三井製糖はこのほど、1型糖尿病の子どもとその家族を対象にした手作りスイーツ教室「おさとうの会」を同社にて開催。管理栄養士らの指導のもと、良好な血糖コントロール方法などを1型糖尿病の子どもたちに伝えた。

「スローカロリー」って何?

「ゼロカロリー」とは異なる「スローカロリー」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。これは、「糖質の小腸での消化・吸収速度がゆっくりである」ことを意味する言葉だ。

糖質の消化吸収がゆっくりである、すなわち血糖値の上昇が緩やかであることにはさまざまなメリットがある。「運動時の持久力が高まる」「集中力が持続する」「満腹感が長続きする」などが一例だ。実際、血統値の緩やかな上昇は肥満や糖尿病、メタボリック・シンドロームなどの生活習慣病の予防・改善などに有効であることが実証されている。

家族そろっていざスイーツ作り!

同社は早くからこの「スローカロリー」という理念に着目。食後の血糖値が緩やかに上昇する特徴を持つ機能性甘味料「パラチノース」を販売すると共に、その普及活動を行う「スローカロリープロジェクト」を実践してきた。その一つが「おさとうの会」の開催である。

子どもに多く発症する1型糖尿病

「おさとうの会」は、「パラチノース」を配合した同社製品「スローカロリーシュガー」を使ったお菓子づくりの会だ。親子でお菓子づくりを楽しみながら、血糖コントロールについて勉強する会として、今回で8回目を数える。

1型糖尿病は、膵臓(すいぞう)のβ(ベータ)細胞が破壊されて体内でインスリンが足りなくなることによって起こる病気だ。日本では10万人に1人か2人ほどの発症率で、子どもに多く発症することから、小児糖尿病とも呼ばれている。

血糖値を下げるホルモンはインスリンだけのため、患者はインスリンを体外から取り入れるインスリン注射を毎日、数回行わなければならない。血糖値は、高すぎず低すぎない状態を保つ必要があり、患者にとっては良好な血糖コントロールが大きな課題となる。そこで期待されているのが、血糖値が急激に上下動しにくい「パラチノース」や「スローカロリーシュガー」というわけだ。

親子そろってケーキ作り

当日は8家族計27名が、三井製糖の商品開発部・調理実習室に集まった。ほとんどの子どもは小学生だ。フランスで製菓の修行を積んだ管理栄養士・藤原恵子さんによるチョコレートプチケーキづくりのデモンストレーションを見た後、家族ごとに調理開始となった。

各テーブルを藤原氏がまわり、生クリームを泡立てるときの手つきなどをアドバイスする。親子ともども張り切り、どの家族も大変な盛り上がりを見せていた。後はオーブンで焼くだけになったところで、昼食となった。

焼きあがったケーキはとてもおいしそうだった

食事前に、数名の子どもが持参した検査キットで血糖値を測り、親がその数値をノートに記入していた。小学1年生の子を持つ母親にノートを見せてもらったところ、何時に何をどれくらいの量食べ、それらをエネルギーに換算した数値と、それにあわせてインスリンをどれだけ投与したかの記録が、毎日細かく記入してあった。

母親は「日によって血糖値の変化が激しく、正直、なにが影響しているのかはわからない。今日は数値が低いのでうれしい」と笑顔を見せていた。

医療やスポーツ分野で使われるスローカロリーシュガー

昼食時は、同社の商品開発部・宮坂清昭さんによる「スローカロリーシュガー」についての説明や、東京都栄養士会会長の西村一弘先生による「パラチノースの効果と1型糖尿病での応用」をテーマにした講演が行われた。

宮坂さんはスローカロリーシュガーを「食品のおいしさを生み出す砂糖と、健康機能を高めるパラチノースを混ぜて、2つの良いところを融合した新しい甘味料です」と説明。「砂糖は小腸の入り口近くで素早く消化吸収されますが、このパラチノースは小腸全体を使ってゆっくりと消化吸収されます。その分、血糖の上昇・下降が緩やかで血糖値が安定し、管理しやすくなります」と、血糖コントロールにおける摂取メリットがあるとした。

また、医療やスポーツ分野の食品、飲料にも幅広く使われているため安全面にも優れていると話し、砂糖と同じように使えることから「積極的に活用してほしいですね」と話した。

「スローカロリーシュガー」について説明する三井製糖の商品開発部・宮坂清昭さん

インスリンの投与量を減らせる可能性

続いて行われた講演で西村先生はまず、血糖コントロールにおけるインスリン重視の考え方に警鐘を鳴らした。

「好きなだけ食べて高血糖になっても、その分、インスリンを多く投与して下げればいいという考えは大変な間違いです。インスリンの副作用で低血糖の症状を引き起こすリスクもあるので、できるかぎり薬の量は抑えて、食生活における工夫で上手にコントロールしてほしいと思います」。

インスリン投与を減らす可能性として、スローカロリーシュガーに注目しているという西村先生。スローカロリーシュガーを用いたお菓子と通常の砂糖を用いたお菓子で食後血糖値の上昇・下降スピードを調べたところ、スローカロリーを使ったお菓子を食べた方が、長時間にわたって一定量の血糖値を維持できることがわかったという。と同時に、低血糖状態を引き起こしにくくなることも証明された。

「このことから、スローカロリーシュガーを使用した料理やお菓子、飲み物などを子どもに食べさせた分だけ、(1型糖尿病の子供たちに)投与するインスリンの量を減らす工夫ができると思います。どれだけ減らすかは各ケースで異なるので、トライ&エラーを重ねて、適切な量を見つけてほしいですね」。

講演する東京都栄養士会会長の西村一弘先生

上手に血糖コントロールしながら「おいしい生活」を

子どもたちはその後、商品開発部ラボの見学ツアーや焼きあがったケーキのデコレーションで盛り上がった。ようやく試食となると、「おいしい!」との声があちこちからあがる。笑顔はじける子どもを優しく見つめる親のまなざしがなんともいえない。

「1型糖尿病の子どもたちも、上手に血糖コントロールしながら『おいしい生活』を楽しんでほしい」――。そんな願いがつまった「おさとうの会」のひとときだった。