スマートフォンアプリの話では、ヤフーとして「Yahoo! JAPAN」アプリと「Yahoo!ニュース」アプリという2つのニュースアプリが存在する。もちろんYahoo! JAPANアプリは、ヤフーサービス全体にアクセスするためのものだが、そこでカニバってしまっては意味がないという疑問を持つ。

「この2つのアプリは、ハッキリと利用傾向の違いが見られます。アプリとWebでも違う部分がありますが、Yahoo! JAPANアプリと違い、Yahoo!ニュースアプリではニュースを"深く知りたい"という人がより多くいる印象を受けます。『この世をざっくり知りたい人』はトップから、提供している情報の多様性に触れていただくという意味で横の広がりがあるんです。その一方で、縦の広がり、物事を深く知るためにYahoo!ニュース 個人というコーナーを2012年9月から始めました」(有吉氏)

PCを上回るようになったスマホPV

Yahoo!ニュース 個人については詳しく後述するが、単なるニュースとは違った視点での解説や問題提起、アジェンダ設定など、ニュースの深層を追った記事を掲載している。これこそが、この1年ほど盛り上がりを見せている新興のニュースキュレーションアプリとの差別化に繋がると有吉氏は胸を張る。

ニールセンが11月に発表したニュースキュレーションアプリの最新動向調査では、SmartNewsやグノシーにユーザー数で劣るとされたYahoo!ニュース。しかし、これらのアプリとは異なり、ブラウザアクセスとYahoo! JAPANアプリ、Yahoo!ニュースアプリと利用者が分散しているため、実際の利用状況とは異なるという反論記事を即座にスタッフブログで公開している

こうしたニュースプラットフォームの争いが激化する中で、新興ライバルの出現にヤフーとしてどのように考えるのだろうか。

「Webニュースに接触できる機会が増えたことは、いいことだと思いますし、歓迎します」(片岡氏)

「若年層は、テレビが家になく、新聞も購読しない。スマホしか接触する機会がないわけですが、その分情報が身近な存在になった。ニュースを読む体験が身近になって、裾野が広がって、健全な競争ができればと思います」(有吉氏)

「Yahoo!ニュースは96年に始まりましたが、PCのページビューでも過去最高を記録するなど好調です。一方で、スマートフォン向けは2008年にスタート。それが今年、たった6年で超えたことになりますし、PCの約3倍のスピードで成長しているわけです。それだけ個人それぞれがニュースに接触できている証拠ですし、それが良いことだと思うんです」(片岡氏)

スマホのWeb、アプリ利用者の重複を除いても、実に2300万人がYahoo!ニュースを利用しているという

アルゴリズムより人

キュレーションアプリの多くは"アルゴリズム"を用いた情報選択の"自動化"がキーとなっている。これに対してYahoo!ニュースの売りは「人の存在」だと片岡氏は話す。

「私達のコアバリュー、強みと考えていることは『アジェンダ(課題)を人の力で選別し、価値付ける』ということです。リアルタイムにニュースを編成して、ユーザーに対して価値を付加して届けていく。だから人の存在は重要ですし、そこが支持されているんだと思っています」(片岡氏)

「もちろん、ニュースのレコメンドなどはアルゴリズムを用いていますが、それは人によるニュースの選別がベースになっていることがあってこそのもの。ここがコアということは今後も変わらないと思います」(有吉氏)

「人が選別する中でも、PVが取れるということだけでトピックスを選んではいけないわけです。社会性のあるもの、リアルタイムに選別していくことを大切にする必要があります」(片岡氏)

「少し前に米国がキューバとの国交正常化交渉を行うというニュースがありましたが、夜中からお昼前までヤフトピの一番上に掲示していました。これは、もし交渉がうまく行って正常化となれば教科書に載るほどの大きなトピックスです。

しかし、CTR(Click Through Rate:クリック率)で言えば、トピックスの一番下の記事よりも低かった。実に1/10以下です。でもこれは、今『出さなくてはいけない重要な情報』であり、今のところこういった情報の抜き出し方は編集の知見でしか出来ないこと。これを地道にやっていくことが私達の信頼性の源泉であり、コアバリューだと思っています」(有吉氏)

筆者が補足すると、ヤフーの編集部員は元新聞記者などが多く、「社会の課題」を見抜く習慣を持った人間がトピックスの選別を行っている。