マカフィーは9月30日に個人向けセキュリティ製品の「マカフィー リブセーフ 2015」を発表した。

リブセーフは、2013年10月に投入されたマルチデバイスの保護が目的の統合型セキュリティ製品で、従来のWindows PCやMacだけではなく、AndroidやiOSも統合的に管理する。

今回の新製品投入で強化された点は、「簡単インストール」と「iOSセキュリティ強化」「Android端末におけるWi-Fiセキュリティ対策」の3点。

簡単インストールでは、製品利用登録後にマカフィーから送られてきたメールを開封し、張られているリンクを踏むことで、その端末にあったソフトウェアのインストール画面に誘導するというもの。WindowsであればWindowsソフトウェア、AndroidであればAndroidアプリ、iOS端末であればiOSアプリが、同じリンクを踏むだけでインストールされる。

マカフィー CMSB事業本部 コンシューママーケティング本部 PMマネージャー 小川 禎紹氏

マルチデバイスでセキュリティ環境を提供する上で「いかに気軽にインストールできるかを念頭に開発した」(マカフィー・小川氏)とのことで、より簡単にインストールできるスキームを提供することで、インストール数の拡充を図る狙いだ。

また、iOSセキュリティ強化の項目では、紛失や盗難の対策を強化。最後に端末が利用された位置を特定する機能や、端末をアンロックしようとして失敗した人の顔を自動的に撮影する「Capture Cam」機能を搭載した。最後に端末が利用された位置を特定する機能はAppleがOSの機能として提供している「Find iPhone」があるが、「様々なデバイスが存在する中で、特定のプラットフォームに限らず、同じように検索できるようにするメリットがある」(小川氏)としていた。

また、Android端末のWi-Fiセキュリティ対策では、パスワードが設定されていないWi-Fiに接続しようとした場合に警告を出す機能を提供。パスワードが設定されていないWi-Fiは、暗号化処理が行なわれておらず、盗聴(パケット監視)などをされる恐れがある。こうしたWi-Fiスポットに繋ぐことを未然に防ぐことで、セキュリティレベルを上げる試みだ。

ほかにも、従来の製品より提供しているパスワード管理機能や脆弱性対策機能、ウイルス対策、フィッシング対策機能などは、継続して提供される。

IoT時代を見据えるマカフィー

都内で行なわれた新製品の記者会見には、マカフィー コンシューマ事業統括 取締役 専務執行役員 田中 辰夫氏と、米McAfee チーフ コンシューマ セキュリティ エヴァンジェリストであるギャリー・デイビス氏も登壇した。

マカフィー コンシューマ事業統括 取締役 専務執行役員 田中 辰夫氏

米McAfee チーフ コンシューマ セキュリティ エヴァンジェリスト ギャリー・デイビス氏

田中氏は初めに、マカフィーのセールス状況を語り「セキュリティに対する需要が順調に伸びており、我々の製品も日本ではヒューレット・パッカードやNECといったPCベンダーに(プリインストールという形で)採用してもらっている。事業的にも、今年度は2桁成長を記録しており、好調にビジネスが推移している中で、2015年版を非常に重要視している」と、新バージョンに対する意気込みを口にした。

今年は、これまでのマカフィーブランドから、インテル傘下に入ったことで「インテルセキュリティ」ブランドとしての展開が始まり、好調なセールスだけではなく、ブランドの転換期としても重要な局面に差し掛かっている。

「デザインパッケージの中にインテルセキュリティを入れた。我々の"チャレンジ"を、コンシューマー市場でも展開していきたい」(田中氏)

続いて、米国本社のセキュリティ エヴァンジェリストであるデイビス氏が登壇し、現在のセキュリティ概況を語った。

ここのところ、モバイルデバイスの飛躍的な市場成長率、利用者の増加にはめざましいものがあるが、それはすなわち、ハッカーにとって格好の餌食でもある。特に、オープンソースのAndroidは標的にされやすく「Androidを狙ったマルウェアが急増している」(デイビス氏)という。

例えば、Flappy Birdという人気ゲームアプリが登場した後、後追いの偽アプリがGoogle Playストアなど、あらゆるところで散見されるようになった。これらのアプリのうち、実に80%の実態が「マルウェア」で、ユーザーが見えないバックグラウンドでSMSを送信したり、酷いものではルート権限(端末のシステムアプリなどを改変できる権限)を取得するアプリもあったという。

モバイル端末は、よりパーソナルな個人情報を端末に保存しているため、一つの流出が致命的な問題に至る可能性がある。それに加えて、モバイル端末をしのぐと言われるデバイスの存在がある。それがIoT、モノのインターネット時代のセンサー機器類だ。

これらは、一人1台のモバイルデバイスとは異なり、センサーをあらゆる場所に配置することで、生活のありとあらゆる情報を数値化して改善に役立てていこうという取り組みだ。2020年には260億台のセンサーが世界中にあると言われており、これまでの業務上の聞き計測だけではなく、各家庭に存在するカメラや洗濯機、冷蔵庫にまでネットと接続する時代が来るとみられる。

もちろん、こうした環境は、人の生活をより豊かにする可能性を大きく秘めているが、その一方で気になるのは、やはり「セキュリティ」だ。

「HP Fortifyの予測では、IoTで活用されている上位10個のデバイスの脆弱性を調べたところ、平均して25件の脆弱性が見つかった。デバイス間の通信が暗号化されていないといった初歩的なものもある。例えば、とある企業が提供する赤ちゃんを見守るネットワークカメラでは、簡単にハッキングできる状態にあり、子供の顔を第三者がのぞき込むことができていた」(デイビス氏)

ほかにも、Amazonがこの夏に販売を開始した「Fire Phone」は、カメラを起動すると位置情報やマイクから収集した音声などを、統合してAmazonのクラウド上に送信する。よりパーソナルなプライバシー情報を収集してクラウドに"勝手に"送るため、よりセンシティブな問題をはらんでいる。

「これらの情報から、Amazonでは個人に最適化した製品を案内する広告を表示するでしょう。もちろん、喜ぶ人もいるとは思いますが、反対する人もとても多い」(デイビス氏)

広告表示だけではなく、Amazonのクラウドサーバーが万が一破られた場合などのリスクを考えると、全面的に歓迎できるわけではないことも確かだろう。

こうしたIoT時代に対して、マカフィーはどのような考えを持っているのだろうか。

「ユーザーが安心してサービスを利用できるよう、我々としてはインテルと共同で対応していく。チップからセキュリティを担保することで、より良い体験を、セキュリティが最低限のリソースを使うだけで楽しめるようにしていく」(デイビス氏)