、居住スペースの関係上、どうしても整理せざるを得なくなりまして、特に思い入れの強い作品だけを残した結果がその冊数です。壁の2面すべてがマンガの棚となっていますよ。

――電子書籍サービスでマンガを読むことってありますか?

村上さん 今回の仕事を受けるにあたり、実際に自分で「Renta!」に登録して利用してみたのですが、便利ですよこれ。 私は気に入ったマンガは必ずコミックで揃えるのですが、48時間108円からレンタルできる「Renta!」ならばいろいろな漫画家さんの作品を“試し読み”して、そこで気に入ったらコミックを揃えるという使い方ができる。

ごく限られたページしか読むことのできない無料の試し読みサービスと比べ、こちらはまるまる全部読むことができる点で大きく異りますね。もちろん、移動中や出先で「ああ、漫画読みたいな」となったときにサクッと借りて読むことができるのは本当に素晴らしいと思います。 また、思った以上に私ごのみのタイトルが充実していることに驚きました。

――どんなタイトルが気になりましたか?

村上さん ますむらひろしさんの「アタゴオル」、石黒正数さんの「ネムルバカ」あたりですね。これから本腰を入れ、じっくりと検索をかけてみるつもりです。あと豊田徹也さんの「珈琲時間」は、今後注目される作品だと思いますね。

――「Renta!」CMの撮影では、「“壁ドン”上司」という設定ですが、村上さんは実際に“壁ドン”したことってありますか?

村上さん ないですねぇ。どんな状況であってもああいった行動はとらないと思います(笑)。

あのシーンはアドリブから生まれた

――CM撮影で印象に残ったことは?

村上さん 実はこのCMって、監督からは「勝手にガンガン盛り上がって好きにやってくれ」という指示があっただけで、決まったセリフってないんですよ。 だから自分なりに「こんなことをやったら絶対に相手は引くだろう」ということを考えながら、いろいろなアドリブを放たせてもらいました。

それこそ「女性をムカつかせる」「マンガ好きを怒らせる」というつもりで演技に臨み、最終的にOKが出たのがあの“壁ドン”なんですよ。

これが話題の“壁ドン”シーン

――「マンガ好きを怒らせる」というのは面白いですね

村上さん これほどマンガ愛の強い人間が、世のマンガ好きを敵に回すというのは、ある意味で役者としての“腕の見せどころ”。 結果として、視聴者の方から「あの上司ムカツク!」という声を多数いただいたことで、役者としての目論見は成功だったと言えます(笑)。 何よりも自分自身がマンガ好きの心理を解っているので、「こんな事やられたらイヤだろう」「こう言われたら怒るだろう」という“ツボ”のようなものをイメージしやすかったのが大きいですね。

――麻生久美子さんはどんな感じの方でしたか?

村上さん 今回の撮影で初めて麻生さんとお会いしたのですが、あれだけ有名な方なのに謙虚で、私を含め周囲の人々にとても気を使ってくださることに驚きましたね。 加えて、要所要所でさり気なく出演者を含めた撮影チームが仕事しやすいよう配慮や工面してくださり、リラックスして演技に臨めました。女優さんとしての懐の深さを感じましたね。 私自身も役者として、非常にいい経験を積むことが出来たと思っています。

――最後にメッセージをお願いします!

村上さん かつては一部だけの人間のもので、どちらかというと“日陰者”扱いされてきたマンガですが、時代が移ろい、現在では麻生さんのような素敵な女性が「マンガが好きです」と堂々とアピールできるような素敵な趣味であり娯楽の一つとなりました。 そんなマンガを「Renta!」のようなレンタルコミックで好きなときに手頃な価格で読めるようになったことは本当に素晴らしいことだと思います。もはやマンガは立派な趣味の一つ。マンガをこよなく愛する人間の一人として、マンガ文化のさらなる発展を期待したいですね。

――ありがとうございました

村上ヨウ
1971年11月30日生まれ、長野県出身。演劇帝国KUSARE芸道(作・演/岸哲生)、TOON BULLETS!(作・演/浅沼晋太郎)、THE黒帯(作・演/榎原伊知良)などの劇団の舞台に多数出演。 TVアニメやウルトラマンショーの声優のほか、現在はTVやラジオCMのナレーションまで活躍の場を広げている。