SC14が開催されたNew OrleansのEarnest N. Morial Convention Centerは巨大で、全体の6割くらいはAmerican Healthなんとかという集まりが使っており、SC14の会場は4割くらいの面積であるが、それでも十分に広く、展示場を歩き回るのは大変である。

さすがNew Orleansで、展示場の開場にはジャズバンドも登場した。

展示フロアのオープニングにはジャズバンドが登場

通信インフラを担うSCinet

SCの重要なインフラストラクチャとなっているのがSCinetである。1万人あまりの参加者の通信ニーズと展示などのための本拠地のサーバとの接続などの通信をまかなうため、通信機器各社が最新の機器を持ち寄って巨大なネットワークを構築する。SC14では総延長が84マイル(約135km)を超える光ファイバを敷設し、会場と外部を結ぶ1.2Tbit/sのバンド幅のネットワークを作り上げた。

中央の機器群が設置されているところにSCinet構築に協力した企業や大学、研究機関などの名前が書かれた幕が掲示されている。日本からは富士通がGold Memberとして参加している。

そして、設置されている機器のラックの上にも、どこの会社が貸与したかを示す表示が付けられている。総額1800万ドルにも上る機器を数カ月、無償で貸し出すのであるから、そのくらいの宣伝はさせてもらっても良いであろう。

SCinetの構築に参加した企業や大学、研究機関などの名前を書いた幕

中央の通信機器群。ラックの上にマーカーの名前が書かれている

主要企業の展示

SC14ではおおよそ360のブースが設けられたが、やはり、人目をひくのは主要企業の大きなブースである。SC14の展示で最大の面積を誇ったのはIntelである。そして、それに次ぐのがHPとNVIDIAである。

ただし、主要企業の展示のレポートは、筆者の興味にも影響されるので、ブース面積の大きい順ということにはなっていない。例えば、Intelは次々世代のNights Hillを発表したのであるが、その展示は全くなく、他に興味深い新製品もなかったので、カバーされていない。

一方、Micronは、昨年発表した強力なパターンマッチ能力を持つAutomataプロセサと、HMC(Hybrid Memory Cube)をメインに展示していた。Automataプロセサ自体は、昨年展示されていたものと同じであるが、今年は専用の開発システムが展示されており、実用化に向けて進んでいるという感じである。

HMCの方は、メインメモリとしてHMCを採用した富士通のFX100スパコンが出荷間近であり、最近、Version 2の仕様が発表されるという状態で、勢いがついてきた感じである。

展示会場の風景

Micronのブース

MicronのAutomataプロセサ

Automataのプログラムの開発システム

HMCを搭載したXilinxの開発用ボード

左は2リンクの小型パッケージ、右は4リンクのピン数の多いパッケージのHMC

Crayはこれまでの科学技術計算用スパコンのXC40、ビッグデータ向けなどを謳うCS400サーバ、SONEXIONストレージを展示していた。

Crayの展示ブース

主力のXC40スパコン

CS400スパコンの空冷と水冷のブレード

XC40のブレードとその上に搭載されるモジュール

CrayのSONEXION2000ストレージ

HPは、各種のCPUを搭載するカードリッジを使用できる高密度のMoonshotサーバを展示していた。Moonshotは昨年も展示していたが、今年は各種のカートリッジが上に無造作に置かれており、カートリッジが揃ってきたという印象を与えていた。

そして、HPC向けの製品であるApollo 6000、Apollo 8000を展示していた。Apollo 8000はヒートパイプでCPUなどの熱をブレードの側面に運び、ヒートパイプが水冷のレールに接触しており、そこから冷却水に熱を逃がすという方法で冷却されている。

HPの展示ブース

高密度サーバMoonshot。上に載っているのは各種のCPUを使うサーバカートリッジ

HPのハイエンドHPC向けのApollo 8000

Apollo 8000のブレード。ヒートパイプで水冷のレールに熱を運ぶという冷却

Dellは今回の展示でレーシングカーを持ち込んだ。数年前のSCではレーシングカーや高級スポーツカー、大型トレーラなどで人目を惹く展示がいくつも見られたが、このところお祭り色は薄れて、車などを持ち込んだのはDELLだけであった。

DELLは新製品のPower Edge C4130を展示していた。C4130は1Uの筐体にXeon E5 2600 v3 CPUを2ソケットとGPU、あるいはXeon Phiを4台搭載できる。このCPUとGPUの接続に厚めのテープ状に成形されたケーブルが使われている。このように成形すると、GPUに流れ込むファンの風を邪魔することがなく、逆にダクトとして働く。このケーブルは3Mのブースで展示されていたもので、シールドがしっかりしていて特性が良さそうな感じであった。3MではTri axial cableと説明していたが、同社のWebサイトにはTwin axialはあるが、Tri axial Cableは見当たらない。

Dellの展示ブース

DELLは人寄せにレーシングカーを持ち込んだ

3MのブースでTriaxial cableと説明していたテープ状に成形したケーブル。切断して、端面が見える展示になっている

Dell PowerEdge C4130 Xeon Phi 4台との接続にこのケーブルが使用されていた

NVIDIAは、SC14でTeslaシリーズの最上位となるK80を発表し、これを展示していた。K80はKepler GPUを2個搭載しており、DP演算性能は、K40が1.43TFlopsであったのに対して、K80では1.87TFlopsとなっている。向上率が少ないのは熱の問題でクロックを抑えているためで、ターボブースト時の性能はK40の1.66TFlopsから2.91TFlopsに向上している。

K80は形状はK40と同じで、この写真のような展示では違いは見られないが、裏返してプリント板のパターンを見ると、2個のGPUが搭載されていることが分かる。

NVIDIAのライバルのAMDは、FirePro S9150 GPUを使う、ドイツのGSIヘルムホルツセンターのL-CSCというマシンがGreen500で1位となり意気が上がる。前回のGreen500ではNVIDIAのK20xを使う東工大のTSUBAME-KFCが1位であったので、トップの座をNVIDIAから奪ったことになる。ただ、FirePro S9150の展示はパンフレットだけで、物としての展示はS9100であった。

NVIDIAの展示ブース

SC14で発表したDual GPUのTesla K80

Green500 1位となったFirePro S9150の説明文

AMDのFirePro S9100 GPUを8台搭載するサーバの展示

SGIは、クラスタ型の大規模スパコンのICE Xと、独自のccNUMA技術を使う巨大共通メモリ型のスパコンであるUVシリーズを前面に出した展示を行っていた。

IBMは、POWER7やBG/Qの時代には高度な技術を使ったサーバを展示しており、真っ先に見に行くブースであったが、技術の端境期であることと、x86サーバビジネスのLenovoへの売却という環境で、テープライブラリやSSDを使うフレキシブルストレージの展示程度で目を惹くもののあまりない、寂しい展示であった。

SGIの展示ブース

SGIはICE XとUVスパコンを展示

IBMの展示ブース

IBMのアーカイブ用のTape Library

一方、IBMのx86サーバビジネスを買収するLenovoは存在感を増しており、NeXtScaleサーバは、水冷で高密度のサーバに仕上がっている。また、各社にサーバマザーボードを供給するSuperMicroもかなり大きなブースで出展していた。

Applied Microが、自社開発の64bit ARMアーキテクチャのX-Geneプロセサを搭載したサーバを展示していた。まだ、HPC分野ではARMプロセサは少数派であるが、この先、どうなるかを注目したい 。

Lenovoの展示ブース

Lenovoの水冷のNeXtScaleサーバ

Supermicroのサーバマザーボードの展示

Applied Microの64bit ARMのX-Geneプロセサを搭載するサーバ

インタコネクトの最大手のMellanoxは最新の100Gb/sのHDR InfiniBandの通信アダプタとスイッチをパネルで説明していたが、展示されている製品は56Gb/sのFDRのものが多かった。

HPC向けのストレージの大手であるData Direct Networksは主力のSF12Kシリーズの製品とSSDと組み合わせたSFA7700を展示していた。

Mellanoxの100Gb/sのHDR InfiniBandのX4アダプタの説明パネル

同じく100Gb/sのHDR InfiniBandスイッチの説明パネル

ストレージ大手のDDNのブース

主力のSF12Kストレージ

OracleはSL3000テープライブラリを前面に出して展示を行っていた。サーバも裏に展示されていたのであるが、説明も無く、やる気がなさそうであった。

SanDiskは、SSDの大手であったFusion IOを買収し、サーバ向けの製品を強化しての出展であるが、昨年のFusion IOのブースと比べると小さなブースであった。

分散メモリのクラスタに独自開発のnuma chipを搭載したアダプタと関連ソフトを追加して共通メモリを実現するNumascaleの展示ブースは撮影したものの、少し大きいブースを構えていたライバルのScaleMPの方は写真を撮り忘れてしまった。

Sun/OracleはSL3000テープライブラリを前面に展示

Fusion IOを買収してサーバ向けSSDを強化した SanDiskの展示ブース

Numa chipとソフトで、クラスタを大規模共通メモリに変えるNumascaleのブース