――ちなみに、夢や目標は公言するタイプですか? 徹と沙耶はその点で真逆でした。

私はやりたいことは何でも声に出して言うタイプなので、何でも言います(笑)。恥ずかしがらないで、口に出して言った方が叶うと思っています。プライベート的なことでいえば、もっと1人の時間を作りたいです。去年は人といることが楽しい一年でした。結局は自分一人でいる時間がなかったなぁと思います。友達もすごく増えた一年でしたし、お仕事関係の方々ともプライベートでご飯に行ったり。それがすごく楽しかったので、今年は真逆な一年にしたいです。もう少し大人になりたい(笑)。

――1人で何を?

日常的なことから、1人で過ごす時間を増やしていきたいです。1人で静かに過ごすことが意外とできないタイプ。誰かとしゃべっていたいとか、誰かとご飯に行きたいとか、誰かと何かをしたいと思う寂しがり屋(笑)。少しずつ少しずつ、大人になっていきたいですね。

――その1人の時間は仕事と向き合うため? それとも、仕事とは分けたプライベートな時間?

うーん…どっちも(笑)。あまり、区別はつけないタイプなんです。お仕事しているからあんまりこうだというのはないですね。その時、その瞬間瞬間。この業界に入ってからずっとそんな感じなので…いま振り返るとすごく自由すぎた時もあったんじゃないかなと思います。

――それでも昨年は女優として地固めになるような1年でしたね。

役者という仕事に関してちょっと堅く考えていたものが、やわらかくなったのかなというのはあります。すごく現場に居やすくなりました。今まで自分の中で考えすぎてしまって。どういうふうにいたらいいのかとか。どうしてもグループ時代の自分は、「そこから来ている自分」という先入観がありました。その場にどう居ていいのか分からない。去年はその感じから抜け出すことができたんじゃないかなと思います。

――昨年は蜷川幸雄さん演出の舞台『太陽2068』に挑戦。初めての舞台で勇気のいる決断だったと想像します。

かなり迷わせていただきました。舞台はまだ通らない道かなと思っていたので、まさか呼んでいただけるとは思っていませんでした。でも、何でも見て確かめたいタイプで(笑)。挑戦してよかったと思います。舞台に出演した俳優さんたちは軸がしっかりしていらっしゃる方たちばかりなので、教えてもらったことがたくさんありました。先輩方から「せっかく舞台に足を踏み入れたんだったら、1年に1本や2本は絶対にやるべき」に言ってもらえたので、そういう機会があれば、ぜひまた挑戦したいと思います。

――本作は歌舞伎町を舞台に描かれた物語ですが、前田さんにとっての思い出の場所は?

卒業してすぐに一人でニューヨークに行ったのは、私にとって大きな出来事でした。いつでも、一人で行きたい場所です。結局行ったり来たりで、丸々1カ月行けたわけではなかったんですけど、人生で初の一人旅。一人で飛行機に乗ったのもたぶん初めてだったと思います。

――完全に一人? マネージャーは?

完全に一人です。自分でアパートを借りて、学校に通って生活しました。友だちがいないので、学校の先生のおじいちゃんとずっとしゃべっていました(笑)。留学とまでは言えない期間でしたが、今でも一人で行きたい場所です。

――ニューヨークの魅力は?

とにかく大きな場所で、いろいろな人が集まっている街。そういう意味では怖い部分もありますけど、一人でいれば孤独を感じることもできます。

――やっぱり気づかれないものですか。

もちろん。でも、日本にいてもあまり気づかれないので(笑)。

――えっ!? 変装しないんですか。

しません。しない方が気づかれないんです。してる方が目立ちませんか? マスクとかサングラスって誰だろうって見ちゃいますよね(笑)。現地ではミュージカルを観に行ったりとか。一人でそういうことを淡々とできる場所なので、すごく好きですね。

――最後に、女優としてこれから実現したいことを教えてください。

やってみたいのは、もう1回ぐらい学生の役をやりたいですね。ちょっと制服を着たい(笑)。27歳ぐらいまでは皆さんやってらっしゃるので、まだ大丈夫かなと。それから、以前CMを西川美和監督に撮っていただいて。作品がすごく好きなので、いつかまたご一緒したいなと思っています。

■プロフィール
前田敦子
1991年7月10日生まれ。千葉県出身。2005年、AKB48結成時からメンバーとして活動し、2012年8月に卒業。2007年の映画『あしたの私の作り方』で銀幕デビューを果たし、初めて映画主演を務めた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(11年)で、第35回日本アカデミー賞話題賞(俳優部門)、『苦役列車』(12年)で第4回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞した。今年は5月23日公開の堤幸彦監督作『イニシエーション・ラブ』を控えている。

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