Gordon Bell賞は、高性能な並列計算を実現したことに対して与えられる賞である。賞を取ろうとする人は、成果を記述した論文を選考委員会に提出し、その中から、委員会は候補論文を選出する。

候補論文として選ばれるのは、毎年、6件程度で、今年は、次の5件が候補論文となった。

  • Petascale High Order Dynamic Rupture Earthquake Simulations on Heterogeneous Supercomputers:ミュンヘン工科大学を中心とするチームによる地震シミュレーション
  • Physics-Based Urban Earthquake Simulation Enhanced by 10.7 BlnDOF x 30 K Time-Step Unstructured FE Non-Linear Seismic Wave Simulation:東京大学、高度情報科学技術研究機構(RIST)を中心とするチームによる東京の都市部の地震シミュレーション
  • Real-Time Scalable Cortical Computing at 46 Giga-Synaptic OPS/Watt with ~100x Speedup in Time-to-Solution and ~100,000x Reduction in Energy-to-Solution:IBMを中心とするチームによる大脳皮質コンピューティング
  • Anton 2: Raising the Bar for Performance and Programmability in a Special-Purpose Molecular Dynamics Supercomputer:D.E.Shawリサーチのチームによる分子動力学計算専用コンピュータANTON 2の開発
  • 24.77 Pflops on a Gravitational Tree-Code to Simulate the Milky Way Galaxy with 18600 GPUs:ライデン天文台、理研などからなるチームによる銀河系の長期の進化のシミュレーション

ミュンヘン工科大学を中心とするチームによる地震シミュレーション

「SeisSol」というプログラムを使って、地震時の地層の動的な破断と地震波の伝搬を解析した。実行はTianhe-2、Stampede、SuperMUCの3つのスパコンで行っている。また、Tianhe-2とStampedeはXeon Phiをアクセラレータとして搭載しており、実行コードはペタスケールのヘテロなスパコンに対して最適化を行った。

論文発表するミュンヘン工科大学のA.Heinecke氏

発表の概要。SeisSolによる破断と地震波の伝搬の計算。コードを最適化し、Tianhe-2、StampedeとSuperMUCで実行

左は1992年に起こったM7.2のLanders地震のシミュレーション結果で、複雑な破断の様子が見て取れる。このシミュレーションはSuperMUCで実行し、1.25PFlopsの実効性能を達成した。

Lander地震のシミュレーションはStrong Scalingで、7000ノードのTianhe-2では3.3PFlops、6144ノードのStampedeでは2.0PFlops、9216ノードのSuperMUCでは1.3PFlopsの性能を達成した。また、地震波の伝搬の計算はWeak Scalingで、それぞれのスパコンで8.6PFlops、2.3PFlops、1.6PFlopsを達成した。

1992年のM7.2のLanders地震のシミュレーション結果。複雑な破断のパターンが見える

Landers地震のシミュレーションのStrong Scaling。縦軸は並列化効率、横軸はノード数。Tianhe-2の7000ノードで3.3PFlopsを達成